まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 916

2014年06月03日 |  マツタケの林地栽培 

 とにかく暑いです.京都アメダスは36.0℃記録しました(1日).予報では週始めは夏の暑さで、熱中症に要注意。ただ、天気は下り坂で週中頃からは雨が降ります。ムシッとした体感で、梅雨の気配を感じられそうです.今日(2日)も暑さが続くので、熱中症対策を。また、段々雲が増えて、天気はゆっくり下り坂です。明日からは曇りや雨の日が続きます。※週後半は梅雨入りの可能性もあります(Weather News)。

6月6日(金)は、まつたけ山復活させ隊第442回活動日です。午前10時に京都市左京区岩倉 村松 138-20 香川山(自称:下記の§活動拠点へのアクセスを御参照下さい)にお集まり下さい.
 
 熱中症やマダニなどによる咬傷、虫刺され、そして事故に気をつけて、マツタケ山づくりを楽しみましょう! 各地で山火事が発生。私たちも昼食の準備に火を使います。火の後始末には十二分に気をつけて下さい。 活動の様子は、三輪 新造さんが当日夜、報告します。

 前回、京都精華大学 地域環境学(板倉教授)受講生25名が参加しました.地域のいいものを発見し、学ぶというユニークな授業の一環です.岩倉地区には、近代的マツタケ学発祥の地とも言える尼吹山があります(香川山BCから西南方向に直線で約600m).

 一般的には知られていないでしょうが知る人ぞ知る、世界の宝です.マツタケ研究試験林(故房岡宇八郎氏当時所有)を設け、マツタケの生理生態を自ら研究し、また、我々の研究を指導下さった故濱田 稔先生顕彰の碑が建っている.
 
 京都精華大学2回生は、行動にも学びの心にも積極的でした.我々のテーマ「マツタケの生活する里山づくり」を学んでくれたでしょう. 
 では、彼らの活動の様子を御覧ください.
            
 

マツタケ山づくりの話18
      <マツタケは、人による原生林の破壊によって登場し、人による里山林の破壊によってその生を終わろうとしている> 
 
 マツタケとはどんなきのこであるのか、次いでその生息地であるアカマツ林が含まれる里山林の危機と進み、日本ならではの発想「マツタケの生活する里山林」づくりを担う市民の運動を紹介して参りました。
 
 前回まで、マツタケの出ている(orだろう)林を確保しよう! その特徴をまとめてみよう! と進んできました.では手入れを!とはやる気持ちを抑えて、もう少しマツタケ山づくりの科学を学んで下さい.お急ぎの方は、トロント刊行の「マツタケ山のつくり方」を御覧ください。多くの図書館で購入戴きましたのでそこでお探し下さい。
 
 今回も、(株)トロント刊行(03-3408-1521)の「マツタケ山のつくり方」と岩泉まつたけ研究所の実践と大学の講義資料などを参照しつつ、その実際を書き進めます。 少し退屈で堅い話が続きますが、マツタケとアカマツのことをよく知って作業することが間違いのないそして早道です。目を通してください。

マツタケ山づくりの科学
マツタケ子実体発生と気象要因
1)マツタケ子実体の生長
マツタケの栄養生長が生殖生長に切り替わるメカニズムで物理的刺激である温度の効果だけがはっきりとしている.マツタケの発生の前、シロの上の落葉や腐植をはぐとシロ表面にマツタケの菌根が真っ白に見える.この時期に地温が19℃(岩手県沿岸 18℃)を下回ると菌糸が米粒ほどの大きさに固まる.マツタケの子実体原基の形成である.原基形成後7~10日経つと地上に顔を出し、更に7から10日で開傘日となる.

2)地掻は地温を上昇
マツタケの林地栽培に成功するには、アカマツ林の植生を1955年以前の姿に戻し、それを維持することに尽きる.これは基本で大前提であるがアカマツ林を充分に手入れしても人のアンタッチャブルな要因もある.気温や日照や降水量である.シロの生長に気温や日照や降水量が影響を与えるが、撒水やシロの地温を適切に維持する工夫も完璧なものはない.

 アカマツ林の手入れは地温上昇や土壌水分を高めてくれる.岩手県岩泉まつたけ研究所の向林試験林において、同一林内の放置区と手入れ区で地温( 地表下10cm)を測定した結果では、林内平均気温の最低は1月で‐3.6℃、最高は8月で23.5℃.地掻区の平均地温は、2月が最も低く‐0.1℃、最高値は21.5℃で8月である.放置区のそれは、3月が最も低く0.5℃、8月が20.6℃で最も高い.マツタケの生長期(4-8月)に地掻区の地温が平均で0.7℃も高くなっている.逆にマツタケの休眠期には地掻区が低い.

 寒冷地では、シロの栄養生長期に温度を高める地掻きに意味がある.しかし、地温が高くなることは、マツタケ発生期の残暑のぶり返しの効果が高くなることを意味するので、要注意であることを忘れない様にして欲しい.

3)地掻は土壌含水量を上昇
マツタケのシロの生長や子実体発生に土壌水分が効果を持つ.調査した地掻区と放置区は共に尾根筋にあり高等植物の植生の調整は実施してあり両区の距離は2mである.今回の土壌水分量の測定法は土壌粒子が吸引している水の力に相当する水柱の高さ(cm)の対数値(pF)である.

 土壌を100℃で乾燥するとpFは7.0で、土壌の懸濁水がpF0である.pF値が小さいほど土壌水分は多い.pF3とはほぼ10mの水圧と同等の力をかけないと植物は水を吸収できない.植物が利用できる最低限度はpF3.8で、pF4.2で永久に萎れる.菌類は、風乾した土壌(pF5.5)でも水を利用できる.菌根の根外菌叢が宿主の水分要求を満たしているに違いない.

 8月に地掻区の土壌水のpFは放置区のpFより0.3小さい.岩泉のマツタケ発生のピークである9月下旬から10月の上旬では、地掻区のpF値が1.8、放置区は2.5~2.8である.マツタケの発生には土壌水のpFは2弱がよい.自然保護運動で「森林は放置することがベストである」との意見がある.林床に豊富に堆積した腐植がスポンジのように水をため水の涵養になるというのである.

 これは改めるべき意見で、手を入れた林の方が土壌水分が高いのだから、里山林は活用してこそ人との共生関係も成立するのではないか.夏季は腐植に吸収された水は蒸散で失われていると思われる.マツタケの林地栽培のための発生環境整備は土壌水や地温の正のレギュレイション効果を持つことがお分かりいただけると思う.

4)マツタケの発生には雨と気温が肝要 岩泉の例から
マツタケの発生と気象要因(地温と雨量)との関係を岩泉まつたけ研究所の向林試験林(アカマツ樹齢39年、1ha)の実例で見てみよう.年平均発生量は306±87本で、最少は0で最大は748本である.雨の非常に少ない1992年(発生数 0本)と1994年(大豊作615本)と多雨の1998年(239本)を取り上げる.

 1992年は試験林の林内雨量が8月に18mm/降水回数は6回、9月に33.5mm/11回であった.分析もなにもできず、たった一言「発生期に雨が非常に少なく、マツタケの発生が0であった」である.

 1994年は岩手県のマツタケ生産量が初めて日本一になった年で猛暑であった.梅雨の雨量は114mm/13日.7-8月の平均気温はそれぞれ22.0、26.1℃で林内雨量は少ない.9月上旬も雨量は少なく暑い.マツタケ子実体原基の形成刺激温度18℃を地温が下回った日は9月9日、丁度雨が14.5mmあった.9月13日から連続8日間降水がありマツタケの発生を16日に確認した.

 9月の雨量は293.5mm/16回、10月は少ない.発生のピークは9月24日から10月4日の11日間で1haあたり1日38本であった.シロの生育に適当な地温18℃以上を記録した日が7‐8月に48日あり、2ヶ月の降水量は389.5mm/26回である.このようにマツタケの生育に雨が必要である.しかし、多ければよいということではない.

 1998年は多雨で駄目な年であった.東北地域は梅雨明けがない、雨がなくて梅雨がないのではない、ずうっと雨ばかりだったからである.アメダスの8、9、10月の雨量の平年偏差は、それぞれ209%、170%、211%である.気温の平年偏差は、8月が低温で-1.2℃、9月が1.9℃、10月が2.4℃である.8月が低温でシロの生育も悪くしかも質の悪いマツタケが発生した.

 マツタケの発生初日は、子実体原基形成日が8月6-7日頃にあり、発生初日は8月17日で6本である.9月の発生も少なく発生しても高温で虫食いマツタケになった.例年だと岩手県の太平洋沿岸は10月上旬になると林内の平均気温が12℃になり、マツタケの発生も終わりに近い.しかし、1998年は10月の気温が平年より2.4℃も高く、10月後半にはまともなマツタケが発生した.10月30日の発生終了まで75日、マツタケの発生数は239本であった.

5)発生の高温中断
 ある年、原基形成後、8月の終わり頃と9月の下旬に地温が18℃を上回りマツタケの発生の高温中断が二度生じたことがあった.高温中断とは形成された子実体原基が地温の上昇(18℃以上)によって腐り、マツタケの発生が中断することである.こんなときにはスプリンクラーで林内を大々的に冷やすのはよいのかもしれない.最近は、林内にミストを撒布できる装置もある.

6)マツタケの発生は地温15℃中心
マツタケの発生に好ましい温度領域を地温で見てみよう.向林試験林では、マツタケは地温8.8℃と21.1℃の間で発生している.13~18℃で発生が多く、15℃に集中している.岩手県岩泉町では、発生の最適地温は15℃附近にあると考えられるが、地温も12℃を下回ると発生量は落ちてくる.しかし、初雪の頃(11月始め)マツタケを採った例が複数ある.発生期の地温が15℃に維持できると豊作になるのであろう.もちろん他の条件も満たされていればのことである.

7)マツタケの発生には原基形成から40日の雨量が有効か
マツタケの生理生態から見て、マツタケの発生初日10日前(原基形成の頃)から発生初日後30日まで40日間の雨量はマツタケ発生に有効であると考えられる.発生初日の予測は地温(-10cmの地温が18℃を下回って7―10日後)を正確に測定していると可能である.この期間の降水量とマツタケの発生量は比例しない.このことは、マツタケの発生量は雨だけで決まるのではないことを物語っており、撒水の難しさにつながっている.

 春からの菌糸の生長を保証する地温や雨量、夏季の高温と発生期の雨が満足されると豊作になる.それにアカマツ林の土壌条件やアカマツ樹齢の効果なども加味されなければならない.
 しかし、この時期に雨がなければマツタケの発生はないことも、また、適当な降水量に恵まれると豊作になることは紛れも無い事実である.他の条件を一定に固定できれば、原基形成から40日間の降水量はマツタケの発生量に大きな影響を与えていることが明らかになるのだが、それができないのである. 続く

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まつたけ山復活させ隊NEWSLETTERが 新しくなりました.
詳細を、まつたけ山復活させ隊のブログ( http://blog.goo.ne.jp/npoiroem )で、ご覧戴ければ幸甚に存じます.また、ブログ左欄ブックマークの
NIKONオンラインギャラリーを左クリックしてギャラりーに入り、活動風景を御覧ください.
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§活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 香川山 (京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 
 活動開始は午前10時頃から、終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は必ず参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側)40分
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)

§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.メンバー参加者には、現在、食材費+消耗品費として400円を徴収.登録外参加者・見学者などは要500円(施設利用代などを含む).

§参加や見学希望の方は、ブログ画面左にあるカテゴリーから「まつたけ山復活させ隊とは」を左クリックでご覧下さる様にお願いします.
内容
まつたけ山復活させ隊の活動について 
§1 我々のまつたけ山再生運動とは? 
§2 まつたけ山復活させ隊に参加するには 
§3 私達のマツタケ山造り(作業方法の特徴)
§4 こんな活動をしています! 
§5 今年の予定と目標?

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まつたけ山復活させ隊活動日

予定日  2014年6月~12月
 回  開催日   報告担当者   男厨シェフ

442 6月06日 金 三輪
443 6月14日 土           川崎
444 6月20日 金 榎本
445 6月28日 土 三輪
445 6月28日 土 三輪
446 7月04日 金 宮崎
447 7月12日 土 内田
448 7月18日 金 榎本
449 7月26日 土 三輪
450 8月01日 金 宮崎
451 8月09日 土 内田       松本
452 8月22日 金 榎本
453 8月30日 土 三輪
454 9月05日 金 宮崎
455 9月13日 土 内田       小原
456 9月19日 金 榎本
457 9月27日 土 三輪
458 10月03日金 宮崎
459 10月11日土 内田
460 10月17日金 榎本
461 10月25日土 三輪      松浦
462 10月31日金 宮崎
463 11月08日土 内田             京都造形芸術大学 環境学受講生 マツタケ山づくり体験
464 11月14日金 榎本
465 11月22日土 池内
466 11月28日金 三輪      内田
467 12月06日土 宮崎
468 12月12日金 内田
469 12月20日土 榎本             忘年会
470 2015年1月10日土 池内

            

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§カンパありがとう!  

§カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
         みやこ松茸・里山復活! 京都の文化・景観を守るために、里山林整備に努力しています.
   
カンパの振込先
 氏名:  まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
 銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

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§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305 matsutake10@gmail.com

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典

 

コメント
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