非国民通信

ノーモア・コイズミ

教育が投資ではなくなっているのだと思う

2010-07-20 22:59:30 | ニュース

「35人学級」 国は適正人数のビジョン示せ(読売新聞)

 公立小中学校の1学級の上限人数を、現在の40人から引き下げる必要がある。中央教育審議会の分科会がそんな提言案をまとめた。文部科学省は「35人」を軸に検討している。

 これまでは、上限を1人でも上回ると二つのクラスに分けてきたが、中教審はこうした画一的な仕組みの見直しも求めた。35人学級で36人になっても、18人の2クラスにせず、36人のまま教員を2人配置することもできるという。

 学級編制の標準見直しは、45人から40人に引き下げた1980年度以来、ほぼ30年ぶりとなる。

 主要教科を中心に、授業時間や学習内容が大幅に増える新学習指導要領の全面実施が迫っている。学力低下、いじめや不登校など教育現場が抱える課題も多い。

 中教審が指摘したように、学級規模を小さくし、教員の目が行き届くようにすることは必要だ。

 心配なのは財源の問題である。35人学級を実現する場合、教員は4万人以上増え、国と地方合わせて年約3000億円が新たに必要になるという試算もある。

 中教審が「恒久的な財源確保に理解を得られるよう努めるべきだ」と言及したのも、厳しい財政事情の折、当然のことだ。

 公立小中学校の1学級の上限人数を35人程度まで引き下げるプランがあるそうです。教育の質を向上させる上では欠かせないことと言えますが、しかるに引用元である読売新聞が真っ先に気にかけるのは「財源」でした。さんざん学力低下だの何だのと煽っておきながら、教育のための予算には目くじらを立てる、まるでダメな球団のオーナーみたいでもありますね。金は出さずに口だけ出す、予算を削っておきながら現場の努力で結果を出せと要求する、こういう手合いが上にいるとクラブは強くなれないものですが、その辺は教育も同様でしょう。幸いにして読売新聞が教育予算の決定権を握っているわけではありませんけれど、ただ現与党の事業仕分け的な体質を見ていると、あまり希望は持たない方が良さそうです。

 教育は将来への投資なのですから、ここで予算を惜しむことは将来の損失にも繋がるように思われますが、読売新聞だけではなく世論の少なからぬ部分は、教育という投資よりも歳出削減に重きを置いているような気もします。往々にして国民は自分たちの生活よりも国家(政府)の財政の方を気にするものですし(だから国民の生活を気にする政党よりも、歳出削減を訴える政党の方が支持されたり)、何しろ自己責任論の国ですから、良い教育を受けたければ個人的に学費を負担して良い学校に行くべき、玉石混淆の生徒が通う公教育のために今以上の予算を投じるべきではない、そう考える人も多そうです。

 以前にも書いたことですが、少子化が進めば当然のことながら、子どもに投下される教育のリソースは先行世代よりも集中するものです。10人の子ども全員を塾に通わせて大学に進ませるようなマネは中産階級には不可能なことですが、子どもが一人か二人ぐらいなら、中の下くらいの家庭でも塾や大学に入れてやることは難しくないでしょう。公教育にしたところで団塊世代なら1クラスに50人ほど詰め込まれたかも知れませんが、今なら1クラス35人ほどで相対的には目配りの聞いた教育が受けられるわけです。そうなると必然的に高等教育を受ける人間の割合も増加していくのですが、これが日本の社会にマッチしているかというと、大いに問題があったりします。

 大卒者の割合は上昇を続けていく一方で、そうした高等教育修了者向けの就職先が合わせて増加しているかと言えば、甚だしく悪化する大学生の就職事情を見るまでもない、受けた教育に見合った職は完全に不足しているわけです。本来なら教育は将来への投資でもあり、しっかりと教育を与えれば将来的には倍になって返ってこなければなりません。しかるに現状では、教育への投資が無駄になってしまうケースが多いのではないでしょうか。いくら子どもの教育にお金をかけても、マトモな仕事に就けるとは限らない=教育への見返りが得られない、と。そうなると教育への予算をムダと見なす風潮が強まるのも無理からぬところです。

 あくまで製造業を軸とした産業構造を維持しつつ、コストカット(人件費削減)によって利益を確保する、より人件費削減が容易になるように規制緩和を進める、そうした日本的なビジネスモデルの元では、教育はむしろ障害になります。産業界が求めているのは低賃金労働者であり単純労働者であるなら、子どもには高等教育を施すよりも、早く「社会」に出て労働力になってもらった方が良い、高等教育を受けるのは一部のエリートだけで十分だ、ということにもなるのでしょう。この国で教育の必要性が理解されるには社会全体が変わらないといけない、教育から就職、経済までも含めた幅広い面で国民の考え方が変わらないとダメなのかも知れません。

 

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コメント (9)
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