非国民通信

ノーモア・コイズミ

会社は軍隊が好き

2007-08-28 22:38:00 | ニュース

防衛省、人材確保に民間からの「レンタル移籍制度」(読売新聞)

 防衛省が、民間企業の若手社員を自衛隊に2~3年の期限付きで入隊させる「レンタル移籍制度」の創設を検討している。

 人材確保策の一環だが、背景には自衛隊の若手教育に対する企業側の期待もある。同省は、今年度中にも民間企業などに意向調査を行い、試行につなげたい考えだ。

 自衛隊は精強な部隊を維持する上で若手隊員を確保する必要があるため、陸上自衛隊では2年、海上、航空各自衛隊では3年の期限で勤める「任期制自衛官」の制度を設けている。応募資格は18歳以上27歳未満。高校卒業者を中心に毎年1万人前後を採用し、数回の任期を経て、毎年5000~6000人が退職する。

 しかし、最近は、景気回復に伴って民間企業志向が強まっているほか、大学進学率も高まり、高卒者の確保が年々難しくなっている。また、少子化に伴い、募集対象年齢の人口が減り、人材確保は将来的にさらに厳しくなると予想される。

 だが、ちょっと待って欲しい。憲法9条を改正しても徴兵制にはならない、というのが定説で、その理由として持ち出される定番中の定番が「現代のハイテク戦においては高度な専門的訓練が必要で、徴兵した人員に付け焼き刃の訓練を施したところで戦力にならない」などというものだったのではないでしょうか。徴兵によって調達した兵員は役に立たないが、レンタル移籍によって調達した人員ならば役に立つのでしょうか? 少なくとも防衛省の見解としては、レンタル移籍によって調達した兵員は立派な戦力のようで。

 しかし何でしょうか、タカ派の政治家が長年トップに居座り、周辺諸国の脅威が声高に煽られている中で世論の右傾化も進んでいるわけですが、その割には就職口としての自衛隊は不人気のようです。軍拡を訴える人も「誰か」がそれを増強してくれることに期待するばかりで、実際に自分が先陣を切って軍隊に入るようなことはない、軍備増強を支持する世論の高まりは危険なように見えますが、実は彼らが煽り立てる仮想敵と同様に実態としての脅威は皆無なのかも知れません。

 さてレンタル移籍です、欧州サッカーでのレンタル移籍と言えば概ね「期待の若手にトップチームでの経験を積ませるため」と「高年俸でありながら余剰戦力となっている選手を整理するため」の場合に別れます。日本の会社に喩えるとどうでしょうか? 後者の場合なら、高給取りのリストラ候補の中高年社員を会社から追い出すためのレンタル移籍になるでしょうか? 自衛隊入りを嫌って向こうから退職を申し出てくれれば会社としては万々歳?

 とりあえず自衛隊のターゲットは若手です。そして企業も若手を自衛隊に送りたがっています。年々、研修と称して社員を自衛隊に送り込む企業が増えているそうで、平成18年度はなんと2万5700人に上ります。会社側が積極的に社員を自衛隊に送り、自衛隊もまた積極的に門戸を開くことでこの流れは加速するのでしょうか? 今は全社員の3%程度と試算されるわけですが、これが10%になり、30%になりと加速度的に増加することもありそうです。いずれは自衛隊で訓練を受けた=軍隊生活を経験したことが「立派な社会人」の条件となり、軍隊経験のない人は欠格者として二級市民扱いされる時代も来るのでしょうか。

 しかしなんでしょうね、自衛隊で訓練を受けることがサラリーマンとしての人生に繋がる、非日常の象徴であるはずの軍隊が、社会の最大多数を更正するサラリーマンと結びついているのはどうなのでしょう? 日本の社会は軍隊を範とすると言うことでしょうかね? 自衛隊的な価値観を会社群が共有している、そしてその価値観を共有しないと「立派な社会人」の仲間入りはできない、そういう仕組みなんでしょうか。政府与党に抗う輩を敵視して、選挙では不正を厭わず与党を支援、政府与党の願いを叶えるためならば法を犯すことも恐れず、上の命令には絶対服従で疑問を持ったりしない、たまの情報漏洩はご愛敬、その辺が民間企業の考える「あるべき姿」だとしたら、随分とお寒い話です。

 

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コメント (8)
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