非国民通信

ノーモア・コイズミ

要するに「踏み絵」です

2009-06-24 22:51:41 | ニュース

橋下知事、府奨励の反復学習「やらない首長落選させて」(朝日新聞)

 大阪府の橋下徹知事は23日、公立小中学校の学力向上策として府教育委員会が提唱する反復学習について「やった所、やらなかった所の情報をオープンにする。やらない所の市町村長は選挙でどんどん落としてもらいたい。それしか教育が変わる方法はない」と報道陣に発言した。

 府教委は07、08年度の全国学力調査で大阪の成績が全国平均を下回ったことから、昨年秋に陰山英男・立命館小学校副校長らを教育委員に招き、百ます計算などの反復学習を奨励。だが府教委作成の反復学習用の教材を使っている公立校は小学校48%、中学校36%にとどまっていた。

 橋下知事は「市町村教委が現場を指導できるかは、教育委員を任命する市町村のトップの政治責任。これを選挙で変えていくのがまさに地方分権だ」と述べた。

 橋下は相変わらずです。まぁ、そう簡単に人が変わるはずもありませんよね。むしろ人気者の橋下にあやかろうと、自民や民主の方が変わろうとしている有様ですから見るに堪えません。で、今回は百ます計算を「やった所、やらなかった所の情報をオープンにする。やらない所の市町村長は選挙でどんどん落としてもらいたい」そうです。それが地方分権なんだとか。

 一方、各校での具体的な教育方法は市町村教委ごとでなく、学校長の判断で決まる。府教委担当者は「反復学習はお願いしてきたが、実践するかは学校独自の判断。市町村教委も強制できないのだが……」と当惑していた。

 勿論、橋下の言うことは支離滅裂も良いところです。単なる「言いがかり」に過ぎません。それでも「民意」を背景とすれば、それはしばしば正当化されてしまいます。「府教委作成の反復学習用の教材を使わなかった」という理由で市町村長が落選、まるで笑い話のようですが、起こりえない事態とは言い切れないのが現状ですし、それが選挙結果――有権者の選択の結果であるとなれば、正しい決断として押し切られてしまうものです。

 以前に、18世紀ロシアで行われた宗教改革を取り上げました。時のモスクワ総主教(カトリックのローマ法王に相当)ニーコンが主導したものですが、内容は以下のようなものです。

・十字を切るときの指を2本から3本に変更
・従来の八端の十字架を廃止して西欧で一般的な形の十字架を使用
・教会の周囲を回るときは時計回りではなく反時計回りに変更
・「アレルヤ」は2回ではなく3回唱えること
・イエスの綴りはИсусからИисусに変更

 改革の中味はこればっかりでもないのですが、傍目には些末なものが目立つのも事実です。一応は宗教的な理由付けもあるのですが、指が3本だろうと2本だろうと信仰心に大した差はないでしょう。くだらない? でも、この「くだらなさ」がポイントなのです。それが形式的であればあるほど、教会トップの決定に従うかどうかを判別する上では、有効になります。

 言うまでもなく、その後のロシアでは総主教の決めた形式を遵守しているかどうかが厳しく問われました。新形式を遵守しない人々は「古儀式派」「分離派」などと呼ばれ異端として迫害の対象となりました。何が問題だったのでしょうか? 勿論、信仰心の問題ではありません。そうではなく、「上」の命令に従順であるかどうかが問われたわけです。総主教、ひいては「権力」の指示であれば黙って言う通りにするか、それとも自分の判断で行動するかどうか、前者を選り分け後者をあぶり出すためにこそ、この「カイカク」は有用だったのです。

 ……そこで橋下に戻ります。府教委作成の反復学習用の教材を使っているかどうか、それは重要なことなのでしょうか? 重要だとしたら、それはどういう点において意味を持っているのでしょうか? 言うまでもなく、特定の教材を使うかどうかは学校が決めることです。教育方法は百ます計算以外にいくらでもありますから、府教委指定の反復学習に拘る合理的な理由はありません。しかし、橋下肝煎りの教育委員が作成した教材を使うかどうかで、橋下への「忠誠度」を判断することが出来ます。

 十字を切る指の数を2本にするか3本にするかで総主教の権威に対する服従が計られたように、百ます計算をやるかどうかで府教委への――橋下への忠誠が計られているわけです。そこで府教委の意志に叛く、恭順の姿勢を示さなかった市町村長は「選挙でどんどん落としてもらいたい」と橋下は語ります。こうやって橋下の言うとおりにならない人間をあぶり出し、選挙を通じて排除していくこと、これが地方分権というわけですね。

 

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コメント (13)
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