Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

1997年の辛口リースリング

2004-11-11 | ワイン


甘口のリースリング・ファンには渇望されるモーゼル中流域の醸造所。因って主要マーケットは海外、とりわけ合衆国。害虫に強いアメリカ産リースリングを使わずに、元来種のリースリングの苗に拘る。果汁の発酵過程においても、サルファイトを使わずに止まるまでゆっくりと冷やしていくという。近年の辛口ワインのカテゴリーの行き過ぎには疑問を呈しているようで、他の多くの名門のようにフランス風の畑ごとの等級化と新しい秩序に協調していくものと見られる。

当家奥様に言わせると、辛口ワインの在庫は限られるということだったが、その辛口でその実力を窺い知ろう。印象はそのヴィンテージよって大きく異なることも予め断っておかなければならない。

J.J.Pruem
1997er Zeltinger Sonnenuhr, Spaetlese trocken

このワイン、決して7年の経過を感じさせない風味がある。これをフィルン初期というならば雪質で説明しよう。この状態は、春先の手付かずの斜面の雪である。重力にしたがって上から重みがかかり、その表面は粗目雪となって内部の層を押し付けている。フリーライダーで滑ると深くシュプールがついて、一度踏み荒らされると滑走不可となるような雪質である。つまり、モーゼルの酸は健在で新鮮味さえ保持している。流石である。典型的なグレープフルーツ風味にその地盤から来るミネラル風味が乗る。辛口で糖価が低い分、明らかに低いアルコール度に関わらずグレープフルーツ風の苦味が目立つ。酵母の影響もあるかもしれない。これが咽喉越し過の後味に繋がっているようでもある。辛口愛好者には、これが残念。全体の印象は、雪の如くぎっしりと詰まった重厚な中にも未だに静かに閉じた処女性をもっていると云えようか。

辛口愛好家は、ヴィンテージを選んで好みのワインを探すことになるので決して容易ではないが、再び試してみたい。そのようなヴィンテージの甘口が、特別な価値を持つことは容易に納得できる。眩しく青空に陽を照り返す斜面に、唯一のシュプールを振り返る如く満悦した。
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甘口ワイン /Der liebliche Wein

2004-11-11 | ワイン
2004 01/24 編集

アイスヴァインだとか糖比重の高い遅摘みの葡萄でなくとも甘口ワインに仕上げる事が出来る。甘い果汁を醸造後に足して「味を調える」方法をとらないまでも、限られた糖比重の中でアルコールへの発酵を押えてその甘みを維持するのである。こうして作られた甘口ワインは、口当たりがやわらかで飲みやすい反面、辛口への醸造に比べてアルコールが弱く、香りも弱い。風味良い甘口を作る事は難しい。更に食事の相伴としてのワインを考えると選択が限られる。日本や中国などの「甘み」や「甘い酸っぱい」食事や米の甘みが支配する食習慣のある地域において甘口ワインが好まれる傾向があるのはこの理由だ。

先日のモーゼル中流域の2002年ものは、前年度と違い酵母の香りに気が付く。ゾンネンライ、ゾンネンウーア、ヒンメルライヒ、ブラウネベルガーなど名だたる斜面に置いても辛口だけでなく甘口のワインの為の葡萄が育つ。ストレートに醸造して、ダイレクトに年毎の個性が出る辛口を避け毎年上質の甘口を送り出す醸造所もある。それらは、上に述べた食生活の違いからも国内ではあまり消費されていないようだ。更にワイン商にとり興味深いのは、上質の甘口は経年変化が少ない(新鮮なワインに長所がない)ので、フランスのネゴシアン達のようにヴィンテージものを扱う事によって利ざやを見込む事が出来る。この辺にも生産性の悪いワインに携わるモーゼルの人たちの知恵が見て取れる。
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