非国民通信

ノーモア・コイズミ

何のための削減なのか?

2007-05-24 22:34:42 | ニュース

県職員ランチ異変 昼休み短縮で飲食店悲鳴(神戸新聞)

 兵庫県が今春から昼休みを一時間から四十五分に短縮したことで、県庁(神戸市中央区)の外でランチを取る職員が減っている。売り上げが激減した周辺飲食店は「死活問題」と“悲鳴”を上げ、県に改善を求めて署名を集め二十二日午後、提出する。一方、せわしい昼休みを見込んで、新たに出店した弁当屋も。わずか十五分の時間短縮が、波紋を広げている。

 職員の昼休みは、労働基準法で保証された四十五分だが、これまでは、有給で十五分間の「休息時間」を加え一時間だった。しかし、自治体職員の厚遇批判を受け全国で見直しが進み、県も四月一日から休息時間を廃止した。

 まぁ、なんですかね、よくある公務員叩きに迎合して休み時間を減らしたものの、当の公務員ではなく周辺の飲食店から苦情が来たと。昼休みが45分ではゆっくり外食するのは難しいですから、こういう事態も当然あり得るのでしょう。

 例によって「公務員は恵まれすぎ」「昼休みは45分が当たり前」「ウチはもっと少ない」、こういう意見が多数を占めるわけですが、ふむ、労働条件を低い方に合わせようと企んでいる人たちにとっては相変わらずの追い風のようです。「学校教員は毎日に約2時間の残業」なんてニュースもありましたが、これも同じく「何か問題なの?」「民間で2時間残業なら楽勝もいいところ」「何を贅沢言っているのだ」と、判で押したような意見が続々と寄せられています。御用学者も問題ですが、こういう「下」を基準として労働条件を考える人たちを何とかしないと展望は開けないような気がします。

 それはさておき気になるのが、休みを15分間短縮した意義がどこにあるのか?と。昼休みを15分削ったことで業務の効率が上がったのでしょうか。それとも、ただ公務員叩きに血道を上げている人を一時的に喜ばせただけでしょうか? 市民のことを考えるのと市民に媚びるのでは意味が違います。

 例えば、誰が支払ったか不明のまま「宙に浮いた年金記録」が5000万件あるそうですが、これはどうしようもありませんね。普通の会社で不明入金を放置したままにすることなど考えられないわけで、公務員批判がされるべきはこの辺の杜撰な仕事ぶりでしょう。

 請求書を発行する部署で働いたこともあるわけですが、役所、官公庁を相手にするのは大変です。ほとんどの役所は旧態依然とした紙ベースで業務をこなしているのでしょうか、どこも指定の請求書があって、一枚一枚手書きで項目を埋めて、会社員や社長印を押さねばならないわけです。「普通の」会社相手なら機械出力の請求書を自動発送するだけで手間も何もないのですが、そこに役所絡みの請求書発行業務が混じると、途端に仕事が止まったものです。しかも役所は「まだ決済が降りない」とかで毎度のように支払いが遅れるし・・・

 それでも叩かれるのは役所の非効率ではなく、公務員の「厚遇」ぶりです(日本の経済水準からすれば決して厚遇と呼ぶほどのものではないのですが)。そこで考えたのですが、日本の労働現場で排除されようとしているのは「非効率」「ムダ」ではなく「ゆとり」「遊び」と言ったものではないかと。つまり無駄を廃して業務を効率化しようとするよりも、ゆとりをなくして労働力を使い切ろうとすることに重点が置かれているのではないかということです。

 昼休みを15分間減らしたところで、業務が効率的になる、住民にとって利用しやすくなるということもないでしょう。むしろ「外に出られない」ことで職場の志気を悪化させる可能性の方が高そうです。効率を考えるのであれば「いかにリフレッシュさせるか」を考えてもよさそうなものですが、やっていることは逆です。それでも昼休みを削ったのは労働者を遊ばせている時間を減らすことを重視したからかもしれません。

 たぶん、日本は「もったいない」の国です。効率よりも「使い切る」ことを大切にします。オレンジを搾るにしても、搾って果汁の出が悪くなれば、どんどん新しいオレンジを持ってきて搾るのが効率を追求するやり方、逆に果汁の出が悪くなっても捨てずに限界まで搾り取ろうとするのが「もったいない」式でしょうか。ある意味ではモノを大切にする考え方とも言えますが、同時にほとんど搾れないオレンジを惜しむことで、少なからぬ無駄を生み出しているところもあるでしょう。そしてこの「もったいない」が人間の経済システムに持ち込まれているとしたら・・・

 

 ←何か感じていただけましたら是非

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