写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

隣の芝生

2008年10月28日 | 生活・ニュース
 「25日の土曜日、岩国に行く。夕方7時に会おう」。20年以上会っていない会社の同期生S君からメールが入って来た。

 元の職場のOB会に出席するために東京から出かけてくる。S君のほか、もう2人同期生が来るという。

 夕方早めに出かける準備をしていた時に電話がかかって来た。時計を見るとまだ6時前である。2次会が早く終わったようだ。

 駅前で3人が待っていた。「腹は一杯、食べるものはいらない。座って話せるところならどこでもいい」というのを聞きながら、近くの居酒屋の暖簾をくぐった。

 部屋の隅っこで他の客から隔離された、ちょうど良い席が空いていた。久しぶりに元気で再会出来たことにまず乾杯をした。 

 ひと通り近況を話し合った後は、新入社員時代の懐かしい話で昔に帰る。各人、今は趣味にボランティアにと充実した日々のようだ。

 田舎に住んでいるのとは違って、東京ではボランティアといっても興味深いものがいろいろあるようだ。羨ましく思いながら話を聞いた。

 そうか、そうなのかと聞いていると、頭の中は大都会の真っただ中にいるような錯覚を覚える。つい10年前まで住んでいて、疲れるばかりだと思っていた都会の喧騒が今はただ懐かしい。

 都会にいては静かな故郷を懐かしく思った。わがままな性であるが、今は大都会を恋しがっている。 

 定年後、田舎暮らしがいいか、都会暮らしがいいかという特集が雑誌でよく取り上げられているのを見る。

 そんな迷いは、とっくの昔に卒業したと思っていたが、東京からの旧友との再会で、隣の芝が少し青く見えた一夜であった。
(写真は、プレリュードでよくドライブをした「横浜みなとみらい」)