晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・グリシャム 『裏稼業』

2009-08-15 | 海外作家 カ
本作は、これまで翻訳を担当していた白石朗さんではなく、
超訳という「意訳をさらに推し進め、訳文の正確さを犠牲に
してでも読みやすさ・分かりやすさを優先させる翻訳手法。
ときには大幅な原文の省略を行うことさえある」訳で書かれ
ており、賛否両論あるみたいで、ここではその是非を問うこ
とはしませんが、正直白石さんに慣れているせいか、いつも
のグリシャムらしさが物足りないというか、まあそれでもとに
かく読みやすさにこだわる超訳ですから、読みづらさはあり
ませんでしたけど。

アメリカ南部にある連邦刑務所は、州刑務所とは違い、快適
そのもので、囚人に対して、けっこうな自由が与えられて、所
内の治安は良く、監視の目もゆるいのです。それはここにいる
囚人は、詐欺や密売といった、脱走しても近隣住民に恐怖を
与えるような凶悪犯はいなくから。
そんな刑務所に3人の元判事がいて、所内の揉め事はこの3
人が擬似裁判をやって仲介をし、看守もそれを認めています。
この3人の元判事は、外にいる弁護士を介し、ある金儲けを
企んでいるのです。それは、同性愛者専門の雑誌に架空の
好青年でペンフレンドを募集し、食いついてきた人のなかから
金持ちでしかもゲイであることを隠して生活している人を選び、
脅して金を“ゆする”のです。

一方、話はシャバでの、それもCIA長官が頭を悩ませている
問題で、ロシア人の強硬派の危険人物が台頭してきて、やが
てアメリカの脅威になりそうだというのに、アメリカでは毎年、
軍事費は下がるいっぽうで、権力亡者の長官は軍事費アップ、
戦力拡大を掲げる人物を次期大統領に仕立て上げるため、無
名の議員を立候補させ、CIAはその候補に全面協力します。

CIAの姑息でルール無視の宣伝や作戦が功を奏し、無名だった
候補は各地で勝利。しかしそんな中、候補は家に戻ると、セキュ
リティガードの目をかいくぐり、市内の私書箱郵便へと向かうので
す。なんとその私書箱に入っていた手紙は、同性愛者「リッキー」
との文通であった・・・

車椅子で生活する高齢のCIA長官メイナードは、著者お気に入り
のキャラクターらしく、後に出版された「大統領特赦」という作品
にも登場し、そこでも権力亡者ぶりを発揮しています。

この作品は、意外で大胆な設定ではありますが、ドキドキハラハラ
感はあまりなく、純粋に物語性を楽しんだ、というような印象をもち
ました。
コメント
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