Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

佐世保というテール

2006-08-11 23:33:34 | Weblog
長崎での仕事を終えて,水曜の午後,佐世保に向かった。昨年の卒業生,さねふじ君と会い,鯵の活き造り→外国人バー(グラモフォン)→ジャズバー(いーぜる)→ラーメン。翌日は,一人で佐世保バーガー(ヒカリ)→海上自衛隊史料館(セイルタワー)。

佐世保はバーガーとジャズを観光資源にする戦略だという。ほんのわずかな時間だけ,それらを体験した。いーぜるは楽しかったし,他のバーやバーガー店も回ってみたいが,これだけで吸引力になるのだろうか。長崎空港へ1時間半というのも,ちょっと遠い。今回足を伸ばせなかったが,九十九島とか,そちらのほうが魅力的なのではないか。

雲仙にしても平戸にしても,あるいは五島列島にしても,長崎は尻尾のほうに様々な観光資源を持つ。その長崎は,九州の尻尾といえるかもしれない(尻尾が上にあるというのも変だが)。そして九州自体が日本の尻尾なのではないか。なお,尻尾というのは,The Long Tail を読んだばかりのぼくにとって,ほめことばである。

補足するなら,尻尾をうまくリンクして,ビジネス化する仕掛け(aggregator)が必要だ。それは観光ビジネスにとって何か…新しい旅行代理業だろうか? いずれにしても,8月の長崎・佐世保は暑すぎて,昼間はとても動けない。涼しい季節に何日もかけて島々を巡り,鯨肉や牛肉など,それぞれの土地の美味を楽しむという日がいつか来ないか…。

ターゲティングの奥に潜む集合性

2006-08-11 22:33:12 | Weblog
水曜日,非常勤の最終日。シャンプー(LUX,TSUBAKI,スーパーマイルド)を題材に,学生に「マーケティング戦略」を考えてもらう。ターゲットを広げる(変える),アイテムを追加する,といった提案が多いので,ターゲットを拡散しないほうがいい,と「型通り」コメントする。

だが,それが正しいことをどう証明できるだろうか? マーケターの戦略を外部から把握しにくいことに加え,そのターゲティングが功を奏したかどうかをデータで裏づけることはきわめて難しい。なぜなら,マスプロ製品であり限り,店頭で幅広い消費者の目に触れ,TV広告もまた広範に露出されるからだ。

マーケティング戦略の定石,より的確なターゲティングを行なう,ということの有効性さえ,確たる「証拠」がない。もちろん,多くのマーケターが,経験を通じてそれを確かめてきたといえるかもしれない。だが,上述のようなマス・マーケティング環境では,どんなターゲティングを立案していようと,結果的に幅広い消費者に到達してしまい,その効果は識別しにくい。

ターゲティングが実際に市場で起きていることを反映しているかどうかは別にして,マーケターに一貫性のあるプランを考えさせる効用があるかもしれない。誰か特定の一人を読者に想定して創作された作品が,無関係な多くの人々を感動させるのと似たような話だ。それは,異質な個人の背後に,何か集合性のようなものがある,ということか。

「夏休みの宿題」で読んでいるThe Long Tail の最後のほうに Hit OR Niche から Hit AND Niche へ,というスローガンが出てくる。これを拡大解釈すると,上の議論につながるような気がする。アンダーソンのロングテール論は,ニッチ市場の単なる礼賛では終わっていない(様々な批判への防衛線ともいえるが)。…話がそれてきたので,ここでひとまず終了。