写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

老 犬

2008年10月13日 | 車・ペット
 散歩嫌いなハートリーを家に残して、夕方の散歩に出た。このところの散歩は、700m離れたフタバ書店まで早足でいって帰るルートに決めている。

 そこには自費出版した「散歩嫌いなハートリー」を置いてもらっている。少なくなっていたら補充しなければいけないので、毎夕在庫を確認するために行く。

 その帰り道、山際の住宅街を通って帰ろうとしたとき、10m先を背の高い男が柴犬を連れて歩いていた。

 見ると毛が不揃いに立っている。痩せていて腰の周りは異常に細い。一見しただけで老犬だと分かった。

 少しふらつくように見えるが歩く速度は結構速く、私が歩く速度とほぼ同じである。ハートリーと違って、無駄な道草などはまったくしない。ただひたすら前に歩く。

 外見に似合わずタフなようであるが「この犬は本当に散歩を楽しんでいるのだろうか」とも思った。

 人間であれば多分80歳を超えた年齢だろう。それなのに、飼い主が普通に歩く速度で連れて歩かれる。少し酷ではないか。

 犬に聞いてみなければ分からないことではあるが、歩く格好を後ろから見ていると気の毒な感じがした。

 ハートリーは今7歳。人間でいえば44歳だ。それなのに家から50m辺りまで歩くと、もう前に進まない。リードを引っ張ると、綱引きのように足を踏ん張って先へ行くことを拒む。

 元気盛りのこの若さで散歩嫌いである。それに引き換えこの老犬には、老いてなお、もっと生きようとする執念のようなものを感じた。

 散歩帰りに出会った老犬から、近頃運動不足の私は「年をとっても毎日歩けよ」と言われているように思った。

 最近は、何を見ても何かを教えられているように感じる。逆に私は黙って皆さんに何を教えているだろう。今まで通り反面教師で通してみるか。
  (写真は、足取りの重そうな「老犬」)