晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・アーヴィング 『ホテル・ニューハンプシャー』

2009-09-13 | 海外作家 ア
アメリカ文学におけるジョン・アーヴィングであったりカート・
ヴォネガットは、日本でも学問の対象になったりするのです
が、こういった前情報のようなものが敷居を高くしているので
はないでしょうか。まずは純粋に「娯楽」としての物語を楽し
む、分析したり研究したりするのを否定はしませんが、どうして
も学問に扱う文学は高尚つまり難解、とする考えが読むことに
二の足を踏ませ、不幸にも排他的であったり閉鎖性を生み出して、
もったいない。

『ホテル・ニューハンプシャー』は、独特の世界観が紡ぎ出さ
れて折り重なって物語が形成されているので、読んだ人によ
ってそれぞれ違う印象を持つような作品なのではないでしょう
か。
登場人物は、物語を一人称(ぼく)で語るジョン、父と母、同性
愛の兄フランク、ジョンと愛し合っている姉のフラニー、小人症
という病気の妹リリー、難聴の弟エッグのベリー家が中心とな
り、父方と母方の祖父や学校の友人その他もろもろ、個性的で
設定というかそれぞれの相関がしっかりと位置付けられていて、
そして、この作品が「おとぎ話」だと評される(作者もそういって
いるらしい)ように、熊のステイト・オ・メインや飼い犬のソローと
いった動物が物語の重要なファクターなのです。

全体的な話としては、アメリカの田舎町の高校跡地にホテルを
開業させたベリー家が、その後かつての知り合いをたよって一家
はオーストリアへ移住、そこで第2次ホテル・ニューハンプシャー
を開業、しかしいろいろあってアメリカに戻ることになり・・・
ひらたくいえば、家族の成長物語なのですが、別の側面もあり、
フラニーが高校時代に同級生にレイプされ、その悲劇から立ち直
っていくといった話でもあります。

非現実的な話もあれば、きわめて現実的な話もあり、それが交互
に駆け抜けていくようで、ソリッドでシンプルなのか、ものすごく手
の込んだ複雑な仕上げなのか、この捉えどころの無さがそれぞれ
違った解釈となり、自分なりの解釈を探すという楽しみもあるのでは
ないでしょうか。

話の後半で、フィッツジェラルドの「華麗なる(グレート)ギャツビー」
が物語に関係してくるのですが、『ホテル・ニューハンプシャー』を
読む前に「華麗なる(グレート)ギャツビー」を読んでおくことを強く
お勧めします。2倍楽しめるかと。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雫井脩介 『犯人に告ぐ』 | トップ | P・ハクソーゼン、E・クルジ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

海外作家 ア」カテゴリの最新記事