非国民通信

ノーモア・コイズミ

そんな単純で良いの?

2007-08-08 23:26:01 | ニュース

「中国製の劣悪な食品は食べない」クリントン議員が宣言(読売新聞)

 「私は中国製の劣悪な食品は食べないし、子供を病気にするようなおもちゃは買わない」――。

 7日に開かれた米大統領選の民主党候補討論会で、ヒラリー・クリントン上院議員が、中国からの輸入品に重大な懸念を投げかける発言を行い、会場を埋めた労働組合員から喝采(かっさい)を浴びた。

 司会者は「中国は同盟国か、敵国か」と質問。これに対して、クリントン氏は「中国の為替操作に対処する必要がある」と、中国の通貨当局が人民元安を誘導していると決めつけた。その上で、「中国からの輸入品にも厳しい基準を設けねばならない」と述べ、中国製の安全性の低い食品やおもちゃを“ボイコット”する意向を示した。

 会場を埋めていたという労働組合員がどうして上の発言に喝采を浴びせたのか、その辺りに疑問を感じないでもありません。バラエティ番組の聴衆と同じで、笑うタイミング、喝采するタイミングをあらかじめ指示されていたのでしょうか?

 軽くブログ検索をしてみたところ、単なる中国叩きの感情からクリントン発言に同調する軽いコメントが多かったのですが、問題はそう単純なものではありません。中国産の食品にはアメリカ牛と同様に疑わしいところがあるわけですが、では「食べない」と言いきれるものでしょうか。もちろんクリントン氏のような莫大な資産を持つ身分であれば、身の回りを血統書付きの製品で埋め尽くすことは容易いかも知れません。しかし会場を埋めたとされる労働組合員などの「普通の人々」にとってはどうでしょう?

 中国叩きに熱心な人にしたところで、身の回りの品を見回してみればmade in Chinaが溢れかえっているのが現状です。日本メーカーでも裏返して表示を見ればmade in China、安価な中国産の製品を抜きにして我々の生活は成り立ちません。身の回りから中国製品の一切を遠ざける、そんなことを実行できるのはほんの一握りの富裕層だけ、私にはクリントン氏の発言は庶民の暮らしを無視した金持ちの妄言にしか聞こえませんね。

 中には安くて良いものもありますが、だいたいの場合、安くするには何かを犠牲にしているものです。安さを追い求めていれば、品質や安全性が疎かにされることもあるでしょう。一時の感情にまかせて中国製品をボイコットすればどうにかなるというものではなく、仮に中国製品を追放したとしても、それに代わる「いわくつきの」安物が登場するだけです。あるいは、それに替わる安物が供給されず、貧乏人が何も買えなくなることもあるでしょうか。

 「中国は同盟国か、敵国か」、そんな問いもあったようです。「親日か反日か」みたいな馬鹿馬鹿しい二元論ですが、要するにアメリカも日本同様、中国の影響力の拡大にアレルギーを起こしているところがあるのでしょう。とりあえずクリントン氏は中国を非難してみせることでアメリカ国内の反中国感情に寄り添う形を選択したようです。

 しかし、どうなのでしょう? 安価な中国製品の流入はアメリカ人にとってどれほどの「脅威」なのでしょう? 確かに安価な中国製品によってシェアを奪われる生産者もいるかも知れません。しかしそれと同時に、安価な中国製品が選択肢に加えられたことは消費者にとってはプラスです。労働者側の視点が致命的に欠落し、競争原理を好む社会であれば後者の側面の方が大きく評価されても良いのではないでしょうか。

 そもそも、アメリカの財界にとって中国は本当に競争相手なのか? 確かに価格競争のライバルではあるかも知れません。しかし日本メーカーの製品の多くが裏を返せばmade in Chinaであるように、企業とは一国で完結しているものではありません。アメリカ企業もまたアメリカだけで完結するものではなく、より利幅を膨らませるために売り上げの増大とコストの削減に励むわけで、その中ではより安価に製品を供給、生産できる拠点を築かねばなりません。その拠点の一つがいうまでもない中国であるわけで、その中国のお陰でアメリカ企業が(そして日本企業も)莫大な利益を上げている、そういう側面を無視すべきではないでしょう。上記のクリントン氏の発言は、ただ国民の感情を煽り立てるだけの妄言としか言えません。

 

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