写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

リモンチェッロ

2011年03月02日 | 食事・食べ物・飲み物

 我が家の庭に、10年前に植えたレモンの木がある。木はぐんぐん大きくなったが、実が付かないまま8年が過ぎた。ところが2年まえ、何に驚いたか250個も実がなり、暑かった昨年でも200個くらい実をつけた。我が家だけではさばききれず、訪れた知り合いには強制的にいくつかを持ち帰ってもらった。
 後日、その内の一人が「レモンブック」(北村光代著)という本を持ってきてくれた。レモンに関わるいろいろな蘊蓄が書いてある。それを読んだ奥さんが、書いてあるレシピに従い「リモンチェッロ」というものを作ることに挑戦した。
 リモンチェッロ (Limoncello) とは、イタリアを起源とするレモンを用いた糖度の高い果実酒のことである。もともとはソレントを中心とした地域で、各家庭ごとに庭で生ったレモンを使って作られ愛飲され、現在では世界的に知られるイタリアの名産品のひとつとなった。レモンの香りが印象的で口当たりはよいが、度数は30%以上ある。冷蔵庫でよく冷やしてストレートで飲むのが一般的な飲み方だと書いてある。
 レシピは、無農薬のレモン5個の黄色の皮の部分を切り取って、世界最強のウオッカ・スピリタス(度数96%)500mlに入れる。すぐに黄色の透明な液体に変わる。1週間後、この原液の中に、水500mlの中に砂糖400gを溶かしたシロップを投入し、更に1週間放置したものを冷やせば完成である。
 このレシピで作っていたとき、劇的なことが起きたと奥さんが話す。原液にシロップを入れたとき、色が透明な薄黄色から乳白色がかった黄色に瞬間的に変化する。理科の実験のようで、これが楽しくてまた作りたいという。
 出来上がったものを一口飲んでみたが、ストレートでは何しろアルコール度数が強すぎる。炭酸水で2倍に薄めて飲むと丁度好みの味に変わった。レモンの香りが甘く匂い、私にはこれくらいが飲みやすい。食前酒として飲んでみたが、本来は食後酒だという。な、なに? 食後酒だと?
 食欲を増進させたり、出席者の会話を弾ませるきっかけに飲む食前酒に対して、食事の後に余韻を楽しむために飲む酒が食後酒だという。ブランデーやウイスキーなど、アルコール度数が強く香りがよいものや、甘めのカクテルなどが好まれるらしい。
 私にそんな習慣がないのは、食後に余韻なんてないこともあるが、食前酒を飲んだだけで眠たくなるのだから、余韻にひたって食後酒なんて到底無理な話ではある。