非国民通信

ノーモア・コイズミ

ブレーキ役がいなくなる

2009-08-03 22:56:00 | ニュース

阿久根市長、人件費張り紙をはがした職員を懲戒免職処分(朝日新聞)

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が4月に市役所内に張り出した人件費総額を記した張り紙がはがされた問題で、竹原市長は31日、張り紙をはがしたとして、市民環境課の男性係長(45)を懲戒免職処分にした。竹原市長は「市長の命令に背く行為で反省はみられない」というが、市職員労働組合は反発している。

 張り紙は、総務課や市民環境課など16部署ごとに07年度の人件費総額を記した内容。「職員の自覚を促すため」として、竹原市長が市議会から2度目の不信任決議を受けて失職する前日の4月16日に職員に指示して張り出させた。3日後にすべてはがされ、総務課長席に置かれていた。

 竹原市長は「(係長は)当初は知らないと言い、後で名乗り出て顛末書が出されたが、反省は見られない。市長の命令に背く行為で命令系統の破綻は許されない。懲戒免職以外に方法はない」と処分理由を説明した。

 公務員叩きで地元の絶大な人気を誇る阿久根の竹原市長ですが、相変わらず問題を起こし続けているようです。曰く「市長の命令に背く行為」「命令系統の破綻は許されない」とのことで、懲戒免職処分を下したとか。この辺は国旗・国歌の問題と似たようなものでしょうか、とにかく「命令に従わないものは処分されるべき」という感覚がここでも発揮されているようです。どう見ても不当解雇ですから、首を切られた係長は異議申し立てをする方針らしいのですが、結果はどうなるでしょうかね。今までの越権行為の数々は「お目こぼし」されてきたみたいですけれど……

阿久根市職労訴訟、市長「裁判官も公務員仲間」(読売新聞)

 鹿児島地裁で29日に開かれた、阿久根市職員労働組合が同市を相手取り、庁舎内にある組合事務所の使用許可取り消しの無効を求めた訴訟の初弁論。市側は全面的に争う姿勢を見せながらも、「裁判費用に税金が使われることや、裁判官も公務員であり、公平な立場に立てない」などを理由にして出廷しなかった。

 29日の初弁論で市側が提出した答弁書では、退去通告の理由について〈1〉市職労は市長選の際、事務所で竹原市長の政策を批判するためのビラを作成した〈2〉職員の給与水準が市民より高いのに、事務所の使用料は全額免除されている〈3〉市庁舎からの退去は竹原市長の選挙公約でもあり、市民も支持している――などと主張した。

(中略)

 この日、取材に応じた竹原市長は「裁判官は自治労と同じ公務員の仲間。負けると分かっている裁判に税金を無駄遣いさせるつもりはない」と語った。

 裁判所が法律に従って判決を下せば、竹原市長に勝ち目はありません。市長が勝ちたければ体制の守護者たる最高裁判所まで持ち込むか、あるいは「実力行使」に訴えるかぐらいでしょう。阿久根市では市長に従わねば市民が脅しをかけてくる有様のようですから(この辺は名古屋でも大阪でも同じようで)、あり得ない話ではなさそうです。現にこの市長、自身の政策の正当性や合法性を主張するのではなく、「市民も支持している」と言って押し切ろうとしているわけで、最初から法に照らして云々というつもりはないようですし。

 地方分権とか地域主権とか、よく極右系の首長が熱心に唱えているわけですが、その意図するところは何なのでしょうか。国からの介入を好まないのは、単に自分の「領地」で誰にも縛られることなく権力を奮いたいだけなのかもしれません。日本の憲法や法律に縛られず、自分ルールで「領地」に君臨したい、そういう思惑を感じますね。

 そしてこのような強権志向の首長や党首が住民/国民から支持を集めるのは、やはり勧善懲悪的な世界観の故でしょうか。善なる意志を持った改革者たる首長が、悪い抵抗勢力を相手に大鉈を振るってくれる、そこに有権者は快哉を叫ぶのかもしれません。権力には監視が必要、なんて思う人はいないわけです。「悪い」権力を打倒して「善い」権力に全てを委任すべし、そういう考え方だからこそ、権力者の暴走が歓呼の声で迎えられるわけです。ですが、全てその人の思う通りにさせておけば大丈夫、そんな聖人君子のごとき権力者はフィクションの中にしか存在しません。だからブレーキ役が必要になるわけです。

 本来、自治体職員にせよ官僚にせよ(そして議会もそうですが)、行政を「サポートする」のと同時に「監視する」役目もあるはずです。時には協力し、時にはブレーキをかける、権力に対して相互に牽制しあうことが役目ではないでしょうか? しかるに昨今では行政という最大の権力に対して異議を唱えることはすなわち「悪」とされ、黙々と首相/首長の意に従うことばかりが求められているような気がします。最高裁判所もごらんの有様、今や誰も権力の暴走を止められません。

 

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参考1、従うだけが忠義ではござらぬ

参考2、権力に与えられるべきは自由ではなく監視

コメント (13)
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