写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

もつれ

2008年10月09日 | 生活・ニュース
 先日、小中学校が一緒だった幼馴染の男女6人でアジ釣りに出かけた。防波堤でオキアミを使ってのサビキ釣りをした。

 仲間の釣り師が、仕掛けを作ってくれる。アミかご・釣り針・うき・うき止め、それらをセットしてくれた後、水深見合いの浮き下長さを指示してくれる。

 各人が10mくらいずつ離れ、防波堤の陸側と海側に向けて自分の好きな所を狙って投げ落とす。

 私は2人の女性の中間に立って開始した。少し東風が吹く日であった。かぶっているつばの広い麦わら帽子が、あご紐を結んでいても飛びそうな時もあった。

 少し波も立つ中、ウキが風下のNちゃんの方へ流れていく。とその時、ガクッと大物がかかった。引きが強い。

 やった。思い切ってしゃくった時、Nちゃんの竿が大きく私の方に向ってしなった。やややっ、海中でNちゃんの糸と私の糸がもつれあっている。

 引き揚げてみると、5本ずつ付いている針が老眼ではよく見えないが複雑に絡んでいる。

 腰を据えて解きにかかるが、初級の数独を解くように簡単にはいかない。やっているうちに徐々に解けるコツを会得した。

 もつれた部分の糸を両手の上に乗せ、軽く上下に揺すってやると自然ともつれた部分が大きく膨らんできて、解け易くなってくる。

 しばらくすると元通りに無事分けることができた。Nちゃんとは長い付き合いの中、人間関係でもつれたりすることはなかったが、釣り糸でもつれてしまった。

 しかし、もつれた所を力まかせに引っ張ったり、簡単にハサミで切ったりせず、やわらかく・優しく、ゆっくりと時間をかけて対応してやれば解くことができた。

 ほぐれた釣り糸を再び海に投げた後、小さく上下するうきを眺めながら、この手法は、人間関係のもつれの解決方法にも似ていないかなと、ひとりニマッとした。
(写真は、あの日もつれにもつれた「アジ用釣り針」)