今月はがんばって本を5冊も読んじゃいました。「一月にたった5冊読んだ程度で自慢するな」という声が聞こえてきそうですが、読書は量をこなすよりは、読書をしているその時その時をじっくりと味わおうではないか、そういう心境になっています。というわけで、読み終わるのに時間がかかってます。
以上、遅読のすすめ。
さて、フレデリック・フォーサイス。元イギリス軍で、除隊後に通信社の特派員、その後ノンフィクションを出したあとに小説「ジャッカルの日」が大ヒットし、次々と作品を出しますが、東西冷戦の終結で明確な「敵」つまり共産圏、東側が無くなってしまったので断筆宣言をします。が、同時多発テロがあって「これは書かねば」と思ったのか復帰。
この作品はデビューしてから5作目の短編集です。
イギリス陸軍の兵役を終えて保険会社に就職し、人畜無害のマジメ人間で通っているナトキンは、通勤電車に座ってて、ふとシートの隙間に雑誌が入っているのを見つけます。表紙を見ると、なんとエロ雑誌。それをカバンの奥にしまいこんで仕事が終わり家に帰ります。家には妻がいますが病弱でほぼ寝たきり。エロ雑誌の広告を見てこれはと思った女性に偽名で手紙を書きます。その後、その女性と関係を持ってしまうのですが、なんと家に実名宛でエロ雑誌で見つけた女性との情事の写真が送られてきて・・・という「ブラック・レター」。
大金持ちのマーク・サンダースンは、あるパーティー会場で美しい女性を見つけ、一目惚れをしてしまいますが、彼女は既婚者。しかしなんとかデートにこぎつけいい関係になりそうになりますが、主人のことを裏切れないと言われます。そこでマークは、なんと殺し屋に彼女の夫の殺害を依頼し・・・という「殺人完了」。
若い戦闘機パイロットは、クリスマス休暇で北ドイツから戦闘機でイギリスまで帰ります。無事に離陸して水平飛行になった大西洋上空で、方位磁石も高度計も速度もあらゆる計器が壊れていることに気づいて、さらに無線も壊れていてイギリスの基地に信号を送ることもできません。パニックになったパイロットは、教官から三角形を描くような飛行をするとSOSの合図だというのを思い出してやってみると、そこに第二次大戦時に活躍した旧式のプロペラ機が助けに来て・・・という表題作の「シェパード」。
フォーサイスの作品は今までけっこう読んできましたが、短編は初めて。ですが、話のオチのなんというかオシャレというかサプライズというか、さすがフォーサイスといった感じでした。