Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

人を一人前にする裸の関係

2023-03-27 | 文学・思想
「影の無い女」のお勉強である。ベルリナーフィルハーモニカーのサイトにこの楽劇を三種類の程度に分けて解説している。

先ず初級編では、皇帝は黄泉の国の奥さんを持ち、皇后には影がない。彼女の父親は黄泉の国の王カイコバート、そしてある時告げる。一年の間に彼女が影を得ない時は、旦那が石になり、彼女は永遠に黄泉の国へと連れ戻される。

皇后は、富と引き換えに影を差し出す女性を探し続ける。最初はそれが最も容易な解決法だと思えたのだが、人の妻とその夫を知れば知るほど、妻が影を無くすことで二人が一生涯不幸に落ちいるだろうと分かるようになる。そして決意する、人の不幸の上に自身の幸福を得るべきではないと。正しい判断なのか。

中級編は、赤い鷹が皇帝に女鹿を合わせる。それが彼には美しい女性に見えている。皇帝は彼女に惚れ込んで皇后にする。

影がないことは不妊を示す。皇后は乳母と共に影を探し求める。染物屋のバラックとその妻には子供がいない。その妻は、引き換えに多大な財産が得られることを約束されると、妊娠を諦めることを承知で影を売ることに合意する。一方バラックは、まだ幸せな家庭を築くことに望みを捨てていない。二人は愛し合っているのにも拘らずベットを違えていてその接点も失っている。二人は、最早幸福を得る術が分からなくなっている。

上級編では、この「影の無い女」は、メルヘンの形を取っている心理学的な人間であることを基本主題としたスタディーである。愛、夫婦、子宝。子供を産む為の生殖がこの世では影を投じている。

そこから不妊の女は完成した人間ではないという結論が生じている。しかしこの楽劇では女性たちはその自らの運命を掌握している。皇后はそのことについて父カイコバートの話しを聞こうとしない。染物屋の妻は、バラックの子供への希望に耳を傾ける事なく、それどころか夫婦別れまでを考えている。つまり二人の女性はその運命に結びついていて、二人の男性の皇帝と王は寧ろ受け身でしかない。

皇帝と皇后、染物屋とその妻、それらは裸で愛し合っている。それが楽劇で初めてより明白になって来る。皇后はその妻の一生に思いを入れ始めて、他者の幸の上の自身の幸福を断念する。他者への心なる思いが完全なる人と為す。ハッピーエンドにメルヘンの終わりを見るのだが、二人の女性がその原動力であることは変わらない。



参照:
竹取物語の近代的な読解 2014-12-31 | 文化一般
純愛を習ったのは君から 2023-03-15 | 女

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