写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

うな重

2008年10月21日 | 食事・食べ物・飲み物
 中国産のウナギに問題があって以来、不信感があってうなぎを食べる気持ちが起きないまま1年近く経っている。

 うなぎ好きの奥さんも、我慢の限界が来たようだ。広島に出かけることがあった。行ってみたいウナギ専門店をあらかじめネットで調べておいた。広島市中区銀山町にある「柳橋 こだに」である。

 昭和22年創業、京橋川にかかる小さな柳橋のたもとでうなぎの卸問屋として営業を始めた。

 昼時であったがひとつ席が空いていて座ることができた。小さな座敷を含めて8卓くらいのこじんまりとした店だ。

 大きな窓の外には、柳の枝越しにゆったりと流れる京橋川が眺められる。柳の下で、どぜうならぬうなぎである。中々いいロケーションだ。

 お昼のメニューは、並み又は上の肝吸い付きのうなぎ定食かうな重である。並みが1735円、上が2310円。一生に一度だと思って「上」と叫んだ。

 待つこと10分、ご飯が見えないくらいうなぎが重なったお重が出てきた。甘みを抑えたタレ、大人向けの味付けを黙っておいしく頂いた。

 周りを見るとお得意さんを接待するやのサラリーマン風の者が多い。お重の模様を見ただけで並みか上かが分かる。

 並みを食べている人が多い。年金受給者の我々二人は上を食べている。目立たないようにそっと食べた。

 しかし一生に1度の贅沢だ。翌日からはまた目刺しと漬物での毎日だ。誰はばかることもなかろう。「ごちそうさま。おいしかった」と言って店を出た。

 久しぶりにうなぎを食べてみた。昔はどこで買っても安心して食べられたのに、今は不安が先に立つ。つかんだと思っても逃げていく「食の安全」、まるでうなぎをつかまえるかのようにぬるりと逃げていく。ただ安心が欲しい。
  (写真は、探して行ってみたうなぎ専門店「こだに」)