晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『心の昏(くら)き川』

2009-08-29 | 海外作家 カ
ディーン・クーンツの作品では、主人公サイドの対立側である
敵というか安全を脅かす存在の描き方が、少しずつ少しずつ
その正体を明かしてゆくのですが、対峙するまでのじわりじわ
り感がなんともじれったいというか、恐怖心を煽るのです。
それが醍醐味であり、ヒットの法則とでもいうのでしょうか。

この作品は、おどろおどろしいモンスターでもなければ、謎の
エイリアンと対決するわけでもありません。
その正体は「謎」というカテゴリーは一緒なのですが、主人公
を執拗に追いかけるのです。

頬に傷を持つスペンサーは、ある日何気なく一軒のバーに入り、
そこの店員ヴァレリーのことが気に入ります。
翌日ふたたびそのバーに赴くのですが、彼女は休み。どうしても
会いたくなったスペンサーは、昨夜ヴァレリーの帰宅のあとを尾行
して、彼女の家を知っているので、家へ向かいます。
チャイムを押しても出ず、明かりはついていません。ドアノブをまわ
してみると、鍵はかかっておらず、スペンサーは入ってみます。
しかし彼女はどこにもいません。しかしその時、窓から暴徒鎮圧用
のゴム弾と催涙煙が!そして、特殊部隊とおぼしき格好をした複数
の男がヴァレリーの家に突入します。

命からがら逃げおおせたスペンサーは、家に戻り、彼女の身辺を
コンピュータで検索しますが、ヴァレリーという名の女性はどこにも
いなく、なぜ彼女がSWATのような組織に狙われなければならな
いのかわかりません。

スペンサーがヴァレリーの家から逃げ出す時、じつは写真を撮られて
いて、解析の結果、かつてロサンゼルス市警に所属し、その前には
陸軍のレンジャー部隊に所属していたスペンサー・グラントであるこ
とが判明。ただちに組織はスペンサーを探します。
ヴァレリーはどこに消えたのか、ヴァレリーを追うなぞの組織とは。
この組織は、政府系組織でもなく軍関係でもなく、それでも簡単に
政府系組織や州組織の命令系統に入り、身分を詐称して指揮でき
るのです。

ヴァレリーを追う組織は、彼女の家にいたスペンサーと彼女がなに
かしらつながりがあるとふんで、スペンサーの身辺調査をするので
すが、高校を卒業して陸軍に入る前の経歴は嘘で、しかも現住所の
名前、電気やガスの契約者も嘘。スペンサー・グラントという名前は
架空の人物だったのです。

これにはスペンサーの忌まわしい過去が関係してくるのですが・・・
そして、いったいヴァレリーは何をしたのか、彼女の過去とは・・・

登場人物の人物像や背景がきちんと描かれていて、ただのサスペ
ンスではなく、人間ドラマとしても楽しめました。
政府や政治家は国民のために存在し、国民の安全や安心を守る
ために仕事をするのですが、その権力に溺れてしまうと、ある日
突然、国民に向かって牙をむけることもあるという、まんざらフィク
ションといえなくもないなあと、怖くなりました。

コメント
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