非国民通信

ノーモア・コイズミ

せめて建前は守るべき

2011-08-18 23:19:14 | 政治・国際

靖国参拝 首相と全閣僚、見送り 谷垣氏らは参拝(朝日新聞)

 菅直人首相と菅内閣の全閣僚は15日、終戦記念日に合わせた靖国神社への参拝を見送った。首相と全閣僚は昨年も参拝を見送っている。ただ、副大臣・政務官では森田高(国民新党)、浜田和幸(無所属)両総務政務官が昇殿参拝した。

 首相は靖国参拝について「A級戦犯が合祀(ごうし)されているといった問題などから、首相や閣僚が公式参拝することには問題がある」と語り、在任中は参拝しない考えを表明している。

 一方、自民党では谷垣禎一総裁や森喜朗、安倍晋三両元首相らが参拝した。

 超党派でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長・古賀誠元自民党幹事長)の計53人も参拝。同会によると、参加者は衆院28人、参院25人。政党別では自民32人、民主13人、たちあがれ日本3人、国民新2人、無所属3人だった。

 さて、毎年恒例の話題ではありますが、「首相や閣僚が公式参拝することには問題がある」とのことで今年も首相の参拝はナシです。首相になる前と辞めた後は何かと猛々しい安倍晋三も、首相在籍中の参拝は見送っていたくらいですから、それも当然でしょう。参拝の是非はさておくにしても、首相なり与党の閣僚なりという影響力の大きい立場の人間には、自らの行動が招くであろう結果への責任を意識してもらわねばなりませんから。靖国参拝で中途半端に右派層にアピールしていると思われる谷垣氏も、与党の一員に返り咲いたらどうするつもりでしょうかね? 民主党側からは大連立なんて話も出ているようですが。


首相参拝問題なし 野田氏「認識変わらず」(産経新聞)

 野田佳彦財務相は15日の記者会見で、野党時代に提出した質問主意書で「戦犯の名誉は回復されており、『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではない」として、首相の靖国神社参拝は問題ないとした認識について、「基本的に考えは変わらない」と述べた。

 ただ、野田氏はこの日の会見では、首相が靖国神社を参拝することの是非は「首相になる方の判断だ」と述べ、自身が首相に就任した場合の対応については「仮定の話だ」として明言を避けた。野田氏はこの日、参拝しなかった。

 野田氏は平成17年、党国対委員長時代に提出した質問主意書で「サンフランシスコ講和条約と4度の国会決議などで、すべての戦犯の名誉は法的に回復されている」と強調。小泉純一郎首相(当時)が国会答弁で、靖国神社に合祀(ごうし)されている「A級戦犯」を「戦争犯罪人だと認識をしている」と述べたことを批判している。

 一方、民主党の次期代表として最有力視されている人の発言がこれです。発言の当時はまだまだ民主党が与党になることを想定した人が少なかったのか大きく取り沙汰されることはなかったように記憶しています。しかるに野田氏が次期民主党代表すなわち次の総理大臣となる可能性が出てきただけに、色々と過去の発言にも注目が集まってきたのでしょう。次の選挙で民主党が勝つのが確実視された途端に小沢一郎の政治資金問題がクローズアップされるようになったのと同じようなもので、責任あるポジションが近づけば近づくほど、世間の注目は強まるものです。

 上記の発言は他紙でも報道され、当然のように韓国側から反発が出ているとのことですが、ここで注目したいのは野田氏の批判対象が、かの小泉純一郎だったと言うことです。小泉もまた中国と韓国との関係を冷え込ませるなど日本の外交にも大きな爪痕を残しましたけれど、その小泉を野田氏は明らかに「右から」批判しています。周辺諸国に対して挑発的な態度を取りつつも小泉は最後の一線を越える気まではなかったのか、A級戦犯については政府の従来の見解に踏みとどまっているわけですが、野田氏の批判は小泉が越えなかった一線を越えるものです。もし、この発言を撤回しないまま首相になるということがあれば、戦後の日本が守ってきた反省の「建前」すら危うくなってしまうことでしょう。

 まぁ原発事故でも、発生した状況が特に変わったわけでもないのに、それをメルトダウンと呼ぶことになった途端に大騒ぎし始めた人もいました。そしてA級戦犯がやったことが今から変わるはずもないのですが、それを「戦争犯罪人」のカテゴリから外しさえすれば正当化できると考える人もいるわけです。仮に日本のローカルルールでA級戦犯を「戦争犯罪人」の枠に含めないことにしたしても、結局のところ日本を戦争に駆り立て、アジア諸国諸々に甚大な被害をもたらしたことには変わりはないですし、それを主導した人々を顕彰する神社に首相が参拝しようものなら、日本は先の大戦を反省していないと世界にメッセージを発することになるのも変わりがないのですが、野田氏はその辺が理解できていないようです。

 政権交代前後、鳩山時代の民主党は野党時代の主張を次々と取り下げていったものですが、まさか野田氏はこのまま突っ走るつもりなのでしょうか。内心ではどう思おうと、せめて「建前」を維持するだけの良識は望まれるところです。韓国や中国だって、日本が「建前」を守っていれば事を荒立てようとはしないもの、しかし日本側が過去の侵略行為を反省するポーズをも捨てるとあらば、向こうも相応の態度を取らざるを得なくなってしまいます。そこは「大人」として「宜しくやる」だけの知恵を発揮してほしいのですが、望むべくもないのでしょうか。どうにも政治の役割が利害調整的なものから、その人なりの「正しさ」を主張することの方にシフトしていると思えてならない昨今、野田氏もまた国際関係が悪化して日本の損になろうとも、自分なりの「正しさ」の方を追うのかも知れません。

 

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コメント (9)
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