晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

チャールズ・ダーウィン 『種の起源』

2023-12-09 | 海外作家 タ

先日は自転車の投稿をしたばかりですが、読書もものすごく久しぶりの投稿です。ちょっと学校関係のほうが忙しくて、といってもその間、ちまちまと本は読んでました。

さて、ダーウィンです。だいぶ前ですが、あるクイズ番組にお笑いタレントのパックンが出てまして、問題が「中学校の理科の教科書に出る単語」というもので、パックンに出されたのは「(し)から始まるダーウィンの著書」で、パックンは回答時間中ずっと「On the origin of spieciesって日本語でなんて言うの?」と言ってて、時間切れで不正解だったんですが、まあ本来は正解なんですけど。

ジョナサン・ワイナーという人の「フィンチの嘴」という作品で、ガラパゴス島に住んでいるダーウィンフィンチというさまざまな嘴の形をした鳥を研究した生物進化学の研究者のグラント夫妻が20年の調査で、じつは今現在でも進化を遂げているということを発見したのですが、『種の起源』では、その部分は実証できていなかったのです。

この作品が世に出た当時のヨーロッパではまだすべての生物は神が創造したと信じられていて、というか「当時」ではなく現在でもキリスト教保守派が経営する学校などでは進化論は教えていないと聞いたことがありますが、この作品の裏テーマは、創造説では論理的に説明できないことを証明していく、といったものになっています。

まずは「飼育栽培下における変異」で、つまり人間の管理下での植物や動物の個体間の差はどのようにして生まれるのだろう、というもの。もともとの原種というか野生種から現在の人間の管理下のハトだの牛だの野菜だのに変わっていったのは、それが何かしらの「有利な状況」があった、そしてそれを「選抜」という表現を使っています。

「自然条件下での変異」では、そもそも自然状態で変異は起こるのか、について書かれています。

そして「生存闘争」では、「自然淘汰」との関係性について、そして「闘争」とは捕食と被食、あるいは動物同士の縄張り争いやメスをめぐる争い、または虫と植物の共依存や植物の寄生も闘争の結果そうなったといえるのですが、地理的にも環境的にも影響がある、としています。

「自然淘汰」では、人為選抜との比較、そして絶滅について説明されています。生物の生存にとって有用な変異が起きたなら、その形質を持った個体は生存闘争で保存される可能性が高くなり、よく似た形質を持った子孫が生まれ個体が保存されていくことになる原理が「自然淘汰」であると説明されています。

「変異の法則」では、気候変動といった外的条件の効果、適応について書かれています。

「学説の難題」では、種は移行しているというのなら、その中間種が見つからないのはなぜか、コウモリの飛翔能力、ハエを追っ払うキリンの尻尾、または眼のような特殊な構造をした器官はどのようにしてできたのか、について書かれています。

「本能」では、本能と習性の違いについて、人間が幾何学の法則を発見するはるか前からミツバチは機能的で素晴らしい形をした巣を作っていたのはなぜか、本能はその生物にとって有利なだけではなく過ちも犯すことについて説明されています。

「雑種形成」では、最初の種間交雑、変種について書かれています。

「地質学的証拠の不完全さについて」では、中間的な変種の不在について、古生物学や地質学から説明されています。

「生物の地質学的変遷について」では、前の章の続きで新種の誕生と種の絶滅の地質学的関連について書かれています。

「地理的分布」では、物理的条件、気候変化、氷河時代における分散や集合、といったことが書かれています。

「生物相互の類縁性、形態学、発生学、痕跡器官」では、生物どうしの類似性は「由来の近さ」である、変化を伴う由来、適応による相似形質、絶滅による分類、形態学と発生学、痕跡器官(萎縮または発育不全)について説明されています。

「要約と結論」では、どのような器官や本能も完成度には段階があって、種にとっては有益なものであり、ごくわずかに変異を生じる。そこに生存闘争のもと、構造や本能に生じた有益な変異が保存される。そこには地理的、気候的な要因もおおいに関係する。そして現在のすべての生物の「始まり」はたった一種類の生物で、そこから枝分かれしていったというもの。

つまり、ビジネスシーンや政治の世界で「強いものが生き残る」の例としてこの『種の起源』が使われているのは間違いであって、読んだことがないか悪意を持って誤用しているかのどちらかで、神が創造したわけではなく、現在のすべての生物は「たまたま偶然」生き残ってる、ということです。

この進化論を真っ向から否定している側の方たちは「我々のような高等な人類が下等なサルから進化したはずはない」としていますが、この文中には人類は猿から進化した、といったような記述は一切ありません。

また、面白い部分として、陸から離れている島はかつて陸の一部だったことは説明されていますが、大陸移動については具体的に触れられていません。というのもこの本が出されたのが1859年で、ヴェーゲナーの大陸移動説が発表されたのが1912年で、じつはそれ以前から「南米大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸って形がピッタリ合うよね」ということは論じられてきて、ただこの時点ではまだ大陸が移動する原動力がわかっていなくて、だいぶ後になってプレートテクトニクス理論が出てきます。

さらに興味深い話をいくつか。この作品は学術書ではなく、一般書店で発売されたということ。ダーウィンの母はウェッジウッドの創業者の娘。父親も父方の祖父も医師で、つまり「良家のお坊ちゃま」です。まあ、軍人でもないのにイギリス海軍のビーグル号に乗せてもらうには金とコネがなければ無理だったことを考えれば、そういうことですね。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 久しぶりの自転車で妄想フラ... | トップ | 帚木蓬生 『襲来』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

海外作家 タ」カテゴリの最新記事