
マイン流域には、二つのワイン産地がある。一つは上流のヴュルツブルク周辺に拡がるフランケンヴァインの産地。もう一つがライン河に注ぐ直前のホッホイムのワインである。以前にアッペルヴァインなどについて調べた時に、フランクフルト周辺は元々ワイン産地だったようだが十四世紀頃の冷害で全て遣られて仕舞ったという。その続きの下流に一箇所だけ残ったのがホッホハイムかもしれない。
詳しくは分からないが、此処のワインは香りが高いと言う事で英国などではホックなどと呼ばれているが、その実態は「本物」とは限らない様である。ここのワインも十年以上前から馴染んでいる。ラインガウとも違う香りと味が此処の特徴である。
その中でも一際有名な地所が、ドムデカナイやキルヘンシュトックやヘーレなどで、フランクフルト界隈で最も渋滞の酷いホッホハイマートライエッケからのNOxが此処の斜面に漂よおうが、これら伝統的な地所には文句のつけようが無い。もちろん最初のものはグランクリュに指定されている。ここのワインとの出会いもそのドムデカナイのもので、今でも辛口でありながら酸を感じさせないミネラル分に富んだ味と甘みのない豊かな香りが思い出される。
今回久方振りに訪問すると、以前はドイツワイン協会役員として世界中を駆け廻って居られたご主人が腰を落ち着けて醸造所を管理されていた。早速、売り切れが多いリストで品定めをする。2005年産のワインは、予想通り未だ出ていなかったが、その代わり以前には全く興味の無かった単純なワインに焦点をあてる。この志向の変遷を語ると、ご主人は「ワインは、特別な時に飲み楽しむだけでなくて、日々享受出来る物だ。」と、いつぞや日本の雑誌にインタヴューで語っていたような主張を、改めて表明する。全くその通りで、「ビールや強い酒を飲むより、ワインを飲みたくなった。」旨を伝え、「高級ワインを、日頃の食事の例えばザウマーゲ…」と言って気がついて、「ザウワークラウトを食べながら、飲むのは惜しい。」と言い直した。自らローカルなお家事情を曝け出す様羞恥を感じて、改めてここはヘッセン州なのだと気が付く。
「当日催されていた試飲で瓶が空いているから試飲したら」と言われたが「フランクフルトでの用事がある」と、断腸の思いで甘い誘惑を固辞して、ワインを選択する。リストを見ると、2004年産の軽めのキャビネット類は早くに売り切れていて、シュペートレーゼ類からアウスレーゼに属するグランクリュ類が残っていた。反面、2003年産の単純なワインが売れ残っていて、2004年産の昔風の味のバランスに配慮した-近隣のラインガウではチャルタワインと称する-「クラッシックワイン」を持ち帰る。前者は、酒石が溜まって入るぐらいに充分に練れていて、糖の後口が悪い。後者の方は香りが良く、香料のような味が良かったが、6グラム相当の糖は些かその酸に比べて多すぎる。糖と酸の化学分析値の質問からある程度想像していた通りである。それでも後者のワインで気が付いた様に、過去に愛飲したキャビネットワインで素晴らしかった「胡椒のような味付け」がより複雑な香辛料になっているとすると、五月に発売される2005年度産のキャビネット類を試飲出来るのが楽しみである。なるほどご主人も、この十年間の傾向は大分変わって来ていると言う事を認めていた。(試飲百景)
参照:
マイン河を徒然と溯る [ 生活・暦 ] / 2006-02-24
大バッハを凌駕して踏襲 [ 音 ] / 2006-02-22
拘りのアッペルヴァイン [ 料理 ] / 2005-12-14
詳しくは分からないが、此処のワインは香りが高いと言う事で英国などではホックなどと呼ばれているが、その実態は「本物」とは限らない様である。ここのワインも十年以上前から馴染んでいる。ラインガウとも違う香りと味が此処の特徴である。
その中でも一際有名な地所が、ドムデカナイやキルヘンシュトックやヘーレなどで、フランクフルト界隈で最も渋滞の酷いホッホハイマートライエッケからのNOxが此処の斜面に漂よおうが、これら伝統的な地所には文句のつけようが無い。もちろん最初のものはグランクリュに指定されている。ここのワインとの出会いもそのドムデカナイのもので、今でも辛口でありながら酸を感じさせないミネラル分に富んだ味と甘みのない豊かな香りが思い出される。
今回久方振りに訪問すると、以前はドイツワイン協会役員として世界中を駆け廻って居られたご主人が腰を落ち着けて醸造所を管理されていた。早速、売り切れが多いリストで品定めをする。2005年産のワインは、予想通り未だ出ていなかったが、その代わり以前には全く興味の無かった単純なワインに焦点をあてる。この志向の変遷を語ると、ご主人は「ワインは、特別な時に飲み楽しむだけでなくて、日々享受出来る物だ。」と、いつぞや日本の雑誌にインタヴューで語っていたような主張を、改めて表明する。全くその通りで、「ビールや強い酒を飲むより、ワインを飲みたくなった。」旨を伝え、「高級ワインを、日頃の食事の例えばザウマーゲ…」と言って気がついて、「ザウワークラウトを食べながら、飲むのは惜しい。」と言い直した。自らローカルなお家事情を曝け出す様羞恥を感じて、改めてここはヘッセン州なのだと気が付く。
「当日催されていた試飲で瓶が空いているから試飲したら」と言われたが「フランクフルトでの用事がある」と、断腸の思いで甘い誘惑を固辞して、ワインを選択する。リストを見ると、2004年産の軽めのキャビネット類は早くに売り切れていて、シュペートレーゼ類からアウスレーゼに属するグランクリュ類が残っていた。反面、2003年産の単純なワインが売れ残っていて、2004年産の昔風の味のバランスに配慮した-近隣のラインガウではチャルタワインと称する-「クラッシックワイン」を持ち帰る。前者は、酒石が溜まって入るぐらいに充分に練れていて、糖の後口が悪い。後者の方は香りが良く、香料のような味が良かったが、6グラム相当の糖は些かその酸に比べて多すぎる。糖と酸の化学分析値の質問からある程度想像していた通りである。それでも後者のワインで気が付いた様に、過去に愛飲したキャビネットワインで素晴らしかった「胡椒のような味付け」がより複雑な香辛料になっているとすると、五月に発売される2005年度産のキャビネット類を試飲出来るのが楽しみである。なるほどご主人も、この十年間の傾向は大分変わって来ていると言う事を認めていた。(試飲百景)
参照:
マイン河を徒然と溯る [ 生活・暦 ] / 2006-02-24
大バッハを凌駕して踏襲 [ 音 ] / 2006-02-22
拘りのアッペルヴァイン [ 料理 ] / 2005-12-14