写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ナス?

2007年09月22日 | 生活・ニュース
 退職してからというもの、自分で出来そうなことは何でも自分でやってみることに徹している。やってみてうまく出来ないことも沢山あった。

 食の自給自足を目指して、裏の庭の一部で5年前から菜園をやっている。狭いながらも小さな耕運機を買って機械化している。鍬で耕すことを1度やってみたが、重労働過ぎてとっても無理だと分かったからだ。

 菜園作りでの私の役割は、耕運機の運転までで、いつ・どこに・何を・どのように植え・育て・収穫するかはすべて奥さんの仕事となっている。

 5月にはイチゴを、夏にはキュウリ・トマト・ナス・ピーマンがいやと言うほど収穫できた。そんなに獲れた夏野菜もそろそろ終わりに近づいた。

 昨日のことであった。「わ~、見て見て」と、玄関のドアを開けて奥さんが嬌声を上げて入ってきた。両手の平一杯に、この夏最後だと言うナスを抱いている。

 テーブルの上にそれを置いた。その中から一つ?のナスを取り出して見せてくれる。思わず目を見張って顔を近づけて観察をした。

 一つのナスといっても、一本のへたから3本ものナスが出ている。正確には3本半とでも言おうか。ごくごく短い、ナスとも言えないようなものがちょこんとくっついている。

 こんな奇妙な形をしたものは初めて見た。想像力を膨らませてみると顔が赤くなってきそうだ。へたをよく観察してみると、どうやら二つのへたが合体して一つになってしまったように見える。

 それにしても3本半もあることは説明がつかない。「まるで……のようだね」といって大笑いしたが、奥さんはこんな形のものは料理したくないと言う。

 このところの猛暑日を耐えて出来た折角のナスなのに、本懐を遂げることなく生ゴミの袋に収まることに決まった。

 少しすまないような気がしたが、食すには気持ちが悪く、他にナス術もなく、ナスはなされるがまま私の視界から消えていったハナスです。
 (写真は、菜園で取れた変則的な「変足ナス」)