ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『金○成』 - 5 ( 韓国日報の巻頭言 )

2022-06-25 14:41:54 | 徒然の記

  「初めに」  「金日成をどう見るか」          黄 民基 ( ファン・ミンギ  ) 

      第一部 証言 「隠された真実」  北朝鮮人民軍作戦局長   兪  成哲 ( ユ ソンチョル  )

    第二部 手記 「暴かれた歴史」 元北朝鮮人民軍師団政治委員 呂  政 ( ヨ ジョン  )

 「初めに」・・黄 民基

 今回は、兪 成哲氏の証言を連載した韓国日報の巻頭言を、氏の著書からそのまま転記します。

 「民族分断の重いくびきを、半世紀近く負って生きてきたわれわれは、今日の急変する国際情勢の中で、分断の歴史を締めくくりうる重大な転機を迎えている。」

「共産圏を覆う改革の波とドイツ統一、そして米ソの協力関係に要約される新たな国際秩序は、冷戦時代の最後の象徴とされる朝鮮半島にも、変化と和解の風を吹き込んでいる。」

 ベルリンの壁が壊された時、二つのドイツが一つになりました。壁を越えて歓声をあげる若者たちの姿を見ていると、不思議な感動を覚えました。在日コリアンである黄氏は、もっと切実な思いで眺めていたことが分かりました。おそらく、韓国日報が述べているような、南北朝鮮統一への希望ではなかったかと思います。

 「韓国の積極的な北方政策は、韓・ソ国交樹立を成し遂げたことに続いて、韓・中国国交回復を目標にするようになり、南北間の対話努力は首相会談、南北朝鮮統一チームの構成、直接交易のような形態で実を結びつつある。」

 しかし韓国日報は、夢を述べる一方で現実も語ります。

 「けれども、こうした国内的な条件変化にもかかわらず、統一の道は未だ遼遠であり、われわれはその遠く険しい道に向かって、第一歩を踏み出しているという事実を忘れてはならないだろう。」

 朝日新聞やNHKと違い、一方的な主張だけを報道するのでなく、韓国日報は両論併記です。

 「この重大な時期に、われわれに要求されているものは、統一に対する漠然とした熱情よりも、統一の道に塞がっている諸々の障害がなんであるのかを推し量る聡明さと、これを丹念に除去していく粘り強い努力だろう。」

 韓国のマスコミについて、私は偏見を改めようと思います。すぐに熱くなり、見境もなく日本を攻撃する韓国人や政府を見ているので、「火病」の韓国と軽蔑していましたが、そんな決めつけができなくなりそうです。両論併記ができる新聞を持つ韓国を、少し見直さなくてなりません。

 続く黄氏の意見も、軽視できなくなります。

 「こうした脈絡で、北朝鮮の実態を正確に理解しようとする仕事は、統一のために真っ先に実行せねばならない仕事の一つだと言えよう。」

 「韓国日報はこうした趣旨から、北朝鮮の実態と、金日成の実像を正確に伝えるべく努力を重ねてきたが、その努力の一つがこの証言である。」

 氏の説明によりますと、韓国日報が朝鮮戦争勃発40年の節目の特集として、兪氏の証言を19回のシリーズで掲載したのだそうです。

 「韓国日報社はこの連載を行なった後、多くの読者から読めなかった部分 ( 未掲載部分 ) に対する問い合わせと、総合的に理解しやすいよう一冊の本にして欲しいという要請を受けてきた。」「この回顧と証言が、それだけ価値のある資料として、これまで提起されてきた様々な疑問への回答となったからであろう。」

 ここまで説明されると、韓国の国民に対しても偏見を修正する必要を感じます。韓国人は誰も彼も、口から出まかせの嘘を言い、横車を押すような暴言を言う・・どうやらこれは、日本に対する時だけのもので、一般的な場合にはそうでないと分かりました。

 「だがこの一冊の本が、北朝鮮政権と6・25南侵の全てを明らかにするだろうと、期待することはできない。兪成哲の体験に限っての話だからである。」

 黄氏自身も、興奮して勧めるのでなく慎重な姿勢です。

 「しかしこの証言が、今後多くの学者たちの研究に、新たな光を投げかけるであろうことは間違いなく、われわれとしても、新たな研究の基礎資料として活用していただければ、幸いである。」

 最後まで本を読んだら変わるのかもしれませんが、これまでのところで黄氏の印象は、私の中で李栄薫氏と重なります。氏は、韓国人の日本への知識が事実を逸脱していることを指摘し、反日教育の過ちを批判します。

 日本人の中には、氏を親日の韓国人学者と誤解して褒める人々がいますが、氏は反日の気持ちが捨てられない愛国者です。黄氏と同じく、「過激論の中間に事実がある」と信じる人間です。韓国人の中にある、「理屈を超えた日本への嫌悪感」は、すっかり同じ形で、私たち日本人の中にも「理屈を超えた韓国人への嫌悪感」として存在しています。

 もしかするとこの偏見は、両国の間にある「ベルリンの壁」みたいなものではないのでしょうか。崩壊する時が来るのだとしても、それまでの間は、自分の国を愛する者同志として、通じる部分があるだけだという気もして来ました。それなら通じる部分だけで協力すれば良いと思い、次回も氏の「前書き」の紹介を続けます。

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