ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

無責任なことをほざいて、未成年者の身体の損害を黙認するクズ

2017-08-18 00:00:00 | スポーツ

過日の朝日新聞の記事にひどいものがありました。私は、こちらの記事で知りました。

>手首を骨折していても本塁打 前橋育英、信頼応えた4番

8/9(水) 18:59配信 朝日新聞デジタル

前橋育英―山梨学院 七回表前橋育英無死、飯島は左中間に本塁打を放つ=林敏行撮影
(9日、高校野球 前橋育英12―5山梨学院)

■前橋育英・飯島大夢

 左手首の骨が折れている。テーピングを幾重にも巻き、さらにサポーターをつけてバットを握った。

【写真】前橋育英―山梨学院 三回表前橋育英2死二塁、小池(手前)が左越え本塁打を放ち、盛り上がる前橋育英の選手たち=清水貴仁撮影

 前日、群馬大会の決勝以来、約2週間ぶりに打撃練習した。「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。

 それでも、試合になれば「4番サード」に名前がある。5月の関東大会で死球を受けてから、ほとんど練習できていないのはみんな分かっている。打つことが期待されているわけではない。「仲間からの信頼がある。そこ(4番)にいることが大事」と荒井監督。

 そして、期待以上に応える。バットを短く持ち、右手で押し込むイメージで振る。一回に先制の左前適時打、三回は中前適時打。七回は左中間席まで白球を運び、「いっちゃったなあって思いました」。いかつい顔でおちゃめに言った。

 次の試合は第8日(15日)。そこまではまた、ほとんど練習できない。「打てなくても、違う面でチームを引っ張る。『気持ち』とか」

 監督が「男気がある。昔のガキ大将みたい」とほれ込む主将。次も「そこ」にいるだけでいい。(山口史朗)

前日、群馬大会の決勝以来、約2週間ぶりに打撃練習した。「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。

って、正気じゃありませんね。こんなの出場させる監督も論外だし、本来なら大会役員から部長・監督に厳重注意がされるべきものでしょう。お話にもならないとはこのことです。ピッチャーのひじもそうですが、選手へのドクターチェックを入れて(これはしているはず)選手登録を拒否するなり、どうしてもなら、登録絶対不可の選手と条件付出場保留選手みたいなものをわけて、出場保留者に関しては試合前日に最終チェックをして医者の判断で出場の可否を決定するくらいのことをする必要があるんじゃないんですかね。この選手の場合

>「緩い球で、軽く当てる程度」で約10スイング。痛みが全く消えていなくて、びっくりした。

だそうですから、とても出場させられるような状態じゃないでしょう。そしてどうもこれ、群馬大会もかなり無理して強行出場したようじゃないですか。ご当人の意思か同調圧力か、監督の命令かは定かじゃないですが、これでは治るものも治らないでしょう。

しかしより問題なのは、こういうことを肯定して報じちゃうマスコミの姿勢かなと思います。そしてそれに「感動」(?)しちゃう高校野球ファンの態度も。

野球というスポーツの特性もありますが、さすがにいまどき他のスポーツでここまでの無茶はしないんじゃないんですかね。していたとしてこのようにマスコミが肯定して報じるかどうか。先日の世界陸上でも、やや不安のあるサニブラウンを4×100mリレーで外したじゃないですか。本番ではジャマイカのボルトのアクシデントで銅メダルを取れましたが、それがなければメダルは不可だったわけで、陸連も、ここは本人の将来を考えてリレーから外したわけです。その時点で陸連も、これはメダルよりサニブラウンの将来のほうが大事だと考えたわけです。サニブラウンとこの甲子園のバッターでは、舞台も立場もまるで違いますが、でも本質は何も変わらないんじゃないんですかね。

それにしてもこの朝日の記事、まるで昔の戦争の際の武勇伝記事じゃないですか。ナントカ少尉がシナ兵を、みたいな。そういった報道の1つが例の「百人斬り」でもありますが、一応朝日新聞は、そういった過去の戦意高揚を目的とした報道は建前として否定・反省しているんじゃないかと思うんですけどねえ。

夏の高校野球というのはかなりめちゃくちゃなことがまかり通っている世界なので、私も以前記事を書いたことがあります。

けっきょく甲子園の「感動」というのは、組み体操の「感動」と同じようなものだと思う

しかしそれにしても、上の選手はこれ最悪後遺症ものでしょ。それは監督なり部長なりが出場をやめさせる必要があるし、仮にそれで非難する手合いがいたら、それは非難に受けてたたなければいけないんじゃないんですかね。前橋育英高校というのはサッカーも強い(かの故・松田直樹の母校です)ので、たぶんスポーツ高校なのでしょうから、学校側の姿勢も「絶対勝て!(そのためには生徒への負担も仕方ない?)」というものなのかもですが(どうなのかは知りません)、うんなもん最終的には監督の運用でしょう。この選手が最終的にプロをめざしているのかどうかは知りませんが、それにも影響を及ぼしかねません。めざしていなくても(野球は高校までと考えていても)、こんなことで後遺症が残るリスクをかけるほどのことじゃないでしょう。

私は「ドカベン」というマンガを、山田太郎らの明訓高校での1年夏から2年の夏あたりまでの部分を読んだことがありますが、実物を確認はしませんけど春の大会の決勝で、怪我をしたピッチャーの里中智(彼が、里中から名前をいただいているのはご存知? 水島新司のマンガに出てくる女性は、里中に顔が酷似している)が大要ここでつぶれていもいいから投げさせてくれと監督に訴えるというくだりがありましたが、そしてマンガでは監督は投げさせちゃうのですが、1970年代のマンガなら、まあそういうこともありなのかもですが、これは現在にはそぐわないですよね。おそらく作者はこれを肯定的に描いたのでしょうが、そして里中は(話の中では)その後も活躍しますが、単純に水島の見識の問題ではなく、やはり野球界ばかりでなく世間に、そのようなことを肯定する意識が強かったということでしょう。今はまた時代がちがいますが、今年の話は、上のマンガと酷似しているじゃないですか。

それで私が思い出すのが、組み体操ですね。最近の朝日新聞記事によると、さすがに組み体操も、やめる学校が増えているようですが、私が書いた記事に次のようなコメントを出す手合いがいたのには本当に呆れました。

>2016-09-24 21:29:04いちいち文句をつけないでほしいわw
組体操で頑張った人もあんたに感動してほしくないしw

こういうことを(いくら無責任なコメントとはいえ)書く人間の精神というのは本当に度しがたいですね。こいつだって、自分や自分の身内が怪我をしたり死んだりしたら少しは考えを変えるのかもですが、いずれにせよ人間のクズとはこういうやつのことです。

しかし拙ブログへのコメントだったら、影響力皆無あるいはそれに近いでしょうからまだいいですが、上の朝日新聞記事はそれよりはるかに影響があります。この記事が、主催する新聞社だから書いたのだ、他紙、他通信社、系列以外のテレビ局ほかならこんな報じ方はしない、というのならまだいいですが、たぶんそういうことではない。組み体操を危険だと考えるのなら、骨折している選手を出場させる行為も同様に批判するべきでしょう。お話にもなりません。

ほかにも高校野球での酷暑の問題(今年、開会式でプラカードを持つ女の子が倒れました)などいろいろあります。私個人は、夏の高校野球は、やるのなら(やめるというわけにも現実いかないでしょうから)、涼しい季節にするとか北海道でするとか、大阪ドームでやれとか考えますが、どれも現実性皆無です。このままだとグラウンドで熱中症で倒れて最悪死ぬ人間すら出かねません。選手はまだいいですが(ベンチで休めます)、審判など本当に危険です。何かがあってからでは遅い、ではなくて何かが起きなければ変わらないのでしょう。起きたって変わるかどうか怪しいものです。上の、私のブログにコメントをよこしたクズと同類です。それもどうかです。

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (凡太郎)
2017-08-18 14:30:28
話は反れますが、戦前は延長の回数が無く何回でも続いて、最高では25回まで行ったとか。堪りませんねやる方は。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E4%BA%AC%E5%95%86%E5%AF%BE%E6%98%8E%E7%9F%B3%E4%B8%AD%E5%BB%B6%E9%95%B725%E5%9B%9E

それにしても、野外での仕事が主な土木の世界では十分な水分補給や休憩は常識なのに未成年の球児たちは問題無いのでしょうか。
Unknown (尼子重久)
2017-08-18 18:48:59
野球に限らず、例えばかつての貴乃花の優勝(小泉が「感動した」とふざけたスピーチをしたあの優勝です)などの事例を見ていると、日本人っていうのはつくづく科学的根拠を欠いた根性論・精神論が大好きな民族性なのだなぁ、とあきれざるを得ません。

この高校以外にも、負傷している選手を出場させた高校がありましたが、負傷を押してまでして出場する(させる?)ことが、なぜここまで美談扱いされるのか、私には全く理解できません。私が相手チームの選手や監督だったら、「負傷してる選手を出してくるとは、うちのチームをなめてるのか」と、むしろ腹が立つと思うのですが。本来、それがまともな感覚だと思うのですが、そういうことが通用しないのが甲子園という場所なのかもしれません。

ちなみに、夏の甲子園と熱中症関連の話では、我が埼玉県では数年前に、グランドで熱中症で倒れた自チームの選手を監督が「何をやってるのか」と発言して、問題になったことがあります。

http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/54546223.html

結局のところ、高校野球の指導者たち、ひいては日本人のかなりの部分の発想が、非合理極まりない戦時中の精神論的感覚をいまだに脱却できていないことが、一番の問題なのではないか、と思えてなりません。
Unknown (アンドリュー・バルトフェルド)
2017-08-18 21:34:06
>野球漫画
今日日のはロクに読めていないので、怪我をしたらどうかに関しても判断できません。
「ダイヤのA(エース)」は何年か読んでいましたが、コーチを呼んだ所から「内ゲバっぽくなりそうだ」と思ってしまい偶にしか読んでいませんので。

>現実の高校野球
「休ませろ、バカ野郎」ということです。
怪我を押して甲子園に出て、プロ入りした選手は多数いますが、伸び悩んだり怪我の後遺症に苦しんだ選手の方は多いですから。
Unknown (nordhausen)
2017-08-20 20:39:21
>強行出場

稀勢の里が負傷後に強行出場して逆転優勝した時も、「感動した」などやたらと称賛する声が目立ちましたからね。しかし、稀勢の里はその後、2場所連続で途中休場している現状にあり、彼の今後が心配ですね。

>ドカベン

同じ野球漫画、アニメでは「MAJOR」にも似た場面がありますね(私はアニメの方をよく見ていました)。主人公、茂野吾郎が大怪我をしたにも関わらず、強行出場する場面が多々あります。

>凡太郎さん (Bill McCreary)
2017-08-21 19:21:07
水とかはさすがに大丈夫でしょうけど、ほかにいろいろ問題点はありますよね。身体の毀損なんてのはその最たるものです。
>尼子重久さん (Bill McCreary)
2017-08-21 19:24:44
プロの相撲の横綱と甲子園球児ではずいぶん話が違いますが、それにしてもあそこで無理をしたのが文字通り貴乃花にとっても致命傷になりましたからね。ましてや未成年では、それは監督が勇気あるストップをかけなければいけないでしょう。

>結局のところ、高校野球の指導者たち、ひいては日本人のかなりの部分の発想が、非合理極まりない戦時中の精神論的感覚をいまだに脱却できていないことが、一番の問題なのではないか、と思えてなりません。

おっしゃる通りですね。記事でも書いた世界陸上は、やはり世界を相手にしているから、陸連も合理的な判断ができたのでしょう。大学とか高校なら、どうだか怪しいものです。
>アンドリュー・バルトフェルドさん (Bill McCreary)
2017-08-21 19:26:01
私は野球漫画には全然詳しくないですが、まあ「ドカベン」のは他にもいくらでも同じものがあるでしょうね。古典的な漫画なら、「巨人の星」もまあそういう話でしょう。
>nordhausenさん (Bill McCreary)
2017-08-21 19:28:27
稀勢の里といい「ドカベン」といい、同じような話は枚挙にいとまがないというレベルでしょう。
Unknown (bogus-simotukare)
2017-08-21 22:18:34
 まあ「自殺攻撃」特攻や「補給無視で餓死者続出」インパール作戦すら「お国のためによく自分を犠牲にした」と美化する人間(例:産経や日本会議、神社本庁)がいる国ですからねえ。それに比べたら「炎天下の野球」「けが人の野球」なんてまだかわいいものかもしれません(勿論皮肉ですが)
>bogus-simotukareさん (Bill McCreary)
2017-08-22 23:30:07
冗談でなく、そのような極端な滅私奉公というか、非合理をものともしない精神が、ある程度甲子園に影響をしているのかもしれません。

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