3. 平成10 ( 1996 )年刊 ・・橋本内閣
・サミュエル・ハンチントン氏著 『文明の衝突』
現在と同じ意見なので、5年前に読んだ時の「ねこ庭」の感想を紹介します。
・中国と韓国の成長は、中国への多額のODAや韓国への巨額の賠償金などを考えると、日本の支援がかなり貢献をしていると思いますが、米国の学者はそう見ていません。
・国際社会では米国の学者の意見が尊重されますから、日本がいくら主張しても、中国や韓国の発展に関する日本の役割は考慮されません。氏に指摘されるまでもになく、昔も今も日本は国際社会で孤立しているという現実があります。
・しかし国際社会での孤立について、重大に考える必要はありません。国はすべて孤立して存在し、自国の利益のため協力したり離れたりしているので、孤立していない国は世界のどこにもないからです。
「アジア諸国は、アメリカの要求や利益にそった行動をとることが少なくなり、アメリカや、他の西欧諸国からの圧力に抵抗する態度を、取れるようになっている。」
「こうした文化的復興の重要性は、アジアを代表する二国と西欧文化との関係が、変化していることからも読み取れる。」
・氏の言うアジアを代表する二国とは、日本と中国のことです。ここで氏は、日本と中国について述べていますが、まず日本に関する意見を紹介します。
「日本では、1980 ( 昭和55 ) 年代の目覚ましい経済発展と対照的に、アメリカの経済や社会制度は失敗し、敗退しつつあるとの認識が広まり、日本人は欧米を手本にすることをやめ、成功の理由は自分たち自身の文化にあると、考えるようになった。」
「壊滅的な軍事的敗北を招いた日本の伝統は、戦後は一転して否定すべきものとされたが、1985 ( 昭和60 ) 年には経済的成功をもたらし、改めて受け入れられるようになった。」
「日本人は、西欧的であることが、ただそれだけで素晴らしい魔法をもたらしてくれるのではないと、気づいた。」
「明治維新の日本人は、 「脱亜入欧」という選択をしたが、20世紀の日本人は、 「脱米入亜」ともいうべき方針を、肯定するようになった。」
「まず第一に、日本の伝統文化を再認識する過程を経て、その価値を主張するようになった。第二に、日本を 「アジア化 」 しようと努めた。」
以下は氏の意見に対する、5年前の「ねこ庭」からの疑問です。
・どういう情報から、このような日本像を描いたのか知りませんが、氏の意見は私の実感とは一致しません。
・私の前にある日本は、ずっと「東京裁判史観」を超えられない社会であり、対米従属の政治です。
・バブル景気に浮かれ、にわか成金となった経済人が、米国の企業や建物などを買いあさっていたことは記憶していますが、「 脱米入亜」 や「アジア化」を、本気で考えていたとは感じたことがありません。
・1989 ( 昭和64 ) 年の日米貿易摩擦の最中に、ソニーの会長である盛田昭夫氏と、石原慎太郎氏が共同執筆した『NOと言える日本』が、その論拠となっているのでしょうか。
・そうであるとしたら、氏の論拠は間違っていると思います。儲けすぎる日本を米国が散々叩き、激しい日本バッシングをしていたとき、やっと反論したのがこの本でした。
・私は「ごまめの歯ぎしり」みたいなものとして、読んだ記憶があります。
・論拠はこんな一冊の本からでないと思いますが、やはり氏の日本に関する説明は、違和感を与えます。
以上「ねこ庭」の過去記事の紹介をしましたが、次回は私を啓蒙してくれた氏の意見を紹介します。