1993 ( 平成5 ) 年、金○日が総参謀部の軍官たちの前でした演説を、李氏が紹介しています。
「北朝鮮は戦争を望んでいないが、戦争を怖がらないし、アメリカや国際社会が攻撃をしてきて、韓半島で戦争が起きた場合は、今まで隠しておいた核兵器を使ってでも地球を壊す。」
その後、チョンジュ・ミサイル基地、テッポ洞ミサイル基地で発射実験が行われた時、分析所の朴星哲特務士が述べた言葉も紹介しています。
「北道明川郡と和台郡にあるミサイル基地は、日本の沖縄とグアムを狙っており、中江には、中国を狙ったミサイル基地を建設中である。」
自衛隊はこうした情報を把握しているのだと思いますが、私が注目したのは次の叙述でした。
「北朝鮮が韓国だけでなく、日本を狙ったミサイル基地を設置しているのには、理由がある。万一、韓半島で戦争が起きた場合、36年間もの間いじめ抜いた日本を攻撃しようというのである。」「実際北朝鮮にとって日本は、韓国よりももっと憎い相手だと人民に認識されている。」
日帝36年間の植民地支配と、韓国政府が激しい批判をしますが、北朝鮮もこれについては同じで、両国ともに反日教育に力を入れています。「情報閉鎖社会の若者」の中に分類しているのは、次の氏の意見のためです。
「日帝支配の36年間、朝鮮人民に大きな被害を与え、20余万名の女性たちを従軍慰安婦として連行し、彼女たちの青春と人生まで奪い、日本軍の性の捌け口とされたことを、北朝鮮のテレビやラジオ放送は、口を合わせてその事実を非難してきた。」
「当時も、連行された老婆がテレビに出て、自分の青春と人生を保障せよと、泣き叫んでいた。それを見た北朝鮮の人民は、ともに涙を流していた。」
吉田清治の大ウソを、朝日新聞が取り上げて大々的に報道し、植村隆が深い考えもなく「従軍慰安婦」という言葉を使って記事を拡散し、彼らの捏造報道がどれだけ日本国民の心を傷つけ、日本の国益を台無しにしたのか、昨日のことのように思い出します。
1982 ( 昭和57 ) 年にペテン師吉田の記事を発信して以来、32年間も朝日新聞は慰安婦問題を特ダネとして扱ってきました。2014 ( 平成26 ) 年の8月に、吉田清治の一連の記事が間違いであったと取り消し、社長が辞任しました。
日本国内向けには謝罪と取消しをしましたが、国際社会に対しては、記事の取消しもお詫びもしていません。その結果が李氏の著作の言葉となり、北朝鮮人の日本憎悪を掻き立てています。氏の著作の出版は平成6年で、朝日のお詫び会見はその20年後の話ですから、「情報閉鎖社会の若者」の分類に入れるのは正しくありませんが、「日帝36年間の植民地支配」という思考は該当します。
「日帝36年間の植民地支配」と「慰安婦問題」は、捏造された情報であるにもかかわらず、日本国内の反日左翼たちの支援を受け、今も多くの韓国・北朝鮮の国民に信じられています。だから李氏はためらうことなく、日本向けの核ミサイル基地の説明をします。
「金○成自身も、親兄弟や親戚などその多くが、日帝36年間の間に亡くなってしまった。反日感情が誰よりも強かったのだ。」
「射程距離を日本まで入れたミサイル基地は、東海岸 ( 日本海 ) に1ヶ所でなく、2ヶ所も建設している。」
軍の高官でない氏の意見ですから、どこまで信憑性があるのか分かりませんが、核開発の基地で勤務する一兵士の知見だと、無下に否定できない内容です。
「おそらく北朝鮮は有事の際、韓国を支援しているアメリカの隣接軍事施設を、攻撃できる能力が必要だと感じている。」
「その場合攻撃対象には、過去の朝鮮戦争の時、仁川上陸作戦基地となっていた日本の佐世保港をはじめ、在日米軍施設を集中的に攻撃することになるだろう。このため北朝鮮は、射程距離千キロを超える労働ミサイルの開発に必死になっているのである。」
なぜ北朝鮮は危険な核兵器の開発を止めないのかと、この回答を見つけるのが読書計画の目的でした。『金○成』の中には叙述がありませんでしたが、『金○日の核と軍隊』には、その答えがありました。
「1993 ( 平成5 ) 年5月、新型ミサイル労働一号の試験発射が、東海で行われた。」「北朝鮮にとって東海は、自国の水域であるが、日本にすれば日本海と呼んでいるように、東海は重要水域である。」
「労働一号の試験発射は、日本人にとって、大きなミサイル恐怖心を起こしたことだろう。」
残念ながら、氏の思惑と現実は違いました。国民は大きな恐怖心に駆られることもなく、「北朝鮮は何をやっているのだろう」と、首を傾げた程度でした。政府が深刻な受け止めをせず、マスコミも騒がなかったからです。
「これを利用しながら北朝鮮は、日朝間の外交交渉をできるだけ早く進めていきたいのだ。」
ここでやっと独裁者金○日が、核開発を続ける目的が見えてきました。
1. アメリカや国際社会が朝鮮を攻撃をしてきたら、核兵器を使ってでも地球を壊す。
2. その時は同時に、憎い日本を攻撃する。
3. ミサイル発射実験で、日本国民に恐怖感を与える。
4. 核の脅しを利用しながら、金○成以来の日朝国交回復を遂げる。
日本国民の中に、日朝国交回復を望んでいる人間が何人いるのか知りませんが、少なくとも「ねこ庭」を訪問される方々は、李氏の意見に眉を顰めるのではないでしょうか。
しかし政治家たちは、「日朝国交正常化推進議員連盟」を作り、自民党議員を含め30名が所属していますし、今は無くなったとはいえ、令和2年6月まで存在していた「日朝友好議員連盟」には、159名の議員が名を連ねていました。これらの人々の中に、李氏の著書を読んでいる議員が何人いるのでしょうか。
韓国、北朝鮮と中国は、単なる日本の隣国ではありません。大東亜戦争を契機として、日本を敵として憎み、攻撃し全滅させて当然と考えている国々です。
「同じ人間同士だから、話せば分かり合える。」「平和外交でいけば、必ず道が開ける。」と、果たしてそんな単純な想いが通じる国なのでしょうか。
次回は、北朝鮮と韓国の対立の中身について、氏の著書から私たちの知らなかった事実を紹介します。