世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」

2005年11月12日 23時34分46秒 | Weblog
のんびりヒキコモリデー。
一歩も外出しない。
そうしようと昨日のうちに決めていた。
食料をたんまり買い込み、ビデオも借りてきていた。
準備万端。

借りてきたのは「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」
文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門大賞をはじめ、さまざまな賞を受賞した傑作であることは知っていた。

☆ストーリー☆
きれいなお姉さんの夢を見た翌日、突然、天正2年(1574年)にタイムスリップしてしまったしんちゃん。そこで、青空侍と呼ばれる又兵衛という侍の命を助けたしんちゃんは、春日城へ案内され、夢で見たお姉さんと会うことが叶う。お姉さんは、春日城の当主・康綱の娘で、大蔵井高虎なる大名と政略結婚させられることになっている廉姫。
いつもの調子で又兵衛や姫と仲良くなったしんちゃんは、ふたりが秘かに互いを好き合っていることを察し、恋を成就させてやろうとするのだが、又兵衛は身分が違うとその想いを胸に封印しようとするばかり。
自由恋愛の時代のしんちゃんには、全然理解出来ないのであった。やがて、しんちゃんを心配したひろしやみさえたちが春日城にやって来た。
再会を喜び合う野原一家。しかし、どうしたら元の世界に戻れるかは分からない。
そうこうするうち、康綱の心変わりで政略結婚を断られた高虎が隣国と共に戦を仕掛けて来た。
城を、人民を、土地を、そして愛する人を守る為、応戦する又兵衛たち。
戦いは熾烈を極めるも、野原一家の助太刀で高虎の髻をゲット。
見事、春日軍は勝利を収める。
ところが凱旋途中、又兵衛は何者かの弾に当たり倒れてしまう。
やりきれない思いのしんちゃんは、しかし廉姫と別れ、元の時代へと帰って行く。


いやはや、参った。降参。
子供向けのアニメじゃないよ、コレ。
戦のシーンなんて、「天と地と」顔負けの迫力だったし、武士の誓いである「金打(キンチョウ)」なんて、この作品で初めて知った。
そして、又兵衛と廉姫の残酷な恋の行方。
この二人の心情を理解できる子供がいたら、ホント、気持ち悪い(笑)。

幼い頃は感じなかった「身分の違い」を意識し、互いへの淡い感情を隠しながら生きる又兵衛と廉姫。しかし、又兵衛は「姫様には国に有利な縁組を」と、心にもない事を言ってしまう。「21世紀の世界では、お互いの好きな気持ちだけで良いんだよ」というしんちゃんの言葉とのギャップが悲しかった。
又兵衛の死後、「あのね、オマタのおじちゃんも廉ちゃんのこと…」と言おうとするしんちゃんに「もう、よい!!よいのだ…しんのすけ…」と笑いながらも涙する廉姫。亮子も涙。そして、鼻水…。
「タイタニック」や「ロミオをジュリエット」など、身分の違いという陰が根底に存在する作品は多いが、それらの中の人物は身分の違いに悩んではいるけれど、互いへの気持ちを叫んだり、確かめ合ったりしている。戦国時代の日本ではそれすらもできない。

平成の日本はどうか。

総中流社会になり、身分の違いは目立たなくなった。

世界の中心で叫べるようになった。
反面、電車内で痴漢から助けた女性を食事に誘うのにネット内の住人たちに助けを求める若人も存在する世の中になった。
しんちゃんの言う「21世紀の世界では、お互いの好きな気持ちだけで良いんだよ」という世界…又兵衛や廉姫には想像できない世界が広がっている。

恋愛以外のことも然り。
時代特有の束縛が無い代わりに、我々は自由を手に入れた。
又兵衛のように侍になって命を落とすことも無いし、廉姫のように政略結婚させられそうになることもない。
各々のライフスタイルを、大体は個人の好みによって決められるようになった。
それは同時に自己責任を担い、常に判断力と行動力を必要とすることである。

束縛が無いという状態が、この時代の「束縛」なのかもしれない。
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