この展覧会に音声ガイドがあるのを知ってすぐ借りようと決めた。
身長188cmの巨漢、当初は競輪選手として、ヴァイオリニストとして生計を立てていたこの人物からいかにしてあのような絵画がうまれたかをしりたかった。
今、損保ジャパンでやっている「ヴラマンク展」だ。
確かにこの画家の全貌が見渡せるいい展覧会だ。
1900年という世紀の変わり目にドランとたまたま列車で一緒になったことがこの人の転機となった、二人でアトリエを借りて生活をはじめるのだ。
翌年のゴッホの個展にも影響を受けた、この影響は生涯続く。
はっきりいって初期のヴラマンクの絵には魅力が乏しい、あまりに平面的すぎるのだ。
この展覧会を観てゆくとヴラマンクが徐々に奥行き、立体感を表現することに成功していくことを知るがとりあえずそれはセザンヌの影響といってよいだろう。
音声ガイドによれば、その方法は近景、中央、遠景を連続して重ねることで遠近法を使わずに画面に奥行を与える方法と説明される。
展示番号17の作品「木々」と29番「ポプラのある風景」など構図もそっくりだがーちなみに所蔵もイスラエル美術館と同じところだーここいらへんにこのころのヴラマンクの真骨頂をみることができよう。
そして第一次大戦、絵は大きく変わった、人々はそれを絶賛したという。
おなじみ雪景色が多く作品に登場するが、この画家の関心は雪が汚れていくことだ。
戦争の不条理を体験した内的な悲壮感と反応したのだろう。
花束もこの画家の関心事だが、静物画を描くときはそれと心を通わせるために何日間もそこに置いておいたという、ヴラマンクが叙情的といわれるゆえんだろう。
この画家は1925年、パリの西フランス有数の穀倉地帯のリュエイユ=ラ・ガドリエールにうつりすみ死ぬまでそこで過ごした。
当然の如く積みわらや麦畑を題材にした作品が登場するがそれがいかにもゴッホ的なのだ。
1901のゴッホ展に衝撃を受けてからゴッホ的なものがこの画家にとって大きいものだったのだろう。
この展覧会では生涯二度しか描かなかった自画像のうち一点も展示されるし、この画家の全貌を知るにふさわしいといってよい。
それにしても損保ジャパンはこれから年末にかけて大型展覧会をあと三本用意している、注目だ。