写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

エンボス加工

2011年03月26日 | 生活・ニュース

 「エンボス加工、体験してみませんか?」。中央公民館でこう書かれたパンフレットを見つけた。そばには、エンボス加工を施した名刺入れがサンプルとして置いてある。「おもしろそう」、定員15名のこの講座に、奥さんと2人で申し込みをしておいた。
 当日の朝9時半、いそいそと出かけた。エンボスとは、作品を見ればなんとなく理解は出来るが、どんなことをするのかの知識は全くない。あらかじめネットでほんの少し知識を仕入れておいた。
 「エンボス(Emboss)とは、浮き上がらせるという意味で、板金や紙などに文字や絵柄などを浮き彫りに加工することをいう。エンボス加工することで、見た目と手触りとの二重の効果を与えることが出来る。金属での例としては自動車のナンバープレートが代表的なものである」と書いてある。
 参加者は定員いっぱいの15名がそろっていた。若い人も数人いる。男は私一人。少し内股で歩いておとなしく席についた。先生は50歳代のテキパキとした美人。この雰囲気なら頑張れそうな予感がした。
 その日の課題は、厚さ1mm、大きさは名刺大の錫の合金板に、あらかじめ先生がけがいてくれているチューリップの花を道具を使ってエンボス加工することであった。黒板に書かれた手順に従って先生が手本を見せる。7つの工程を、歯医者さんが使うような先の尖ったものやへらのような形をした金属製の道具を使い分けながら、花びらや茎や葉を浮かび上がらせていく。仕上げは、周辺を額縁加工して全ての作業を終えた。
 2時間があっという間に過ぎていた。どの参加者の顔にも満足の笑みが浮かんでいる。出来栄えは人それぞれ、様々であったが、間違いなく自分の手で仕上げたものである。作品には裏側から硬化性樹脂をくぼみに埋めて固まらせ、表からの陥没防止を図る。 さらに接着剤を塗布して、自分の好みの持ち物に貼り付けると完成だ。
 私は作品を家に持ち帰った後、黒革表紙のビジネスノートに貼り付けた。何度も手で触リ、感触を楽しむ。うむむ、使い古したノートが、再び輝きを戻してきた。愛着心もわいてきた。エンボス加工って、なかなかいいじゃあないか。そうだ、今度はあれに貼ってみるか?