写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

水 屋

2020年04月09日 | 生活・ニュース

 子供の頃、土間で忙しく夕飯の支度をしている母から「ちょっと、水屋のお皿をとってちょうだい」といわれて、部屋の隅に置いてある「水屋」の引き戸を開けて、皿を取り出していたことを思い出した。

 いま改めて「水屋」とは何かを調べてみると「茶室に隣接して設置される設備。茶事の手前に必要となる茶道具や水などを用意するための場所で、一般の住宅でいう台所にあたる通常は板の間で竹の簀の子を用いた流しや数段の棚が設けられている」とある。我が家で言っていた「水屋」とは、茶道で使う水屋とはおよそ縁のない代物で、今でいう小ぶりな「食器棚」のことであった。

 
時は流れて今、裏庭に出てコーヒーを飲むとき、いつも奥さんから「ここにコーヒー道具を収納する棚があったらいいのにね」といわれ続けている。このところ国から外出自粛が強く求められていることから、庭で過ごすことが多くなっている。

 あと1カ月もすればバラの季節を迎えるし、自粛を機会に庭に「水屋」を作ることにした。木材で手作りしようと思ったが、雨ざらしとなるためDIYはあきらめてスチール製の収納庫を買うことにした。組み立て式で小型のいい物があったので買って帰り、30分くらいかけて組み立てる。結構な作業であったが無事完成した。

 その間、奥さんは設置場所にブロックや板を置いたりの基礎工事をやってくれている。いつものように分業による協業が、言わず語らずの内に進んでいく。

 完成品を置いて、東屋の下で椅子に腰かけて見ると、茶室の脇の水屋とは比ぶべくもないが、我が家なりの水屋に見えなくもない。早速、コーヒーメーカーや、コーヒーミル、カップ、フイルターなどを収納し、庭カフェが簡単に楽しめるようになった。