島岡要氏は現在ハーバード大学医学部の准教授で,専門は「細胞接着と炎症」とのこと。大阪大学医学部を卒業後,10年間は阪大病院で臨床医を経験されたあと,ハーバードへ留学されたという。いうまでもなく,日本の大学にいれば終身雇用で安全な人生を送れたはず。しかし,激しい競争のなかに身を置かざるを得ない米国の大学,しかもその最高峰への転出をあえて選ばれたのである。
その島岡氏が『やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論』という本を出版された。本屋の平積みに出くわしたとき,帯に梅田望夫氏の推薦文があるのを見て,思わず買ってしまった。やはりこうした推奨は効く・・・。でないと『実験医学』という,自分にはあまりに縁遠い専門誌に連載されていたエッセイに,注意を向けることなど全くなかっただろう。
で,その読後の感想は,あまりにもありきたりの表現だが「この本をもっと早く・・・少なくとも研究者という職業を選ぼうとした段階で読むことができれば・・・」というものだ。しかしながら,「いや,中年研究者がこれからでも役立てられそうなノウハウ,あるいは少なくとも励ましを十分得た」とも付け加えたい。研究者,あるいは何らか知的生産に関わる広範な人々に役立つ本だ。
というのは,島岡氏は医学の研究者でありながら,ビジネス書や自己啓発系の本を洋書・和書を問わず多数読み込んでいて,そのエッセンスをたかだか170ページほどの本に,非常にわかりやすい形でおさめているからである。もしかすると,元の本以上に,論理的にまとめられているかもしれない。だから,これまで自己啓発本が嫌いだった人も,数時間この本に時間を割くことを薦めたい。
最も普遍性があるように感じるのが2章の strengths-based approach の部分で,今後(特に難関企業を目指して)就活を行なう学生たちにも参考になるだろう。弱みをどうにかするより強みを伸ばせ,とはよくいわれることだが,なぜそうなのかが納得できる。「好き」より「得意」にこだわれという教訓は,自分にとって厳しい点もあるが,最終的に見て幸福になれる戦略である。
研究者にとってすぐに役立つのが,プレゼンに関する章である。最初に「スモールトーク」を,そしてすぐ「テイクホームメッセージ」を出すというステップは,日本ではあまり見かけないものだ(最初に謝罪,というのはよくあるが・・・)。これは,早速試してみようと思う(詳しいことはぜひ本書を読んで検討されたい。これ以外にも役立つノウハウが多く,決して損はしない)。
ぼく自身の授業(クリエイティブ・マーケティング)にとっては,最終章の「創造性とは」が最も深く関連する。この章のページ数が少ないのが唯一残念なところだが,multiple independent discovery (multiples) や Robert K. Merton の研究を知ったことはありがたかった。今後,このあたりを補う続編が出ることを期待するとともに,そこは自分で埋めていかなくては,という気にもなった。
その島岡氏が『やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論』という本を出版された。本屋の平積みに出くわしたとき,帯に梅田望夫氏の推薦文があるのを見て,思わず買ってしまった。やはりこうした推奨は効く・・・。でないと『実験医学』という,自分にはあまりに縁遠い専門誌に連載されていたエッセイに,注意を向けることなど全くなかっただろう。
で,その読後の感想は,あまりにもありきたりの表現だが「この本をもっと早く・・・少なくとも研究者という職業を選ぼうとした段階で読むことができれば・・・」というものだ。しかしながら,「いや,中年研究者がこれからでも役立てられそうなノウハウ,あるいは少なくとも励ましを十分得た」とも付け加えたい。研究者,あるいは何らか知的生産に関わる広範な人々に役立つ本だ。
というのは,島岡氏は医学の研究者でありながら,ビジネス書や自己啓発系の本を洋書・和書を問わず多数読み込んでいて,そのエッセンスをたかだか170ページほどの本に,非常にわかりやすい形でおさめているからである。もしかすると,元の本以上に,論理的にまとめられているかもしれない。だから,これまで自己啓発本が嫌いだった人も,数時間この本に時間を割くことを薦めたい。
最も普遍性があるように感じるのが2章の strengths-based approach の部分で,今後(特に難関企業を目指して)就活を行なう学生たちにも参考になるだろう。弱みをどうにかするより強みを伸ばせ,とはよくいわれることだが,なぜそうなのかが納得できる。「好き」より「得意」にこだわれという教訓は,自分にとって厳しい点もあるが,最終的に見て幸福になれる戦略である。
研究者にとってすぐに役立つのが,プレゼンに関する章である。最初に「スモールトーク」を,そしてすぐ「テイクホームメッセージ」を出すというステップは,日本ではあまり見かけないものだ(最初に謝罪,というのはよくあるが・・・)。これは,早速試してみようと思う(詳しいことはぜひ本書を読んで検討されたい。これ以外にも役立つノウハウが多く,決して損はしない)。
ぼく自身の授業(クリエイティブ・マーケティング)にとっては,最終章の「創造性とは」が最も深く関連する。この章のページ数が少ないのが唯一残念なところだが,multiple independent discovery (multiples) や Robert K. Merton の研究を知ったことはありがたかった。今後,このあたりを補う続編が出ることを期待するとともに,そこは自分で埋めていかなくては,という気にもなった。
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