写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

逆境に耐える愛

2020年04月26日 | 季節・自然・植物

 ただ今、我が家の花水木は紅白の2本が満開となっている。このハナミズキという木は、日本の桜がワシントンに贈られた時の返礼として米国から日本に贈られたということは知っていたが、その経緯が新聞のコラムに載っていたので、要点を記録しておくことにした。

 ハナミズキは北米原産で、毎春、米国東海岸を開花前線が北上する。米国史に名高い1607年のバージニアヘのジョン・スミスの上陸は満開のハナミズキに迎えられた。同地やノースカロライナ州の州花となり、目を奪うはなやかさで春の訪れを告げる特別な花として入植者らに愛されてきた。

 明治に来日し、日本人が桜の開花予想を大事件のように報じるのに驚いたのが米女性旅行家、シドモアだった。彼女は日本の桜がワシントンに贈られるきっかけを作ったが、桜の返礼に米国から日本に贈られたのがハナミズキである。春をもたらしてくれるハナミズキの花言葉の一つは「逆境に耐える愛」という。

 「逆境に耐える愛」という花言葉の通り、連日「ステイ ホーム」で頑張り、何としてもコロナ禍が通り過ぎるのをじっと待つしかない今年の春である。そんな昼下がり、庭に出て、久しぶりにハナミズキの下に立って花の様子を眺めていると、初めて見る面白い光景が目に入った。

 頭上の高いところで、紅白の花をつけた枝がハグをするかのように交差している。以前、吉香公園の桜並木の木が、道路の両端から枝を伸ばして真ん中あたりで接触しているところがあった。その木の下には誰が名付けたか「恋人の木」と書かれた立て札が立っていたのを思い出した。

 家の紅白のハナミズキも、ひょっとすると恋人同士であるのかもしれない。それにしてもハグするまでに30年もかかったとは。これこそ「逆境に耐えた愛」なのかもしれない。