Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

WCSS@京都大学 総括

2006-08-27 17:52:33 | Weblog
木曜午前中は Opinion Dynamics と Use of Data のセッションを行ったり来たり。どちらも非常に関心がある。データを使って Preference Dynamics を研究するというのが自分の最大のテーマだ。Empirical ABM などと勝手な概念を作っていたが,あちらでは Evidence-based ABM というようだ。いずれにしても,そうした研究も始まっているということだ。

今回,自分の発表が尻すぼみになってしまったのは,英語力を省みず内容を盛り込みすぎたためと,モデルと分析が冗長であったせいだろう。英語力が貧弱な日本人研究者が国際学会でアピールするには,誰も思いつかない鋭い着眼点,簡素にして美しい理論,あっと驚く結果,の3点のうち,少なくとも2つはいるんじゃないかと思う。

受けないよりは受けるほうがうれしい。これまで自分が海外で発表してまあまあ受けたのは,Individualized/Interactive (i2) Conjoint ぐらいか…(それは,共著者・片平先生のアイデアが素晴らしかったわけだが)。まあしかし,今回の研究も,方向自体は悪くないんじゃないかと思う。まだまだ改善の余地はある。

ABM の世界でカッコいい発表は,物理屋さんのそれが多いと感じる(対象が社会や経済であっても)。それだとぼくの出る幕は全くないわけだが,たとえばモデルの仮定を,心理学や認知科学,消費者行動研究の知見と対応させるという泥臭い部分に貢献の余地があるはずだ。物理出身の Huberman だって計算経済学(シミュレーション)と行動経済学(実験)の組み合わせが生産的だと指摘している。泥臭い部分をいかにスマートにするかも重要だ。

とにもかくにも夏休みが終わり,今週末から授業が始まる。研究のほうはしばらく ABM から離れ,実証系へシフトすることになろう。何から始めるか…で悩む前に,今週中に原稿2編を脱稿し,学内セミナーの準備をしなくては。

余談: 今回京都の一端に触れて,これまで食わず嫌いであったかなと痛感。「よいものはよい」のだ。実際,最後の日に美味しい料理にもありつけた。多くの観光客で混み合うだろうけど,今度は秋か冬に訪れてみたい。