Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

輝ける未来を夢見ていた

2009-10-19 08:14:06 | Weblog
ぼくにとって未来を考える原点は,子どもの頃読んだ絵本や図鑑にある。人々は道路にとらわれず,空飛ぶ乗り物に乗って移動する。人間っぽいロボットがさまざまな場面で人間を助けている。街全体が大きな透明のドームに覆われ,空調が管理される・・・このあたりのイメージは,「スターウォーズ」などの SF 映画に引き継がれている(ということは,欧米でも同じような絵本や図鑑があったに違いない)。しかし,昭和30年代の想像力はそんなレベルで終わらない。

150km の高さの宇宙タワー
人工太陽のおかげで夜のない生活
海底へもつながる高速道路
高山の山頂まで駆け上る新式モノレール
スイスの山を突き抜けるアルプス超特急
・・・

しかも,それぞれの絵に,この技術が現在研究中である,と(当時)書き添えられている点がすごい(昭和30年代に研究中なら,もうすでに結果がわかっているはずだが・・・)。

紹介が遅れたが,これらの世界は以下の本で堪能できる。ざっと見たところ,この本に収録されている未来予想図は,昭和40年代前半が最後になっている。こうした想像は,昭和45年(1970年)の大阪万博を期に終わってしまったのだろうか・・・。万博で夢見た「未来」が実現したから,というのは安易すぎる説明だろうか。もちろん,その前後に生じた大きな環境破壊や資源の枯渇を危惧させる事件が,人々のマインドを変えた,というのが常識的な説明だろうけど。

昭和少年SF大図鑑 (らんぷの本)
堀江 あき子
河出書房新社

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当時,少年少女であった人々には懐かしい「光景」だが,いまの少年少女にとってどう感じられるだろうか?「ブレードランナー」以降(かどうか,よく知らないが)暗いディスユートピアが中心になったかのような SF の世界を生きてきた彼らにとって,とんだお笑いぐさかもしれない。万博以前にあった,テクノロジーに対する盲目的礼賛の世界に戻れないことはわかっている。ただ,夢を描き,夢を売る,ってことを考えるとき,ぼく自身にはここが原点なのだ。

早く,未来についてゆっくり思いを馳せる日が来ないかと思う(ただ,そうなったとき自分には,残された未来はほとんどないかもしれないが・・・)。