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『子供が育つ条件』(読書メモ)

柏木惠子著『子供が育つ条件:家族心理学から考える』岩波新書

気になるタイトルである。

著者の柏木先生によれば、日本の子供は、他国の子供とくらべると「成績がよいにもかかわらず、自信がもてない」傾向にあるという。つまり、自己有能感が低い

なぜか?

親が子供のために「よかれ」と思って、早いうちからピアノ、水泳、英語などを習わせる「先回り教育」が原因の一つであるという。何でもかんでも親が用意してしまうため、自分の力で何かを達成した経験が少なくなり、自ら学ぶ力が低下するわけである。

「子育て」ではなく「子育ち」をいかに促すかが親の役目となる。

もうひとつ日本の特徴として挙げられているのは、「母は育児、父は仕事」という文化が根強いため、母親に育児が押しつけられてしまっている点。これは、かなり耳の痛い話。

すぐにできそうアクションは、家族全員で食事をとること。「共食」が集団の絆を強めることはよく知られている。

本書の結論は「親が成長していれば子供は育つ」とシンプルだ。「勉強せい、勉強せい」と言っている親にかぎって成長していないことが多い。観察学習力に優れている子供は親の背中を見て育つ。

以上の主張は、企業にも当てはまりそうである。いろいろと先回りして与えすぎると、成長の機会を奪ってしまう。ともに食事をとる機会も少なくなり、絆も薄れる。上司の成長が止まっているので部下も育たない。

逆に、管理職が生き生きと成長し、自分で考える機会を与え、飲み会をさかんに開催する職場では若手が育つ、といえるのではないか、と思った。
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