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非国民通信

ノーモア・コイズミ

星条旗よ永遠なれ

2025-01-13 21:40:12 | 政治・国際

 先般はロシアでYouTubeへのアクセスが遮断されたという怪情報が一部のメディアで流布されました。ただロシア在住者による新規投稿は普通に確認できますし、ロシア在住だが問題なくアクセスできるとの報告も相次いでいるようです。一方、私の環境からはgooサービスにはVPNを介して接続元を偽装しないと接続できない状況が本日もなお続いています。隣国を貶めるべくフェイクニュースを垂れ流す前に、自国で起こっている問題をどうにかした方が良いのでは、と私は思いました。(2025/1/14追記、ようやくVPNなしで繋がるようになりました……)

 

韓国 ユン大統領拘束の令状執行できず 警護庁が捜索許可せず(NHK)

「非常戒厳」の宣言をめぐり韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の拘束令状をとった合同捜査本部は、3日に令状の執行を試みましたが、大統領警護庁に阻まれて令状を執行できませんでした。拘束令状の有効期限は今月6日までで、合同捜査本部は「今後の措置は検討したうえで決定する」としています。

「非常戒厳」を宣言した韓国のユン・ソンニョル大統領について、警察などでつくる合同捜査本部は先月31日に内乱を首謀した疑いで大統領の拘束令状をとり、3日朝に捜査官らが令状を執行するため、ソウル市内の大統領の公邸の敷地に入りました。

しかし、大統領警護庁は現職大統領の警護を理由に公邸の捜索を許可せず、捜査官らは、公邸まで200メートルほどの場所で大統領警護庁の関係者ら200人あまりによって阻まれたということです。

 

 さて韓国では大統領の非常戒厳を皮切りに拘束令状が出るまでに至りました。ただ1月3日に執行を試みた時点では阻止されたことが伝えられています。勿論これで終わるものではなく令状の執行期限は過ぎても再請求によって再び発布されたとのこと、事態を長引かせることは出来ても幕を引くには至らないと言えます。ちなみに執行を阻止したのは大統領警護庁と伝えられているところですが、映像を見る限りは支持層も結構な人数が集まっているようです。

 ここで注目したいのは、大統領支持の集団が韓国の国旗だけではなく星条旗を同列に掲げているところでしょうか。これは他国でも時に見られる傾向で、「親欧米派」と呼ばれるデモ集団では一般的な行動ではあります。たとえば直近ですと州じゃない方のジョージアで発生した反政府デモにおいて星条旗が振られていました。ジョージアにはジョージアの旗がある、州じゃない方のジョージアは本家ジョージアへの敬意が足りないと思わないでもありませんが、なぜ自国の問題においてアメリカの旗が掲げられるのかは問われるべきものがあると言えます。

 「国際社会」における善悪は何によって判断されるか、ここで「アメリカ」を基準として採用している国は欧州を中心に少なくありません。アメリカがバックに付いている側が正しい、アメリカに背いている側は反対派を不当に弾圧する権威主義であると、そうメディアも報じてきました。だから2014年にウクライナで発生した暴力革命も速やかに「国際社会」の承認を得て現在に至るわけですが、この辺の価値観は韓国でも、少なくとも与党支持層には浸透しているのでしょう。

 何らかの政治主張を展開するとき、その背後に外国勢力の介入があるとなれば疑義を呈されることが一般的です。ゆえに韓国与党であれば反対派の主張の背後には北朝鮮や中国がいるのだと、そう印象づけることで相手の信頼を毀損しようとするのが常套手段です。日本でもウクライナ政治の問題を指摘すれば親ロシア派、自国の外交の問題を指摘すれば親中派と呼ばれたりするものですが、ただ一つだけ例外があって「親欧米派」だけはネガティブに扱われない、むしろ正当性の担保として西側諸国では受け止められていると言えます。

 こうした価値観を共有する「同志国」の間では、アメリカの側に属していることこそが自身の正当性を示す最大の根拠になります。行為は同じでもアメリカに従属しない国が行うことは侵略であり弾圧である、しかしアメリカの傘下にある国が行えばそれは自衛でありテロ対策になるわけです。何をやっているかではなく、アメリカの側に属しているかどうかが正しさを決める──国際社会を自称する欧米諸国の価値観に従えば、韓国における大統領支持層が星条旗を掲げた理由も簡単に説明が付きます。戒厳令を出すことがで適切であったかどうかは重要でない、そんなことよりも我々はアメリカの世界戦略の一端を担っているのだとアピールした方が説得力があるのでしょう。ただ、これがいつまでも正しいかどうかは疑われてしかるべきです。

 日本は与党も野党も親米保守で固まった政治的争点のない国ですが、しかるにUSスチール買収問題などからも明らかなように、日米の関係は決して相互に一致したものではありません。日本にとってアメリカは(願望込みで)同盟国ですが、アメリカにとって日本は衛星国の一つに過ぎないわけです。日本外交はアメリカとの関係に基づいて諸外国を「同志国」と仮想敵国に分けていますけれど、これは我が国の国益に叶うのでしょうか? イーロン・マスクも欧州の中道(親米)政権ではなく自国第一主義の政党に声援を送っています。ならば日本も、親米一筋からの脱却を考える良い機会ではないかと思いますね。

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2025年の展望

2025-01-01 20:37:38 | 政治・国際

 ネオコンの化身として世界をアメリカの敵と味方に分断してきたバイデン政権もついに終焉を迎え、今年はトランプ政権が再始動します。アメリカに背くものは許すまじと衛星国の団結を訴えてきたのがこれまでの「国際社会」と言えますが、今後はトランプの敵と味方とで争う展開へと移るでしょうか。取り敢えずアメリカ人にとってはさておき世界にとっては良いことである、ほんの少しだけ紛争の種が減ってわずかなりとも平和に近づくであろうと期待されます。

 トランプの本質はビジネスマン、みたいに言われることもありますが、それ以上に「好き嫌い」が行動原理と評価されるべきでしょう(現職の総理である石破を差し置いて安倍昭恵前首相夫人と会談したあたりは典型かと)。この点では何事もトランプの気分次第で不確定要素が多い、ただ外交面ではあらゆる点で最悪だったバイデンに比べれば一貫性がない分だけトランプの方が好転要素を含むというのが私の評価です。一貫して悪いものに比べれば、ブレがある方がマシですから。

 このトランプの好き嫌いの傾向は前政権時代から概ね明らかになっているところで、残念ながら中東方面については最悪から最悪への横滑り、対中国方面は若干のブレが期待され、ヨーロッパ方面は幾つかポジティブに評価される、ぐらいでしょうか。ネオコンの理念を貫いてイスラエルを支援するのも単なる好き嫌いでイスラエルを支援するのも結果は同じですが、何かの拍子にネタニヤフがトランプの機嫌を損ねて、それでアメリカの方針が変わったりしないかなと思わないでもありません。

 このトランプに起用された政府閣僚陣も、大いに世の中をかき回してくれそうで色々と期待しています。アメリカが内政面で混乱するのは結構な話ですし、ネオコン路線に追従してきた衛星国が梯子を外されるのも世界にとっては良いことですから。そんなわけで私はロバート・F・ケネディ・ジュニアやイーロン・マスクの台頭を肯定的に受け止めています。彼らはアメリカにとっては良くない影響をもたらすかも知れませんが、アメリカ一極集中の終焉は世界にとっての利益に他なりませんので。

 そんなイーロン・マスクは先般、ドイツの極右政党とされる「ドイツのための選択肢(AfD)」が「ドイツを唯一救える」とツイッター(現X)に投稿して話題を呼びました。まぁ現行の中道路線(ネオコン&ネオリベ)は明確に破綻しており、それと袂を分かった勢力の方が相対的には当事国にとって良いものをもたらすでしょう。アメリカに従わない相手を片っ端から敵視するネオコン路線よりは孤立主義の方が、資本家の利益が第一のネオリベ路線よりは保護主義の方が、相対的にはマシだと思います。

 ただそれは、アメリカにとっては別の話です。トランプもマスクも既存のエスタブリッシュメントを斥けて権力の座に就いただけに、長らくヨーロッパを支配してきた中道勢力よりも、それを追い落とそうとする「極右」の方に共感を覚えているのかも知れません。しかしアメリカの世界戦略に協力的なのは中道=ネオコンという既存体制の方であって、極右=自国第一主義が政権を獲得すれば従来ほどアメリカのための支出には賛同が得られなくなる、それは単にアメリカの利益であって自国の利益にならないのではないか?という疑義が呈されるようになるわけです。

 アメリカからすれば、むしろヨーロッパは今まで通り中道=ネオコンの支配体制が継続していた方が好都合のはずですが、そこはマスクもまたトランプと同様に「好き嫌い」が優先されているように見えます。何事もアメリカを基準とした国際秩序に親和性が高い現体制よりも、アメリカよりも自国単独の利害を優先する「極右」の方がマスクからすれば共感できる、そこで後者に声援を送ってしまうところにイーロン・マスクという人間の性格が表れていると言えるでしょう。

 これまでアメリカは諸外国への積極的な介入によって世界各地に紛争と親米政権の種を蒔いてきました。失敗に終わった典型は泥沼の内戦が続くリビアで、シリアもこれに続く可能性があります。逆に一時でも成功したのはウクライナや台湾でしょうか。そして州じゃない方のジョージアやルーマニアでも介入の影は見えており、これから大統領選が行われるベラルーシなどは当然ながら標的になっていると考えられます。恐らく選挙にはルカシェンコが勝利する、しかしアメリカの支援を受けた反政府勢力が大規模な抗議活動に出るのが予見されるところですが──アメリカの政権交代によってどれほど介入の程度が変わるか、そこは試金石になるでしょう。

 今年はウクライナを舞台にしたロシアとNATOの勢力争いも一つの大きな局面を迎えることが予想されますが、これに関しては1回では書き切れませんので、具体的な動きに合わせて追っていく予定です。残念ながら我が国では戦時報道が続いており事実に反したプロパガンダばかりが流されたまま、敵国(=ロシア)を貶める内容になってさえいれば真偽は問わず、どんな荒唐無稽な内容でも構わないと言った状況が続いています。結局のところ日本は先の敗戦から何も学んでいないのだと思うところ、以下は昨年に書いた記事ですが、ロシアとウクライナが一つの国であった時代から2022年までの経緯の基礎的な部分をまとめたもので、現代を理解するための前提知識として改めてリンクを張っておきます。

序文:ロシアとウクライナを巡る基礎知識、現在に至るまでの経緯

第一章:キエフ・ルーシの時代からソヴィエト連邦の時代まで

第二章:ロシア帝国、及びソヴィエト連邦の支配者達

第三章:ロシア・ウクライナを取り巻く往年の連邦構成国

第四章:ウクライナ、崩壊への歩み

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イスラエルにとっては良い結果、シリア国民にとっては別の話

2024-12-15 21:33:43 | 政治・国際

 先般はシリアのアサド政権が瞬く間に崩壊してしまったわけですが、その後に待ち受けるものについて考えてみたいと思います。まず前提知識として、シリアには大別して5つの政権支配下に属さない勢力が割拠していました。ゴラン高原を不法占拠するイスラエル、クルド人問題を口実にシリア領内へ一方的に「緩衝地帯」を築いたトルコ、このトルコと対立するクルド人勢力、油田地帯に駐留するアメリカ軍とその傀儡勢力、そして以前はヌスラ戦線とも呼ばれていたシャーム解放機構(タハリール・アル=シャーム、HTS)です。ここでシャーム解放機構が驚くべき短期間で主要都市を制圧、アサド大統領はロシアへ亡命し新政権が樹立されようとしているのが今ですが、これから先はどうなるのでしょうか。

 シャーム解放機構が専らアサド政権の残党狩りに精を出している一方で、イスラエルはゴラン高原からさらに兵を進めて占領地を拡大しており、これに抵抗する勢力は見られません。トルコの傀儡勢力もまたクルド人勢力の支配地への攻勢を強めている他、アメリカ軍もISの残党云々を口実に要所への攻撃を行っており、シリアを取り巻く3つの外国勢力にとっては絶好機が訪れていると言えます。もしシャーム解放機構がシリア全土の支配を目論んでいるのならば外国勢力の侵略にも抵抗する必要があるはずですが、今のところその様子は垣間見えず分割統治を前提に裏で話が付いているのかと疑わしく思えるところすらあります。

 このシャーム解放機構はアルカイダに起源を持ち、国際テロ組織にも指定されています。イスラエルやアメリカ、トルコに好都合な現状を肯定的に見せかけようとする人々からは、既にアルカイダとは決別化した、現在は穏健化していると評されるところですが、実態はいかほどのものでしょうか。取り敢えず明らかになっているのは、アサド政権崩壊を好機と支配地域の拡大を目論むイスラエルやトルコの動きには何ら有効なアクションを見せていない、ということです。

 一方でアサド政権を支援してきた国々からするとどうでしょう。ロシアからすると、基地の租借に関する前政権との合意を新政権が引き継ぐか次第です。ロシアがアサド政権から得ていたのは単純に中東における軍の駐留拠点という「場所」であり、それさえ維持できれば大きな問題にはなりません。逆にシリア側からするとロシアからの食料や肥料は今後も必要になるだけに、損得で言えばロシアとの関係は維持したいはずです。しかし裏でアメリカ・イスラエル・トルコと取引が成立しているとすれば、食糧危機のリスクを無視してでも新政権がロシア軍排除に動く可能性は否定できません。

 そして苦境に追い込まれたのがイランであり、イランが支援してきたヒズボラ、パレスチナです。これまでイランはイラクとシリアを経由してヒズボラに物資を供給してきた、そのヒズボラがパレスチナを援護してきたわけですが、この供給ルートが遮断されることでヒズボラも孤立、ガザも孤立を避けられなくなりました。アサド政権の崩壊によって、中東におけるイスラエルとイラン・パレスチナの争いは前者が劇的に優位に立ったと言えるでしょう。

 

ドイツ代表どころか国も揺るがす“エジルとギュンドアン”の禍根(footballista)

 ところが、5月にエジルとギュンドアンが独裁的なトルコの大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンと面会した後、その融合が本当にうまくいっているのか、疑問視されるようになっている。国家主義的な考え方が広まり、右翼的な「ドイツのための選択肢」(AfD)が野党第一党となっている現在、最も関心の高いテーマである。

 問題となったのは、トルコ企業が用意したロンドンでのレセプションで、エジルと一緒にエルドアン大統領と記念写真に収まったギュンドアンが用意していたマンチェスターCのユニフォームに入っていた「私の大統領へ。敬具」というメッセージだった。

 「人権を無視し、ジャーナリストを監禁するような独裁的政治家へのシンパシーを表明しながら、ドイツの最も重要なチームのためにプレーするなんてとんでもない」という批判の声が上がれば、『ターゲスシュピーゲル』紙も「2人は、国を一つにまとめるということの価値を疑問視している」と指摘。さらに、アンケートに答えた70%の人たちが、彼らを代表チームに招集するべきでないと答えたのだ。

 

 これは2018年の記事ですが、ドイツ代表のサッカー選手でトルコにルーツを持つ二人がエルドアン大統領と記念写真を撮影したところ、ドイツ代表からの追放論が沸き起こりました。今では考えられないことですが、当時はエルドアンこそが欧米の認定する「悪」であり、そんな「独裁者」との関係は忌まわしいものと扱われていたことが分かります。しかし現在のエルドアン及びトルコの欧米からの扱いはどうでしょうか。今でもアサド政権崩壊を好機と隣国で支配地域を拡大しようとする国の大統領のはずが、非難らしい非難を受けることもなくなっているわけです。

 かつてエルドアンが非難されてきた理由の一つには、クルド人問題があります。エルドアン側の言い分としては、あくまでテロリストに限定して取り締まっているだけ、しかし欧米からはクルド人全般を見境なく弾圧しているものと、昔はそう扱われていたものです。とりわけ北欧のスウェーデンなどは、トルコからテロ組織として指定されたクルド人武装勢力(PKK)の関係者を数多く受け入れており、相互に非難し合う間柄でした。

 転機が訪れたのは2022年で、ここから欧米(及び日本)にとってロシアが最大の悪に変わったのは記憶に新しいところかと思います。さらにスウェーデンとフィンランドがNATOというロシア包囲網に加わるに当たり、既存加盟国の承認が必要になった=即ちトルコが首を縦に振る必要が出てきたわけです。その結果としてクルド人問題で欧米は折れた、エルドアン側の言い分が全面的に受け入れられ、スウェーデンは亡命してきたクルド人勢力の構成員をトルコに引き渡す結果となりました。ロシア包囲網を強化するため、クルド人は欧米から切り捨てられてしまったと言えます。

 この後、エルドアンを糾弾する声は欧米からは全く聞こえなくなりました。日本でも俄にクルド人バッシングが盛り上がり現在に至ります。かつては悪の独裁者であったエルドアンはNATOの価値観を共有する同志となり、国外のクルド人は迫害から逃れてきた民族から治安を乱す不法な移民へと変わりました。しかし変わったのはエルドアンでもクルド人でもないはずです。変わったのは欧米からの目線であり、二重どころでは済まないレベルで基準が動いた過ぎません。

 今、シリアではトルコの傀儡勢力がクルド人の支配地域攻略を目論んでいます。かつてはアメリカがクルド人勢力を支援しており、これが2022年よりも前であったら決して起こらなかったことでしょう。しかしトルコがスウェーデンのNATO加盟を承認するための取引として、クルド人は切り捨てられました。自称・国際社会こと欧米諸国の間では、今やエルドアン側の言い分が正しい、トルコが攻撃しているのはクルド人の中でもテロリストだけであり、決してクルド人全般を弾圧しているのではない、そういう風に決まってしまったわけです。

 アサド政権だってそんなものだろうな、と思います。アサドが強権的に取り締まってきた対象にはISILの構成員や外国の工作員もいる、ただイスラエルと対立しロシアやイランと協力関係にある、パレスチナを支援するヒズボラの補給ルートでもあったが故に、より大きな「悪」として描かれてきました。これが逆にアメリカやイスラエルの傀儡であったなら、評価は変わっていたように思います。もしアサド政権がアメリカに協力してヒズボラの供給ルートを断つ上で重要な役割を果たしていたのなら、彼が人道面で非難を受けることはなかったはずです。

 何はともあれアサド政権は打倒され、元・アルカイダのシャーム解放機構が首都を占拠しました。そしてイスラエルが南部から侵攻を続け、トルコがクルド人支配地域を自身の勢力圏に収めようとしている、油田地帯は引き続きアメリカ軍が駐留したままです。勝者(イスラエル、トルコ、アメリカ)と敗者(イラン、ヒズボラ、パレスチナ)は明確になりましたけれど、ではシリア国民は果たしてどちらに入るのでしょうね?

 イスラエルやアメリカにとって好都合な現状を肯定的に見せかけるべく、ここぞとばかりにアサド政権の非道を糾弾するメディアや論者は少なくありません。イスラエルやアメリカにとって良いことは、その国の住民にとっても良いことであると、そう信じている人もきっと多いのでしょう。ただまぁ独裁者が打倒されて欧米諸国から大いに賞賛されたはずのリビアなどでは、カダフィ時代よりもずっと酷い混乱状態が続いていたりします。アサド政権に問題がなかったとまでは思わないですが、その打倒がシリア国民にとって良いものであるかどうかは、少なくとも今の時点では保証できませんね。

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ネオコン勢力の反攻

2024-12-08 21:41:21 | 政治・国際

 日本の政治を巡っても話題は尽きない昨今ですが、ただ主立った野党も政策面では与党と大きな隔たりがない、結局のところ日本の政治は安定しているのだ、というのが私の評価になります。一方で諸外国に目を向けると危機的と呼んでもおかしくない事態が相次いでいるようです。変わらない日本の政治と、何かの拍子に激変してしまう国の政治、日本の企業文化では「変化」を称揚しがちですけれど、変わることそのものに価値を置いてしまうのはどうなんだろうな、と思わないでもありません。

 どこから触れていけば良いのか迷うところですが、まずはアメリカでしょうか。こちらはバイデンという古典的政治家からトランプという支離滅裂な御仁への大統領交代が迫っているわけです。今後に向けてアメリカ国内の混乱も予想されますが、より先に影響が見込まれるのは国際戦略面で、積極的な介入を好むネオコンの理念に忠実だったバイデンとは異なり、アメリカの覇権のためであろうとも国外への支出を厭うトランプへの代替わりによって、勢力図が変わってくる地域も出てくることでしょう。

 一つはロシア・ウクライナ方面で、アメリカの鉄砲玉として戦ってきたウクライナは梯子を外されようとしています。アメリカを皮切りにイギリス・フランスと衛星国が次々と長射程兵器の使用制限を緩和し始めたのは、トランプ政権発足を控えて事態を不可逆的にエスカレートさせる思惑あっての決断と言うほかありません。アメリカ陣営に敗北があってはならない、そのためにはどんな犠牲をも厭わない、それがネオコン=中道の理念ですから。

 そんな欧米を支配してきた中道勢力ですが、昨今は右派層との分離が顕著です。中道派が推し進めてきたアメリカの覇権と資本家の優遇、つまりネオコン・ネオリベの理念に欧米では右派が強い反発を見せ始め、アメリカ陣営の勝利ではなく自国単独の利害を、富裕層の利益ではなく移民を排した自国民の利害を重視する政治勢力が、時には中道派を凌ぐ票を獲得するようになっています。ヨーロッパで自国第一主義の右派勢力が権力を掌握するようになれば、NATOの覇権も終わる、パクス・アメリカーナの時代も終焉を迎えることでしょう。

 ただ中東に目を転じると、シリアではアルカイダ系の反政府勢力による大規模な攻勢を前に、アサド政権は抵抗らしい抵抗も出来ないまま終焉を迎えました。これは協力関係にあったロシアやヒズボラがシリア支援まで手が回らなくなったからとも言われるところですが、アメリカやトルコが支援している反政府勢力も呼応する動きを見せるなど、別の国が糸を引いているところもあるでしょう。シリアはウクライナよりもずっと昔から、代理戦争の舞台でした。ロシアがシリア政府の許可を得て行動している一方でアメリカはシリア政府の許可なく軍を駐留させてきた等々、しかしこうした状況が注目されるのは稀で、ウクライナとの「国際社会」の扱いの違いは際立っています。

 そしてお隣の韓国では大統領が突然の戒厳令を発するなど、軍政時代に時計の針を巻き戻そうとするかのごとき動きがありました。これは与党議員の支持も得られず大統領自身によるクーデターは1日と持たずに終わりましたけれど、現体制の存続は大いに危うくなったと言えます。今後、日本と歩調の合いやすい親米保守政権から革新系が権力を握るとなれば日本の立ち位置も再考が再興が必要になるところですが──それでも日本の政治は変わらない、隣国をあしざまに罵り続けながら、ひたすら米国に追従し続けるのかも知れません。

 ルーマニアでは先の大統領選でNATO懐疑派の候補が最多得票を集めるも、これに危機感を抱いた憲法裁判所が投票は無効との判断を下すなど、諸外国の介入が強く疑われる事態が起こっています。そして州じゃない方のジョージア(以下、グルジアと略)でも中立路線の与党が勝利を収めたわけですが、親NATO派の大統領や野党が結果に強く反発、欧米諸国の支援を受けて政府への抗議活動が活発化しています。この辺りは前々から予見していたことではあるものの(参考:ロシア・ウクライナを取り巻く往年の連邦構成国)、当たらない予想であって欲しかったですね。

 グルジアで起こっていることは、11年前のウクライナで起こったことと酷似しています。中立路線の政府の元でEU加盟交渉が停滞したのを契機に反政府勢力が活発化し、当初は平和的なデモと伝えられるも次第にアメリカの政府関係者や武装勢力が合流していったのがウクライナで11年前に起こったことで、これは今まさにグルジアで起こりつつあることです。ウクライナでは大統領が煮え切らない態度を続ける内に首都の占拠を許しクーデターに繋がってしまいましたが、その教訓を踏まえてグルジア政府はどう行動するでしょうか。この辺も、トランプ政権の発足を前にネオコン勢力が第二戦線を作るべく背後で糸を引いているようにも思えるところ、多極化の元での平和か、アメリカの敵と味方で争い合う時代の継続か、その分かれ道にあるとも言えます。

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摘発されるライン

2024-12-01 21:55:54 | 政治・国際

 日本における犯罪検挙率は、年度や地域によって上下しますが概ね5割を下回るそうです。流石に殺人などは100%に近い検挙率が維持されていますが、その一方で認知されるだけで終わっているものも少なからずあることが分かります。もちろん「認知されない」不法行為も多々あることは容易に想像され、罰せられることなく犯されている罪もまた少なくわけです。そこで私は思うのですが、果たして公職選挙法違反の検挙率はどれぐらいなのでしょうか? もしくは認知されることなく終わっている違反はどれだけあるのでしょうか?

 昨年末には、法務副大臣を務めた柿沢未途が公職選挙法違反で逮捕されています。政府与党の閣僚であっても、一応は公職選挙法の対象外ではないようですが──ここで問われるのは柿沢氏の認識の方でしょうか。果たして柿沢氏は公職選挙法を知っていたのか知らなかったのか、政治家の家に生まれて所属政党を転々としながら国会だけでも当選5回という選挙のプロであるはずの氏が公職選挙法を知らないとしたら、それも首を傾げる話と言えます。

 2022年の北京オリンピックでは、スキージャンプの高梨沙羅選手が規定違反で失格となり世間を騒がせました。これはスーツの寸法に関する違反とのことで、どこのチームも飛距離が出るように規定ギリギリのラインを攻めている中、高梨選手の場合は僅かに規定をオーバーしてしまったようです。柿沢未途の場合もこれと同じ、公職選挙法を知らなかったわけではない、むしろ知っていたからこそ「公職選挙法が適用されない」ギリギリのラインを攻めようとした結果なのかな、と思います。

 そして現在は、斎藤元彦兵庫県知事の公職選挙法違反容疑が問われています。これも若者人気に忖度してか有耶無耶にされそうな気配が漂っているところですが、どうしたものでしょう。斎藤元彦は恐らく、関係者が余計なことを言わなければ何ら問題視されないと踏んでいたものと思われます。そして立花孝志は、制度の不備に意図して乗っかっている、そこで何かの違反に問われても斎藤元彦には連座されない、自身の目的(選挙荒し)は達成できると判断しての行動と推測されます。ただ一人、折田楓だけは本当に公職選挙法を知らなかったのだろうな、という印象です。

 何はさておき、摘発される前から公職選挙法違反が取り沙汰されるのは非常に珍しいことではないでしょうか。通常は、違反として摘発され初めて世間に知られる、摘発されなければ世の中の注目を集めることなく終わるのが公職選挙法違反(これに限ったことではないかも知れませんが)というものです。警察が動かなければメディアも動かない、メディアが動かなければSNSにも火は付かない、実際には公職選挙法違反があっても知られることなく闇に葬られている、しかし闇に葬られていること自体が知られていない、そんな気もします。

 ところが今回、警察が動く前から公職選挙法違反を強く疑われる内容が広く知られてしまったわけです。折田楓という、恐らくは違反であることを理解していなかったであろう関係者によって、まさに当事者の証言として内実が明らかにされたのは異例中の異例と言えます。通常は警察が動いてからの結果発表としてメディアからSNSへと伝播するものですが、今回は違います。これで客観的評価の通りに公職選挙法違反として摘発されるのであれば秩序は保たれますが、そうでない場合はどうなるでしょうか? これが一つの判例として、「ここまでなら公職選挙法違反に問われない」というラインが明示されてしまう結果に繋がることは言うまでもありません。そうなれば当然、今後の選挙では同じことをやる候補が続出することでしょう。

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政治文化の大革命

2024-11-24 21:41:03 | 政治・国際

 先日は兵庫県知事選が行われたわけですが、斎藤元彦前知事が再選を果たしました。日本人はパワハラ気質の人が好き、第二・第三の斎藤元彦は必ずや登場するであろうと予想はしていましたけれど、まさか支持母体の維新からも明白に切り捨てられた前知事がこれほどの短期間で権力の座を取り戻すことは、流石に私も読めなかったです。かの権力闘争の天才・毛沢東ですら失墜から返り咲きまでは少なからぬ歳月を要したことを鑑みれば、この辺は率直に感嘆すべきところでしょうか。

 

10~20代は7割が斎藤氏を支持 兵庫知事選、投票者ネット調査(毎日新聞)

 前知事の失職に伴う兵庫県知事選を巡り、毎日新聞社と神戸新聞社は17日、投票を終えた有権者を対象にインターネット調査を実施した。再選を確実にした前知事の斎藤元彦氏(47)は幅広い層から支持を集めた。特に若い世代に浸透し、10~20代の投票先の7割近くは斎藤氏だった。

 

 世代によって支持傾向が大きく異なる政党・候補者は以前よりいるもので、先の都知事選の石丸伸二、衆院選の国民民主、そして兵庫県知事選では斎藤元彦と「若者に人気」の候補が世間の注目を集めています。選挙への関心が低く投票率が下落すると、それでも選挙に行く割合の高い中高年層の票が結果に反映されやすくなり当該世代の支持が厚い立憲民主などに有利となるわけですが、前回の衆院選、今回の兵庫県知事選はいずれも投票率が上昇、若者が投票所に足を運ぶようになったことで大きく結果が左右されたと言えるでしょう。

 無投票や白票は意味がないとムキになって否定する、必ず誰かに票を投じるべきなのだと主張する人もしばしば見かけます。投票率が低いままの選挙は番狂わせも起こりにくく無風に近いところがありましたけれど、若者が選挙に足を運ぶようになった、投票率が大きく上がったことで今までとは異なる勢力が伸びてきているのが現状です。まさに選挙に行けば世の中が変わるのだと言えますが──今の「結果」は無投票や白票を否定してきた人の望んだ状況なのでしょうか。

 いずれにせよ、若者の力で斎藤元彦は再び選挙で勝ちました。少し前までは斎藤批判を繰り広げていたメディアや政治家の一部は早くも自己批判を行い、復権した知事にすり寄る動きを見せています。維新の開祖である橋下は収まりが付かないのか今でも斎藤勝利に苦言を呈しているところですが、周囲の政治家は口を噤み始めている等々、今後の維新と斎藤の関係がどうなるかは大いに気になります。若き信奉者を後ろ盾に斎藤元彦が我が国の政治文化に大革命を起こしていくのかどうか、そこは目が離せません。

 斎藤元彦が若年層の強い支持を得た背景としては、動画配信やSNSの影響が挙げられています。いわゆる闇バイトに応募するような精神を持ってすれば、立花孝志を怪しいなどとは感じない、むしろYoutuberは信用できる、エスタブリッシュメントの書いていることこそが嘘で自分が見たことこそが真実と、そういう考え方になるのでしょう。流行は繰り返すとも言われますが、ネット右翼の全盛期にブログを書き始めた身からするとまさに「ネットde真実」の再来といった印象を受けます。

 もっとも既存メディアも誠実ではなかった、信頼を損ねる原因はあったはずです。そして政治家も然り、たとえば中国やロシアを非難する文脈で「法の支配」というフレーズが好んで使われますけれど、一方でアメリカやイスラエルの国際法違反に対して同じ基準が適用されることはありません。大手メディアの敵、アメリカ陣営の敵に対しては不当な非難を向け、「味方」に対しては罪を問わない、そんな姿勢は既存メディアも既存政党の政治家も、Youtuberもインフルエンサーも、どれも同じようなものであったことは確かです。

 こうした中では事実というものは意味を持たなくなります。刑死したキリストが復活したかどうか、その真偽を明らかにすることで考え方を変える人がいるでしょうか? 何を信じるかは事実関係に左右されるものではない、むしろ何を信じることに決めるか自己決定の問題でしかありません。「事実に沿って自分の行動を変える」という人は実は昔から決して多くない、むしろ「何を信じるか」はあらかじめ決まっており、その教えに沿って生きるのは過去の人間も現代の人間も大差ないのだ、と思います。

参考:兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に
  ※魚拓 https://megalodon.jp/2024-1121-0124-57/https://note.com:443/kaede_merchu/n/n32f7194e67e0

 一方、選挙期間中に斎藤陣営の宣伝を請け負っていた業者が自らの活動内容を嬉々として披露するなど、公職選挙法違反の証拠が万人に公開されていたりもします。基本的に日本の政治文化はカネが絡むと厳しくなる、昨年末には法務副大臣であった柿沢未途までもが逮捕されるなど、この辺は従来であれば許されないところです。もし公職選挙法が全ての候補者に等しく適用されるのであれば斎藤知事もまた処罰を免れることは出来ませんが、どうなるのでしょうか。先述のように国際法の適用される基準をロシアや中国と、アメリカやイスラエルとでは別々に設けているのが我が国でもあります。人気者にはあやかりたい、という精神で公職選挙法違反も有耶無耶に……という可能性があり得ないとは言い切れません。

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総理は替わらず、野党もそんなには変わらず

2024-11-17 21:26:02 | 政治・国際

 今年は諸外国でも重要な選挙が多くありました。政権が変われど国の方針には変わりのないところもあれば、今後の転換が見込まれるところもあります。日本は自民党が過半数を失うなど国会内部での勢力図には大きな変化があったわけですが、しかし国政の舵取りはどうなるのでしょうか。結果として総理大臣は引き続き自民党総裁が担う形に落ち着きましたけれど、ただ民主党代表が総理大臣だった頃も日本の政治は今と大差なかったのでは……という記憶もあります。

 ともあれ与党が過半数割れとなったことで、多数決での勝利のためにはいずれかの野党の協力が必要になった、そんな中で国民民主党が脚光を浴びる形になりました。そして国民民主党の代表である玉木雄一郎の不倫が報じられまして、しかも不倫相手を衆議院憲法審査会にまで招いていたことも伝えられています。我が国の世論は政策的な誤りには寛容でも金の問題には厳しい、そして金の問題の次くらいには女性問題に厳しいところですが、玉木の場合はどうなるでしょうか? これが許されれば、ある意味で日本の政治の変化と言えるのかも知れません。

 野党議員が一致して石破以外の候補に票を集めれば、非自民党の総理大臣が生まれる可能性はありました。しかし総理大臣指名の決選投票では84の無効票が投じられ、「過半数ではないが1位」の石破が多数決の勝者になったわけです。決選投票では共産党のみが野田に投票先を動かしたと伝えられ、そうした政局優先の日和見主義的な振る舞いは大いに非難されるべきと言えます。一方で維新や国民といった野党のナンバー2とナンバー3は一貫して自党の候補に票を投じたようで、結局のところ共産党は従属させられても同類の二党を協力させることは出来なかった、というのが結論ですね。

 

立民は関東、維新は関西 野田元首相、すみ分け提唱(共同通信)

 立憲民主党の野田佳彦元首相は24日放送のBSテレ東番組で、次期衆院選に向け日本維新の会との候補者調整を提唱した。「地域的に強い弱いがある。すみ分けは仕方がない」と指摘し、関西を維新、関東を立民で調整すれば「接戦区でも自民党に勝てるかもしれない」と述べた。

 自民派閥の裏金事件を受けた政治改革では、野党の方向性は一致していると指摘。「大同団結できるかどうかが問われている。ぎりぎりまで交渉を続け、10でも20でも議席を上積みできれば全然違う」と語った。

 

 これは今年の3月の報道ですが、立憲民主にとっては維新こそが同志でした。しかし維新から見れば話は違う、右派層から偏見を持たれたままの民主の残党と組むことは自党のイメージダウンに繋がる、方向性の一致だけで解決するものではない、という判断が働いたものと言えます。アメリカの民主党も、共和党の昔年の主流派であるネオコン層の支持を取り付けるなど「右」に向けたアピールには熱心でしたが、それでも共和党支持の有権者はトランプに票を投じました。立憲民主も同じで、右に秋波を送るけれども右からは嫌われたまま、というのが現状のようです。

 そして立憲と国民、両民主との関係も、同じ御用組合連合を支持母体としながらも連携を取るには至っていません。これが自民党であったら党内の別派閥を形成するだけで片付くのでしょうけれど、民主党の場合は容易く党を割ってしまうわけで、この辺の「政治力」が自民党と旧民主党の最大の差であろうと私は思います。もっとも野田自身が本気で政権を取るつもりがあったのかどうかは疑わしいところもあり、維新や国民民主との連携云々はそこまで踏み込んで進めていなかったのでは、という気がしないでもありません。

 かつて民主党は、選択的夫婦別姓の法案を何度となく国会に提出し、自民党政権によって否決されてきました。そして2009年の政権交代前夜に民主党は選択的夫婦別姓制度を公約から外し、自らが与党であった時期は議論を封印してきました。これが再び下野して野党に戻った後は改めて選択的夫婦別姓を主張して今に至るのですが、果たして民主の残党達の真意はどこにあるのでしょうか。あれから15年が経過し世間の受け止め方も変わりましたので、旧民主党議員達の考え方も多少は変わっているのかも知れません。しかし立憲民主の執行部の面々は、昔の民主党から今なお多くを受け継いでいます。

 ことによると野田ら昔年の民主党執行部は今でも本音では選択的夫婦別姓に賛成していない、自民党政権が否決してくれる間は選択的夫婦別姓の導入を主張するけれど、自分たちが与党となって法案を可決「出来てしまう」タイミングでは選択的夫婦別姓を持ち出したくない、それが民主の残党達の変わらぬ考え方なのでは、と思うところもあります。もし立憲民主党の執行部が15年前のように選択的夫婦別姓を封印したら、たぶんその時こそ民主党が本気で政権の座を狙った合図になるのでしょう。

 そんな民主の残党にも熱心な信者はいるもので、上記のような主張は典型的と言えます。これは無効票ではなく「よりマシな地獄の選択」の結果として立憲民主党の候補に票が投じられることを前提にしているわけで、まさに民主信者の思い上がりが凝縮された代物です。もし私が国会議員であったなら、無効とされても石破でも野田でもない別の候補に票を投じます。しかし無効票が許されない、必ずどちらか「よりマシな」方に票を入れろと強要されたなら、泣く泣く石破に入れます。野田よりはマシですから。「よりマシな」方として選ばれるのは民主党系の候補には限らない、ということを信者達は理解する必要があります。

 普段の選挙も然りで、白票を投じる人や選挙に行かない人に怒りを向ける人が少なからずいますけれど、そうした人の多くは「本来であれば立憲民主に投じられるはずだった票が損なわれた」みたいに思っているのが興味深いところです。むしろ今回の衆院選で選挙に「行かなかった」人は自民党支持層にこそ多いと推測されており、「選挙に行かない」人々のおかげで与党過半数割れに繋がったわけです。投票率が上がれば自分の支持する政党が伸びるみたいな青写真を描いている人をネット上では頻繁に見かけますが、むしろ違う党に投じられる票が増えるだけ、選挙に行かない層はもっと別の党を支持する傾向が強い、そういう可能性を考慮できないとダメでしょう。

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アメリカにとっては良くない結果だが、世界にとっては別

2024-11-10 21:26:55 | 政治・国際

 先日は、ことによると日本の衆院選よりも我が国への影響が大きいかも知れないアメリカ大統領選が行われました。国内報道は総じてハリスに好意的であった一方、蓋を開けてみれば激戦州と呼ばれた選挙区を軒並み制する形でトランプが勝利、次期大統領の座を確実なものとしたわけです。アメリカ人にとっては残念な結果と言えるかも知れませんが、他の国の人間からすればこれでいいのかな、と思います。

 一言で言えば、バイデン・ハリスはネオコン、トランプは混沌でしょうか。共和党の往年の主流派からも広範な支持を得たハリスの外交姿勢が「一貫して悪い」ものであるのに対し、トランプに一貫性はありません。日本でも橋本龍太郎から小泉純一郎、民主党政権へと引き継がれた経済政策は「一貫して悪い」ものでしたが、その後の安倍晋三の経済政策は支離滅裂でした。この場合にマシなのはどちらでしょうか? 一貫して悪いものに比べれば、一貫性がなくどっちを向くのか分からない方が相対的には良い、というのが私の評価です。

 東京都知事に当選するのは、必ずしも有能な人間でない方が良いかも知れない、と私は以前に書きました。ただでさえ東京一極集中が大きな歪みを生んでいるのに、もし東京に有能な首長が誕生してしまったらどうなるでしょう。今以上に東京の繁栄が突出してしまえば、それは日本全体にとって良いことではありません。問題のある人間がトップに居座ることで東京一極集中を抑制できるなら、結果としてはポジティヴに評価されるべきです。そして世界とアメリカの関係もまた同様で、伝統的なネオコン政治家よりも混乱を招く政治家が上に立ってくれた方が、他の国にとっては好ましいと考えられます。

 トランプはアメリカ国内を信者と反対派に分断したのかも知れませんが、バイデンとハリスは世界をアメリカの敵と味方に分断してきました。そして日本は後者の路線に全面的に乗る形でアメリカの傘下にある国を同志と呼び、アメリカに臣従しない国へは絶えざる敵意を向けてきたわけです。我が国は率先してアメリカの尖兵であろうとしてきましたが、この忠義にトランプが報いることはないでしょう。むしろ梯子を外される格好になる、「アメリカの敵」との戦いは全て日本の負担で行うことが求められる、加えて米軍展開の費用負担増を求められる可能性も濃厚です。それでもなおアメリカに尽くすことが平和のためであると信じて今の路線を突き進むのかどうか、日本もまた岐路に立たされると言えます。

 一口に「アメリカ第一主義」と言っても、それは状況により意味合いが異なります。まずアメリカ国外においては一般に「中道」とも呼ばれアメリカ陣営の勝利を何よりも優先し、そのためには自国の負担を厭わない政治姿勢が一つです。反対にアメリカ「陣営」のために自国が何かを負担することを厭う、自国第一を唱え一般に「極右」と呼ばれる勢力がヨーロッパでは勢力を広めています。

 では舞台がアメリカ国内である場合はどうでしょうか? アメリカ「陣営」の勝利のために衛星国を糾合し膨大な軍事支援を続けてきたバイデン・ハリス政権は明確な前者です。一方で衛星国への支援を渋るトランプの外交路線は典型的な自国第一主義、後者と言えます。口にアメリカ第一を掲げるのはトランプの方ですが、アメリカ「陣営」を第一にしてきたのはバイデン・ハリスであり、近視眼的に自国の損得でしか判断できないトランプのアメリカ「一国」の第一主義は、長期的にはアメリカの世界への影響力を弱めることに繋がるでしょう。ただ、それは世界にとっては良いことです。

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衆院選の結果を振り返る

2024-11-03 20:18:26 | 政治・国際

 さて先週は衆院選が行われ、自民党が過半数割れする結果に終わりました。「国民に人気」と持ち上げられることの多かった石破ですが、自分に勢いがある今ならば選挙に勝てると、そんな思い上がりがあったのでしょうか。しかるに投票率は53.85%と、戦後3番目となる低さを記録したそうです。とりわけ自民党支持層が現状に呆れて投票に行かない傾向が見られたとも伝えられています。無投票には意味がある、投票に「行かない」という選択肢は国政を動かすと証明されたと言えるでしょうか。

 自民党が大きく票を減らした結果として恩恵を受けたのは野党第一党すなわち立憲民主で、議席を50ほど増やすことになりました。ただ議席数だけを見れば躍進と言えなくもありませんが、比例区での得票数は実のところ横ばいに近い数字と、党への支持は必ずしも高まっていないことが分かります。それでも小選挙区で自民党が自滅したおかげで、トップに躍り出た候補が相次いだわけです。

 私からすると立憲民主は最も政策的に相容れない党ですので、小選挙区では立憲候補の当選を阻止すべく自民党候補に投票すべきか大いに迷いました。ただ元からの自民党支持層からすると、野田佳彦が率いるような党であれば自民党政治から大きく変わる虞はない、今の立憲民主に負けてもそれほど心配することはない、という判断も働いたように思います。だから自民党支持層は、自らが支持する党にお灸を据えるため選挙に行かなかった、立憲の候補が小選挙区で勝つのを黙認した、そんな側面もあるのではないでしょうか。

 逆に得票を大きく伸ばしたのは民主の残党の中でも玉木派の方で、こちらは比例区で候補が足りず他党に当選を譲り渡すほどの票を集めました。結果、国民民主がキャスティングボートを握る格好となり、与党入りしないまま閣外協力するかどうかとの話が進んでいます。政権が交代しても政策が同じままでは無意味、逆に政権が変わらなくとも政策が変われば有意義と私は書いてきましたけれど、この行く末はどうなのでしょうね。国民民主には期待よりも懸念が勝るところですが、キャスティングボートを握った野党が与党の政策を変えさせる、という構図自体は良いと思います。

 一方で一時は世論調査で立憲を上回る人気を得ていた維新は、大阪の小選挙区限定で圧倒的な強さを見せるも全国的な支持は失速しており、議席を減らす結果に終わりました。勢いで野党第一党の座に躍り出るかに見えた新興政党は何度となく見てきましたけれど、どれも民主の残党の牙城を崩すには至らず、党勢を維持することの難しさを感じさせるところでしょうか。所詮は一時的な流行に乗っただけ、急ごしらえのメンツでは遠からずボロが出る、維新も一つの曲がり角なのかも知れません。

 そして共産党もまた議席を減らすことになりました。民主の残党に選挙区を譲る自滅ムーヴからの転換も見られたのですが、相変わらず偏見こそ持たれたままである一方、従来の支持層は他党へと目が向いてしまっているようです。昔は他党とも一線を画したところはあったのかも知れませんが、親米路線と家計的な財政理解は自民や立憲と大差なく、敢えて共産党に票を投じる意味は何なのか問われるところもあったように思います。

 今回の自民党の裏金問題も大元は共産党の機関紙である赤旗の報道に端を発しており、そうした点では一定の評価もされてしかるべきとは言えます。ただ自民党の裏金問題を焚き付けた結果として議席を得たのは立憲民主、得票を増やしたのは国民民主と、働きに比して得たものは皆無のようです。もっとも来る総理大臣指名選挙に向けては共産党を政権に入れないと明言してきた立憲にすり寄る姿勢を見せるなど、政局を優先する志の低さは隠せないところ、政策の転換ではなく政権の交代に重きを置くならば、もう党を解散してしまった方が良いでしょう。

 なお世代別の投票傾向を見ると中高年層は立憲、若年層は国民への支持が厚いとされています。投票率の高い世代に支持層が固まっていることで立憲は今回の議席数を勝ち得たところですが、若年層の投票率が高まれば結果は変わったことでしょう。投票率が低ければ立憲優位は保たれる、しかし若者が投票に行けば相対的に立憲が弱まって維新や国民が伸びてくるものと予想されます。どうも立憲支持層と思われる人が「無投票や白票には意味がない、選挙に行けば世の中は変わる!」と熱弁しているケースを多く見るのですけれど、その結果を理解しているのでしょうかね?

 まぁ自民・公明の過半数が崩れたことで一定の混乱は予想される、従来路線の継続に一つのハードルが出来たことは確かです。とは言え野党の閣外協力でハードルを乗り越えてしまう、親米・緊縮路線が継続されることは普通にあり得ます。やはり政治が変わるためには「中道」と「右派」の分裂が必要になるというのが私の考えです。選挙の顔として敗北を喫した石破が党内の求心力を失い、高市あたりを中心としたグループとの間で対立が激化したら、少しはチャンスかも知れません。もっとも民主の残党が路線対立で簡単に党を割ってしまうのとは裏腹に、自民党は派閥までは作っても党は割らない、そこは手強いところです。

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政権だけが変わっても意味はなく

2024-10-20 21:32:55 | 政治・国際

 選択的夫婦別姓の是非も今回の選挙の争点であると、幾つかのメディアで伝えられています。そして自民党以外の政党は概ね、選択的夫婦別姓に肯定的な候補が多数派なのだそうです。ではやはり自民党が問題なのだと、そういう方向に話を持って行きたがる人もまた多いところでしょうか。しかし私は、かつて選択的夫婦別姓の法制化を公約に掲げていた政党が与党の座に君臨していた頃を覚えています。当時の政府与党の名は──民主党です。

 かつて民主党は、選択的夫婦別姓を認める法案を何度か国会に提出し、与党=自民党によって否決されてきました。そんな自民党も一時は支持率が低迷し民主党による政権交代を許したわけですが、この政権交代前の選挙に先だって民主党は選択的夫婦別姓の導入を公約集から外しています。そしてめでたく与党の座に就いた民主党は幾つかの強行採決で自民党からの批判を浴びたりもしましたが、選択的夫婦別姓については俎上に挙げるそぶりもなく、再び自民党に敗れて下野するまで黙殺を続けて今に至ります。

 そんな民主党政権の残党は大きく二つの派閥に分かれて存続しているところですが、与党時代に封印していた選択的夫婦別姓を再び持論であるかのように掲げていたりします。かつて公約集から夫婦別姓を外した当時とは、自らが与党であった当時とは、何かが変わったと言うことなのでしょうか? 与党時代に「なかったこと」にしてきた選択的夫婦別姓を恥ずかしげもなく掲げる民主の残党に比べると、まだしも公然と反対している自民党の方が誠実と感じられないこともありません。

 この手の発言は一部で喝采を浴びるものですが、与党(自民党)以外の目立ったところに票が集まった結果として現れたのは、何よりもまず維新の躍進でしょうか。自民党政治は糞であるとして、では自民党以外の政党や政治家に力を持たせれば世の中が良くなるかと言えば、「下には下がある」ことを証明しているケースが少なくありません。そもそも大阪近辺が維新の支配下に入って政治が良くなったと思い込んでいる人が「自民党に勝てそうな候補」への投票を呼びかけるのであれば理解はしますが、そういう人ばかりでもないはずです。

 むしろ民主党政治に比べれば自民党政治の方がマシ、立憲民主と自民が争う選挙区であれば、立憲候補の当選を防ぐために妥協して自民党に票を投じる、という判断もあるように思います。今の自民党政治に肯定的な人は相当に限られることでしょうけれど、だからといって自民党以外の有力政党すなわち立憲や維新が議席を増やすことで事態が好転すると考えている人もまた限定的で、故に一部の支持層が期待するほど野党第一党への期待は高まっていない、というのが現状と私は判断します。

 少なくとも民主党政権時代に「総理大臣」などの要職を務めたメンバーは今も立憲民主党の実権を握り続けており、実際に政権を取った場合に何をするような人々であるかは明らかです。そして維新もまた地域限定ですが、与党としてどのように振る舞ってきたかは十分に判断できます。安易に現政権への審判に持ち込んで自民党政治の○×を問い、そこで「×」ならば野党第一党に投票……みたいな意図が透けて見える主張を繰り返す人もいるところですが、ちょっと卑劣だな、と感じないでもありません。

 以前にも書きましたけれど、政策が変わることで世の中も変わります。逆に政策が変わらなければ、世の中が良くなることはありません。同じ政党が与党のままでも政策が変われば世の中は変わりますが、別の政党が与党に成り代わっても政策が同路線であれば世の中は変わらないわけです。そして2009年の政権交代は、まさにそういうものでした。政権交代が、単なるガス抜きに終わってしまうようでは何の意味もありません。たとえ当選の可能性が低くとも政策の異なる候補に投票した方が、単に「自民党でないだけ」の候補に入れるよりはマシでしょうね。

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