まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ「十字軍」運動NEWSLETTER-335-

2008年09月01日 |  マツタケの林地栽培 

「マツタケ生産振興全国交流長野大会」のご報告

 8月28-29日、長野県諏訪市で「マツタケ生産振興全国交流長野大会」(以下「大会」)が、生産者の方を中心に200人以上の参加で行われました(長野日報の記事)。今回が第3回目、岩手で開かれた第2回大会から数えてもう10年になるそうです。
 吉村代表が基調講演を予定されていましたが、諸般の事情から出席が困難となり、急遽代役として「まつたけ十字軍運動3年間の歩み」を紹介させていただくこととなりました。以下「大会」のご報告です。

1日目 大会
まずは「木遣り」でマツタケ豊作祈願。

木遣りは、その勇壮さで有名な諏訪のお祭り「御柱祭」で、御柱を引くときに気持ちを一つにするためにうたわれるものだそう。綱引きの「ヨイショ!」の掛け声みたいな役どころなのでしょうか。それにしても一番左の方、すごい声量でした。

開会式典、山田諏訪市長の祝辞。

また、林野庁長官(代)、県林産関係者の方々の来賓挨拶がありました。

<基調講演2題>
 まつたけ十字軍からは、「まつたけ十字軍運動3年の歩み」と題して、市民の立場からのまつたけ復活・里山再生のとりくみについて報告させていただきました。

 主に生産者の大会ということで、参加者のもっぱらの関心はマツタケ増産技術についてだと思います。しかし、マツタケ山にも影響を及ぼすその他の里山や放置人工林をはじめとした山の手入れの問題や、地球規模の環境問題は、マツタケ生産者あるいは都市住民だけで解決できるものではなく、相互の協力がますます求められてきていると思います。そういう意味で今回、私達市民ボランティアの運動の発表の機会を作ってくださった大会実行委員会の問題意識と先見性に敬意を表したいと思います。
 実際、大会後の交流会では何人かの山主や生産者の方々からも一般市民との交流についての相談や岩倉見学、相互交流の希望などもいただきました。

 東京シティ青果株式会社の徳永氏からは、マツタケの国内生産・海外輸入・市況状況と需要動向についての講演がありました。

 東京シティ青果株式会社では、築地市場で取引されるマツタケの大半を取り扱っておられるそうです。関東では開いていない“つぼみ”が“まつたけにぎり寿司”用に求められ、小型の“つぼみ”は土瓶蒸しとなり、大型で傘が開いたものはまつたけご飯にされるということでした。
 関西では大きいものが喜ばれるとのこと。食い倒れと商売の町大阪ではそうなのかもしれません。京都では、やはり白くて太短く、小ぶりで雅な“京まつたけ”をいつか復活したいものだと思いました。

<パネル討論>
 パネラーは岩手の代表的生産者芳賀さん、3年前までは毎年マツタケ生産量全国一位を誇った広島県から板橋さん、地元諏訪の「山十きのこ組合」の藤森さん、長野県林業総合センターの研究者竹内さん。コーディネーターは長野県特用林産振興会長の林和弘氏。

芳賀さん(岩手)
 持ち山の他に国有林を入札してマツタケを採集しているがマツクイムシ被害はない。国有林は、ふだんは特に手入れもされてなくて、落ち葉なども比較的深いのだがマツタケは順調に発生している。マツタケが顔を出す前のわずかな気配を察知して採集するので、発生場所を他人に知られること無く商品価値の高い“つぼみ”が採れ、整備などのコストをかけることなく利益が上げられている。

板橋さん(広島)
 広島ではマツクイムシ被害がひどく、現在その対策に追われている状態。マツクイムシ耐性松苗の植林をしたり、マツクイムシの幼虫を食べると言われている天敵の活用も検討している。
(「マツクイムシの天敵」については非常に興味深く、後ほど実行委員会を通して資料を送っていただける予定です)

藤森さん(諏訪)
 昔は「アカマツ以外の木は全て伐れ」と教えられ、そうしないと補助金が出なかったこともありそうしてきた。しかし今では、温暖化の影響もあるだろうが涼しい信州でも地温が上がり過ぎないような山作りが重要になってきている。
 また、鹿などの獣害がひどくなってきている。昨年、今年と4,000m~5,000m規模の鹿避け網を張り巡らすことによって被害を防いでいる。費用と手間がかかるが今のところ最善策。

竹内さん(長野県林業総合センター)
 気温、地温、降水量といった気象条件の不安定さが年々増してきており、残暑による不作、発生ピークが年々遅くなる傾向が見られるなど、発生量を大きく左右するようになってきている。山の整備をするにあたっても、地域ごとに気象条件を考慮した整備、対策が必要になっている。
 独自に「豊凶指数」を考案して作柄を予想しているが、実際の収穫実績ともよく相関している(相関係数≒0.8)。
年ごとの「豊凶指数」と「採取量」の相関図

[豊凶指数]=7、8月雨量(mm)/地温再上昇日数(日)

  ※ 「地温再上昇日数」とは、7~8月の高温期を過ぎて地温が19℃(マツタケ発生のスイッチが入る温度。地域によってわずかに上下はある)を下回ってから、残暑により地温が上昇した日数。

 また、試験地で実験中のパイプ潅水、寒冷紗による地温管理他の様々な試みの紹介、有用性と実用性の評価について発表がありました。

2日目 研修会
「山十きのこ組合」のマツタケ山を見学しながら整備の考え方、テスト中の事がらなどを解説いただく。

鹿防除ネット。2年間で延べ9,000mを張り巡らした。大勢を動員して人海戦術でやったそうですが大変な労力です。

 ネットも鹿が引っかかっても破れない、50mで3万円もする丈夫なものだそうでした。5,000mだと300万円。やはり助成金がないと難しそうですが。
 長野県では「森林づくり税」というものを制定して財源を確保し、マツタケ以外にも里山整備や目的別森林つくりをすすめているそうです。

見事な整備林

シロがいくつもある整備地。気のせいか、実際シロから漂ってくるのか、マツタケの香りがしていました。

若齢林

このような若齢林(25年生以下)では、将来シロを形成させるために、立木密度が密集していても基本的に松は伐らないで根を増やさせるようにしているとのこと。左で松を背にされているのが案内の藤森さん。見た感じは香川山西側の整備林と似ていました。

壮齢林

まだ未整備の壮齢林(30~40年)。シロは確認されているとのこと。

京都からもメンバーの今西さん、八木町の薗田さん、京都府林務課の藤田さん、綾部の方など5、6名が参加されていました。

<番外 カラマツとヒノキの二段林>

 戦後住宅需要を見込んで奨励された植林が、外材に押されて放置され荒れ放題となっているところが全国に見られます。京都はじめ西日本は杉、桧の植林が圧倒的ですが、信州のような高冷地はカラマツ林が多い。収穫期を迎えた今、マツタケ山再生と並んで、いや規模的にはそれ以上に深刻な問題となっています。

 マツタケ山再生ではありませんが、ここでは成長したカラマツ林の下に若い桧を植える「二段林」の森林づくりで生産材の更新を上手く回して行こうとする試みが行われていました。
 「マツタケ生産用の山も、壮齢松と若齢松の二段林とすれば、松の更新もシロの維持継続も地温管理も含めて一石三丁でうまくいくのではないか?」とふと思いましたがどんなもんなのでしょうか?

<付記>
 それにしても、いったい何人の方々から「吉村先生によろしく」と言葉を託されたことでしょうか。正直、憶えきれておりません。あらためて吉村先生の残してこられた足跡に驚かされました。次の大会にはぜひともお元気な姿でご出席いただけること願っております。

(宮崎 昭 記)

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