写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

度付きサングラス

2011年03月10日 | 生活・ニュース

 私の運転免許証には、運転条件として「眼鏡」と書いてある。老眼のため近くのものがはっきり見えないだけでなく、遠くのものも明快に見えにくい。ということで、30年前から遠近両用の眼鏡をかけている。7,8年ごとに度の進みに合わせ眼鏡を買い替えてきた。
 眼鏡をかけていると不便なことがある。日差しの強い季節、市販のサングラスをかけることが出来ない。息子が新婚旅行で買ってきてくれたブルガリのサングラスを持っているが、度が入っていないので前がよく見えない。残念ながらこれは大事に引き出しにしまっている。
 遠近両用の眼鏡に、ちょこっと引っ掛ける構造のプラスチック製のサングラスが売られている。これをかけると眩しくなくなるが、眼鏡が重くなって鼻眼鏡になるし見た目もあまりよくない。しかし我慢しながらそれを使っていた。
 そんなある日、近くにある眼鏡屋さんに、古くなった鼻当てを交換してもらいに出かけた。店内を見回していると「度付きサングラスはいかがですか」と書いてあるものが目に入った。
 「これこれ、これだ」。ロードスターに乗ってオープンにしたときでも、様になるようなものを物色してみた。フレームのない軽いものを選んだ。眼の検査をし、遠近両用はもちろん、若干乱視にも対応したものを作ってもらうことにした。 
 1週間後、期待していた通りのものが届いた。天気のいい翌日、定期健診のため広島の病院へ、そのサングラスをして車で出かけた。薄い色なのでトンネルの中でも外すほどのこともない。そのせいか、病院についても普通の眼鏡にかけ替えることを忘れ、サングラスをかけたまま入っていった。
 若い看護師さんに採血される段になり、やっとサングラスをかけていることに気がついた。「あっ、サングラスなんかして失礼しました」と、ことの経緯を話すと「いえいえ、とってもお似合いですよ」と上手を言ってくれる。上手だとは分かっていても年寄りは嬉しい。採血が終わったとき、眼鏡を外して素顔になり、最大級の笑顔で頭を下げて別れた。
 度付きサングラス、ドライブ中の今までの悩みを解消してくれるだけでなく、他にもいろいろ付録が付いてくるみたいだ。奥さんをど突くのではなく、眼鏡に度付けたお話。同じ悩みを持っている方にお勧めの品である。