写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ドタキャン

2007年09月13日 | 生活・ニュース
 ドタキャンとは、「約束して土壇場になってキャンセルすること」という芸能界での業界用語で、これをやってしまうと絶対に成功できないと書いてある。

 それはそうだろう。ドタキャンをやられると相手から確実に信頼されなくなる。商談ならドタキャンをした時点で完全にアウトとなり、デートの約束であればその後からはもう2度と会ってはもらえない。

 昨日(12日)、安倍首相の辞任会見のテレビを、私は口をポカンと開けたまま見ていた。2日前に所信表明演説を行い、それを受けて与野党の代表質問が予定されていた本会議開催の直前での辞任表明である。

 これぞまさにドタキャンである。幼稚園の園児が遠足に行く日の朝、訳の分からない理由を言って「ぼく、行きたくない」というのと何ら変わらない。

 このニュースが流れた後の国会内は、蜂の巣を突いたようなというか、上を下への大騒ぎである。そんな中、民主党が代議士会を開催しているシーンが映し出されていた。

 その日の午後の本会議で代表質問に立とうとしていた鳩山幹事長が、冒頭の挨拶でマイクの前に立った。「トップバッターとしてバッターボックスに立とうとしたら、肝心な相手の投手がいなくなった。投手、与党の党首がいないのでは試合になりません」と、皮肉たっぷり余裕の挨拶である。

 政治家の中にも私と同じように駄洒落の好きな人がいた。しかし今は、こんな駄洒落で遊んでいる場合ではない。こんな唐突な辞め方は誰が見ても納得はできない。きっと、人には言えない余程のことがあったのだと思いたい。

 この程度のどたばた劇を見ていると、国の舵取り・代表者の出処進退を見ているのに、何やら自治会の会長のそれくらいにしか見えなく、心寒くなってきた。

 うーん、こうしてみると月並みだが、何ごともこの世はやはり精神力を含んだ体力勝負ということか。駄洒落も、気力・体力がないと出て来ない。
 (写真は、首相辞任を伝える13日の「毎日新聞」)