南米初のリオ五輪
「新しい世界へ」の試みに期待
南米大陸で初めてとなるリオデジャネイロ・オリンピックが開幕しました。ドーピングなど難問を抱えたままの幕開けですが、大会が掲げたスローガン「新しい世界へ」の試みが注目されます。
困難乗り越え友好を
最初の近代オリンピックであるアテネ五輪から120年の節目の祭典です。その開催都市に南米の都市が選択された意味は重いものがあります。「オリンピック・アジェンダ2020」の「潜在的な開催立候補都市を招待し」という提言とも合致するものです。
しかし、その勇断にもかかわらず準備の段階からさまざまな試練に直面してきました。不安定な経済、貧富の格差、福祉の遅れ、環境破壊などと絡んでオリンピックに巨費を投じることが、住民間に不信を募らせていきました。
友好と相互理解を促すはずのオリンピックが、かえって人びとの心に溝を刻むようでは開催の意味が問われます。「新しい世界」を切り開くためにも、 リオ五輪が抱える苦悩は「開催都市に無理のないオリンピック」をどう構築していくかという問題を投げかけていると言えるでしょう。
オリンピックの開催に際して不安を募らせているのが、無法なテロが頻発し、難民の悲劇が広がり、平和な共存の国際的な基盤が揺れていることです。 そのために、各国からの観戦者が自重し減少傾向にあるのは、「人びとの交流で平和の連帯を」とのオリンピックの趣旨からいって残念なことです。
それでも、史上最多の205カ国・地域の選手がリオデジャネイロに集まります。今回は10人の難民選手がチームとして出場できる措置を取りまし た。世界の競技者の力強い競演によって、人類が国境を超えて平和のもとに団結する大切さを、「コパカバーナのビーチ」から示してほしいと思います。
ロシアの国ぐるみのドーピング問題も禍根を残したままオリンピックに持ち込まれました。事は選手の生命と人権、スポーツと競技の本質にかかわる深 刻な問題です。国際オリンピック委員会(IOC)と国際競技団体(IF)、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)とが不正を排除し、病根を絶ち切り、 「クリーンな選手の擁護」(アジェンダ2020)に一致団結して対処することを強く望みます。
4年後に東京五輪・パラリンピックを控える日本選手の活躍も期待されます。競泳、男子体操、卓球、女子のレスリングなどが注目されるなか、若いア スリートは臆せずに明日を開く挑戦をしてほしいものです。前回のロンドン大会で不振だった男子柔道、パワーハラスメントの告発があった女子柔道は再起がか かっています。
リオから東京につなぐ
開幕直前の3日に開かれたIOC総会は、2020年東京大会の追加競技として野球・ソフトボールなど5競技18種目の実施を決めました。関係競技団体にはうれしいニュースですが、膨張する規模と競技水準の確保をどのように調整していくのかが迫られます。
オリンピックからパラリンピックへ長丁場の会期ですが、サンバのリズムに乗って南米から発信される「新しい世界へ」の呼びかけが、明日につながることを願ってやみません。リオから東京にオリンピック開催旗が無事に手渡される瞬間を見届けたいと思います。