晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・アーチャー 『メディア買収の野望』

2009-04-03 | 海外作家 ア
ジェフリー・アーチャーの小説には、貧しい不幸な境遇から、
努力と才能で成り上がる人と勝ち組エリートとの、それぞれの
人生と両者の交錯を描く長大な物語、という作品がいくつかあ
り、『ケインとアベル』や『チェルシーテラスへの道』などが
まさにそうなのですが、本作『メディア買収の野望』も、この
形式で描かれております。

チェコの山村のユダヤ人一家に生まれたルブジ・ホッホは幼い
頃から商売の才能の片鱗を見せ、やがてナチスに捕らえられて、
収容所から脱走し、ヨーロッパを南下して港の船に潜り込み、
着いた先はイギリスでした。そこでいろんな経緯があり、イギ
リスの軍隊に入隊します。このときルブジは、名前をリチャー
ド・アームストロングと改名、以後この名前で生きていきます。
軍隊の中でも目から鼻に抜ける活躍で、どんどん出世し、第2
次大戦終了後、ベルリン統治下におけるイギリス軍の広報新聞
の編集を任されることになります。

オーストラリアの新聞社オーナーの息子キース・タウンゼンド
は、イギリスに渡りオックスフォード大学卒業後、父の死後、
新聞社を継ぎ、やがてオーストラリアじゅうの新聞社を買収す
るべく奔走し、その勢いは海のむこう、アメリカやイギリスに
目を向けて、グループ企業として拡大していくのです。

リチャード・アームストロングもベルリン生活からイギリスに
移り、イギリス国内の新聞社を買収しまくり、こちらも一大メ
ディアグループとして拡大の一途。

リチャードとキースの買収の攻防戦、ときには双方犯罪まがい
の手法で乗っ取りを画策するのですが、意地と権力欲のぶつか
り合い、せめぎ合いがとても面白いです。

これは、いわばメディア買収戦争という作品なのですが、実は
マクスウェルとマードックという実在のメディア王をヒントに
描かれています。
単なるサクセスストーリーで終わらないところがジェフリー・
アーチャー作品の好きなところでありますが、ただ、この作品
は、キースとリチャードの対決構図のきっかけ、というのが、
あまり描けていないかな、という印象を持ちました。
ジェフリー・アーチャー作品は、ストーリー展開や伏線の見事
さにいつも感嘆するのですが、ちょっとこの一片が気になった
かな。

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