ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

加害者の身内が自殺しないか心配だ(被害者の気の毒さは当然の前提)

2023-06-01 00:00:00 | 社会時評

長野の事件はやはり相当に強烈なものがありましたね。さっそくWikipediaにも記事が出ています。

長野猟銃立てこもり事件

公務中の2人の警察官が殉職した事件というのは、そうそうあるものではない。

などごく少数(東峰は3人死亡)です。最初の2つは、新左翼の過激派と呼ばれる党派と警察が衝突あるいは人質救出の際の事件であり、中村橋は拳銃強奪を目的とする事件、沖縄の事件は、人違いとされます。公務中に、犯人の銃撃による射殺という点では、三菱銀行の事件がいちばん近いですかね。ただ今回の事件は、警官は犯人が銃を持っているなどとは予想せずに臨場して射殺されたわけで、銃を出された時はたぶん警官も愕然としたのではないか。

それで、私が「おや」と思ったのが、巡査部長が61歳だったということです。多分ですが、殉職した警察官としては、もっとも高齢な部類に入るのではないか。本来なら定年退職のはずですが、再雇用ということです。さすがに無事に定年まで勤めあげてほっとしていたでしょうに、再雇用の段階でまさか自分が殉職するなんて、当然ながらご当人も周囲も想像もしなかったはずです。言葉もないとはこのことです。

それは、立場は違えども、加害者の身内も同じでしょう。たしかに自分の子どもの精神状態がよろしくないということは感じていたのでしょうが、それにしたってこの事件はないだろうというのが正直な感想ではないか。ここまでのことをやらかすのは、ちょっとやそっとの話ではありません。

今回の加害者は31歳ということで、これは年齢的には親の保護から外れています。本来なら親の責任とかの話が出ることでもありませんが、ただまずいのは、彼が親と同居していて、仕事も親の事業を手伝っていた(手伝っていたなどということもないという報道もあるようですが、とりあえず「無職」ではないようです)となると、親の管理責任みたいなものがでてこないわけでもない。

さて昨今起きた大量殺人事件の犯人というのを考えてみると、だいたいにおいてあまり金銭に恵まれているとは言えません。「京都アニメーション放火殺人事件」の犯人は生活保護受給者、「北新地ビル放火殺人事件」の犯人(死亡)も、よろしくない経済状態だったと伝わっています。「相模原障害者施設殺傷事件」は、事件当時無職ではあっても、そんなに経済状態が悪かったわけでもないようですが、といってもちろん親などもそんなに特に裕福ということもないでしょう。

が、今回の加害者の親は、どうも資産家のようです。農業のほか、それを生かした事業を手掛けているようだし、父親は市会議長も務めている市会議員(すでに辞職)、母親もカルチャーセンターの講師などもしていて、お二人ともなかなかのやり手、優秀な人たちのようです。そうなると、加害者は相対的には恵まれた立場にあり、とするとこのような犯罪とは基本的に無縁である人でしょう。やはりある程度恵まれている人は、このような犯罪をすることは考えにくい。しかし彼は、それをしてしまったわけです。

ここでちょっと私が思い出したのが、大久保清です。彼は、日本を代表するシリアルキラーでしょうが、実家はそれなりの資産家でした。彼の事件の後彼の実家は不動産を処分して、親は老人ホームのたぐいに姿を隠しました。しかしさすがにシリアルキラーの家を買いたがる人もいないので、いわば犠牲的精神で地元の農協が買い取りました。こちらが、彼の元実家のもよう。

というわけで4人の犠牲者への補償のため、彼の親が(全?)財産をはたくということもありえますね。その場合でも、たぶん裁判で加害者に有利な証言などは遺族はしないでしょうしね。ていうか、おそらく加害者は精神鑑定を受けるわけで、その場合ある程度の精神の問題が認められなければ死刑になる公算が強い。それがどうなるかは今後のことですが、親は子どもの減刑のためでなく、道義の意味合いで補償をすることになるでしょうから、これまたなんとも気の毒です。

私が心配なのは、加害者家族の自殺ですね。最近は、昔ほどは、マスコミが加害者の家族を追い回したり追いつめたりすることもなくなってきたとは思いますが、それにしたって今回の場合地域住民を2人殺害してもう2人公務中の警官を射殺したのだから、地域の目はきわめてよろしくないでしょう。たぶん親御さんに責任を追及するということはあまりないのかもですが、それにしたって精神の追いつめられ方は半端でないはず。実際連合赤軍事件など、現在国外逃亡中(死亡の可能性もあり)の坂東國男の父親は、経営していた旅館で首つり自殺をしてしまいました。昨年(2022)年犯人の死刑が執行された秋葉原通り魔事件でも、犯人の弟が自殺しているとのこと。

今回の犯人は、おそらく何らかの精神疾患であったかと思いますので、それが刑を課すうえで考慮されるかはともかく、なぜ親は彼を医者に連れて行かなかったんだなんて話しても、現実には無理、難しかったろうし、やはり成人ですからね。むりやり精神科に行かせるのもなかなか大変です。たいていは、ここまでのことをやらかしたりはしないのですが、時にはこのような凄まじい事件が起きます。宝塚ボーガン殺傷事件では、Wikipediaから引用すれば、

2022年11月7日、裁判員裁判で判決が言い渡される予定だったが9月28日付で被疑者の精神状態の悪化を理由に裁判の期日全てが取り消しとなった。今後の成り行きは不明となっている。

ということで、ことによったら裁判が中止になる可能性もあります。Wikipediaに引用されている新聞記事によると

>地裁が10、11月の裁判員裁判の期日全てを「被告の事情」により取り消した。勾留中に心身の状態が悪くなり、治療が必要になったためだ。本来、今月7日に判決が言い渡される予定だったが、今後の成り行きは不透明で、回復が見込めなければ裁判が取りやめになる可能性もある。

とのこと。つまりは、相当に精神の状態が悪かったということでしょう。こちらも、3人死亡の1人負傷という事件で、まともなら死刑の可能性がある。また現在検察が控訴中ですが、神戸での5人殺傷事件でも、精神疾患を理由に地裁で無罪判決が出ています。熊谷市でのペルー人の事件では、1審死刑でしたが、裁判所が被告人の精神疾患を認め無期懲役に減刑、これが確定しました(熊谷連続殺人事件)。これらの事件も、ペルー人などはとても自ら医者に行くなどということはなさそうです。ほかの人も似たようなものかも。いずれにせよ事前に医療につなげるのも、なかなか難しそうです。

けっきょく今回の事件は、自分に責任のないことを、親が代行して何らかの責任を取るということになりそうですね。世の中「責任」なんてそんなものなのでしょうが、いずれにせよ親は立場上「それは子どものしたことであり、こちらには責任はない」とも言いにくい。これはこれで気の毒だと思います。そしてこれは、どんな人間にも程度の差はあっての降りかかります。

あ、すみません。この事件における被害者の気の毒さは書くまでもないので、再雇用の警官以外は、わざわざ書きません。そのあたりはご了解ください。また被告人・死刑囚の名前も、すでにだいぶ以前(1976年)に執行されている人(大久保)と現在逃亡中の人(坂東)以外は記載しません。上のお二人の敬称は略しましたことをお断ります。

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