晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ドン・ウィンズロウ 『犬の力』

2012-06-26 | 海外作家 ア
この本が発売されたのは今から数年前ですが、今年になってもタイトルを
ちらほらと目にします。
ところで『犬の力』とは、旧約聖書の中の詩に出てくるそうで、どうにも
日本語で現すと「ワンちゃんのほのぼの物語」と捉えられなくもないと
いいますか、原題の「ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ」のほうがよりビシビシ
と内容が伝わってきます。

アメリカ麻薬取締局(DEA)の特別捜査官、アート・ケラーが、凄惨な
大量殺人の現場で、長年の麻薬戦争のせいで酷い殺され方をした死体を見る
のはもはや”慣れっこ”なっていたのに、それにしても、と耐えられなく
なります。
「わたしの落ち度だ。すまない、ほんとうにすまない」と自分を責めます。
そして、メキシコ人警官のひとりがつぶやくのです。
「犬の力」。

こんなスタート。

もう、読み終わるまで逃れることはできない、そんな心境。

アメリカで大量に出回る麻薬の根源を絶つためメキシコに送り込まれた
DEAのケラー。シナロア州の麻薬組織の元締め、ドン・ペドロにどう
にかして近づいきたいのですが、そうやすやすとは尻尾を掴ませてくれ
ません。
そこでケラーは、州警察の警官で州知事の特別補佐官という”大物”の
ミゲル・アンヘル・パレーラと、DEAを通さずに単独で、ある(取引)
に応じるのです。

しかし、その(取引)の代償は大きく、パレーラは約束どおり、ドン・ペドロ
を捕まえる協力はしてくれたのですが、しかし、ペドロの代わりに元締めに
なったのは、なんとパレーラだったのです。

まんまと一杯くわされたケラー。

そして話は変わって、舞台はニューヨークのヘルズ・キッチン。
アイルランド系のショーン・カランは、友人の揉め事に巻き込まれて、この一帯
を仕切るマフィアに手を出してしまいます。
なんとかしてマフィアの大物に顔をつないでもらい、彼らのために働くことに。
そこでカランは、北アイルランド出身の女性と恋に落ちるのです。
金も手に入れて、カランは足を洗おうと大工に弟子入り。しかしそう簡単に
逃げられるはずもなく、ある大きな”仕事”を頼まれ、そして”殺し屋”へと
変貌を遂げ、カランの組織は麻薬を大々的に取り扱うことに。

またまた話は変わって、劣悪な家庭環境で育ったノーラは、ヘイリーという
高級娼館の女主人にスカウトされ、マナーや勉強を教わり、高級コールガール
になります。このノーラが、のちに長年の麻薬戦争を収束させる大きな役割を
担うことになるのですが・・・

家族に身の危険が及び離れ離れに、のちに離婚を切り出され、部下も殺されて、
味方であるはずのアメリカの組織も”政治的に”守ってはくれず、数少ない仲間
とともに、奇策のような方法で取締を続けています。
なにがなんでもパレーラを捕まえるために。

麻薬組織では裏切り者は死で償うという掟があるのですが、その「殺され方」
がじつにバリエーション豊富で(こんな表現ですみませんが、こうとしか書きよう
がありません)、もう感情移入なんてできず、ただ傍観。

圧倒的です。読み終わってグッタリ。脱力します。呆けてしまいます。


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