晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『ウィンター・ムーン』

2009-08-17 | 海外作家 カ
タイトルだけ見ると、なんだかメルヘンチックともとれるのですが、
第1章早々からクスリで狂った男がガソリンスタンドで銃を乱射、
居合わせた警官ひとりとスタンドの店主が次々殺され、スタンド
に引火し、足を撃たれてかろうじて生き延びたもうひとりの警官
がその狂った男を射殺、という凄まじいシーンからはじまります。

舞台は90年代前半のロサンゼルス。「天使の街」はもはや天使
の住む環境は消え失せてしまい、代わりに悪がはびこり、暴行、
恐喝、クスリの蔓延、レイプ、殺人が横行する状態。
ガソリンスタンドの銃乱射放火事件で生き残った警官は、かろう
じて生き残ったものの重傷で、目の前で同僚が殺されていくのを
見るのは2度目とあってショック。
さらに、銃を乱射した男は映画監督で、死んだことにより英雄視
され、その信望者は警官の家に脅迫やらいたずらをする始末。

夢も希望も将来も見えないロサンゼルスに見切りをつけて、警官
一家はかつての同僚遺族から引き継いだ田舎の街に引っ越すこ
とになります。
小さな牧場もあり、大きな家の窓からは雄大な自然が一望、多少
の不便はあるものの一家は気に入ります。

しかし、この家に住んでいた老人の弁護士や生前知り合いだった
獣医の話によると、まず老人の死亡状態になにやら不自然な点が
あり、さらに死んだアライグマを動物病院に運んで、検査をしてくれ
と依頼してきたのです。
警官の妻は初日から不気味な気配を感じ、変な夢を見るようになり
ます。息子も変な夢を見て、そしてある日、息子は警官の父と遊ん
でいる時に、突然何者かにとり憑かれたように喋ります。

この家には、なにかが存在しているのですが、それは一体・・・

物語の前半は、ロサンゼルスで働く警官の過酷な環境下を、そして
この大都会の狂った日常を描き、後半は一転、田舎街で起こった、
エイリアンと戦う一家、というまったく違った構成となっております。

このエイリアンというのが、死んでしまった魂の無い肉体、しかし、肉
体自体は「存在」しており、その魂の抜けた物質にとり憑く、気持ち
悪いことこのうえないものです。
宇宙から来たのか、いつ来たのか、目的は、これらは明確にされて
いませんが、とにかくおどろおどろしい描写が臨場感タップリで、ここ
に人間ドラマも絡んで、単なるB級ではない仕上がり。
コメント
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