一口にバラといってもまあいろいろとあるものだ!
ギリシアローマ時代から栽培されていた古代種は「ガリカ系」「ダマスク系」「アルバ系」などなど、オールドローズの基本種は「ブールソー系」「チャイナ系」などなどーちなみにチャイナ系、つまり中国のものは東インド会社などインドを通してヨーロッパに入ったため「ロサ・インディカ」と呼ばれたというーそれにワイルドローズ、つまりは野生のバラがある、総数169点、それを科学的正確さと芸術的完成度の高さをもって表現したたぐいまれなる人物、言わずと知れたルドューテだ、その「バラ図譜」全点とそのほかのバラに魅せられた人々を紹介する展覧会「薔薇空間」にBunkamura、ザ・ミュージアムにゆく。
渋谷は通りを規制して鹿児島のお祭りをやっていたが、それとはまったく別の優雅な時間がここには流れる。
言うまでもなくルドゥーテは、ナポレオン妃ジョゼフィーヌと出会い、彼女の庭園の記録係となることからこの図譜が生まれたわけだが、その背景には当時の時代状況、新しい品種が海を越えてやってきて、旧来のバラと組み合わせて新しい系統が誕生するという一種の「バラ・ブーム」があったとカタログは指摘している。特に中国のものの四季咲き性は、人工交配熱に拍車をかけたろう。
しかしながら似ているバラの細部を細かく描き分けたルドゥーテの才能は高く評価されなければならない。
そのためか中にはロサ・レドゥーテア・グラウカ、ロサ・レドゥーテア・ルベスケンスといったルドゥーテのなまえを冠したバラもある、これは「バラ図譜」に解説を付けている植物学者のトリーという人が命名したそうだ。
それにしても花の中から葉っぱが出てまた花が咲くという面白いバラもあり写真を添付できればぜひ載せたいところだ!
ルドゥーテのほかにはアルフレッド・パーソンズという生涯素朴な田園風景を描き、日本にも滞在したことがあるという画家による「バラ属」から、日本からは「薔薇の博物館がない国は文化国家とは言えない」という奇妙な持論を持つバラの育種家鈴木省三から依頼を受けて二口善雄という人が描き平凡社から出版された「ばら花譜」からそれぞれ一部が出品されている、ルドゥーテの表現と比べるのも一興。
最後はバラの写真で締めくくり、齊門冨士男という現代写真家。
会場ではバラの香りを何箇所かでかぐこともでき、短めのビデオもやっている。
肩のこらない展示でカタログも眺めているだけで楽しい。
まだ始まったばかりなので混雑していないが6/15までと会期は短めなので早めに行かれることをお勧めします。