晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『天狗風』

2009-08-21 | 日本人作家 ま
この作品は、「霊験お初捕物控」シリーズ第2弾で、第1弾は
「震える岩」という赤穂浪士や吉良など忠臣蔵にまつわる幽霊
騒動を描いた作品で、主な登場人物をそのまま引き継いでの
かたちで続編となっております。

江戸日本橋にある一膳飯屋「姉妹屋」にはお初という娘と、その
兄嫁の姉妹が看板どおり働いており、人気の店。お初の兄は岡
っ引きをしていて、お初が幼少時代から霊体験をしていることを
霊験に興味を持つ奉行に会わせたことで、奉行から直接、市中で
起こる不思議な出来事の解決を頼まれることになります。

前作では、右京之介という算学者とともに100年前の忠臣蔵騒動
にまつわる呪われた岩の正体を暴き、奉行からは覚えめでたく、そ
してそんな「震える岩」事件からしばらく経ち、江戸市中では、娘た
ちがある日忽然と姿を消すという出来事が相次いで起こり、祟りだ
のかどわかしだのと騒ぎになります。

お初は右京之介とともに南町奉行所の奉行のもとに赴き、娘たち
の行方を探すことになります。どうやら、消えた娘たちに共通して
いることは、嫁入り前だということと、家族の誰かから憎まれてい
た、ということ。
そんな中、お初と右京之介は行方不明になった大工の娘の家を
見てまわっているときに、血の色と見紛うほどの真っ赤な景色に
包まれ、ついで強い風が吹き、どこからか謎の声が聞こえてきて、
動くはずのない大工道具や紙きれが突然動き出してお初に襲い
かかります。

娘たちの行方は。なぜ嫁入り前の娘が消えるのか。
そして謎の声の正体は・・・

この物語の重要人物というか、猫が出てきて、お初は猫と会話が
できるのです。この猫が事件解決に大きく関わってくるのですが、
猫とお初のやりとりがとてもユーモラスで、ともすれば陰鬱で陰惨
な事件に巻き込まれる話が続くところに、生意気な猫とウブなお初
との丁々発止が和ませてくれます。

時代小説ながら、どこか現代小説を読んでいるような気にさせられ
るのは、法律や文化、生活は日々進化して便利になっているとは
いえ、家族や暮らしといったものは不変であるということを上手に
描いているからでしょう。

日本の奈良時代の書簡に「最近の若者の考えてることがよくわか
らん」といった意味の文が書かれていたらしく、まあちょっとした落
書き程度のことなのですが、その当時「よくわからん」と思われて
いた世代が大人になり、今度はまた下の世代の思考が解らないと
ぼやき、それが脈脈と現代まで続いてると思うと、人間そのものは
数千年前からあまり変わってないんでしょうね。

コメント
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