「大有宗甫之文」(書き捨ての文)
宗甫(小堀遠州)が書き残した文で、十五代宗匠・小堀宗通氏の御筆)
11月22日(金)にRさまの「和楽庵の茶事」にお招きいただきました。
Rさまは小堀遠州流、東京駒場で「和楽庵」という茶室で、内外の方のおもてなしをされ、茶道教室を主宰されています。
先だって、小堀遠州流Yさまの「長月の茶事」でお目にかかったのが嬉しいご縁になりました。
その日は今にも雨が降り出しそうな天気でしたが、KTさんと颯爽と出かけました。
玄関を入ると、客迎えの花(竜胆、赤い実、黄菊)がダイナミックな花器に生けられていて、和楽庵ワールドの始まりでした・・・。
「祥雲」と書かれた短冊が掛けられ、宗園(小堀遠州流当代家元)とありました。
待合で三島の茶碗セットで香煎を頂戴しました。
奥様の宗明さま(三客)がご亭主に代わって、いろいろお話してくださるので、すぐに打ち解けて、ご亭主のこだわりぶりが分かりやすかったです。
古い鰐口が掛けられていて、それが合図でした。
詰Fさまが鰐口を4つ打って水屋へ知らせ、玄関小上がりの腰掛待合へ移動しました。
まもなく白い羽箒を手にし、袴姿のご亭主が迎え付けに現われ、無言で礼を交わしました。
昼まで持つかしら? と案じていた雨が降り出したのは残念でしたが、露がキラキラ光る苔を横目に蹲を使い、席入りしました。
座が静かになると、お詰のFさまが「エッヘン」と合図を送ります。
ご亭主が袴姿も凛々しくお出ましになり、挨拶を交わし、床のお軸のことなどお話しいただきました。
お軸は「大有宗甫之文」(書き捨ての文)、
宗甫(小堀遠州)が書き残した文で、小堀遠州流の十五代宗匠・小堀宗通氏の御筆です。
「書き捨ての文」と呼ばれているようですが、さらさらと三段に分かれて文がいっぱい書かれていました。
内容は、茶の湯の心得、茶の湯の奥義とも言えるもので、その中にも暮らしの中にこそ茶の湯の本質がある、古い道具だけでなく新しい道具も使うように・・・など、先例にとらわれない柔軟さを身につけ、自分の茶の湯を目指して精進せよ・・・と言っていらっしゃるように、勝手ながら思いました。ゆっくりきちんと読んでみたい書でした。
お軸の下の金継ぎのある陶器の台、台に置かれた李朝の美しい小壷を一瞥したとたん、心惹かれました。
模様と形が斬新な陶器の台は、韓国の陶芸作家・李禹煥(リ・ウファン)作で、祭器を形作っているそうです。
・・・見るもの、伺うもの、ワクワクしてなかなか先に進みませんが、丁寧に説明してくださって嬉しかったです。
点前座へ廻ると、品川棚に青磁太鼓銅の水指が置かれています。
釜は遠州お好みの糸目肩衝釜、炉縁は真塗、面に七宝繋ぎの蒔絵がありました。
遠州お好みの糸目肩衝釜
初炭は詰のFさまがなさいました。
小堀遠州流の炉の炭手前は初めてで、興味津々です。
唐物炭斗に炭が入っているのですが、炭の大きさや長さ、炭斗中の置き方が裏千家流とは全く違い、たしか枝炭は黒、しかも一本だけなのが驚きです。
孔雀の小さな羽箒が垂涎ものでしたが、こちらも先代・小堀宗通さま自作だとか。
花筏を思わせるような炭の置き方が興味深く、順々に火がついていくように工夫されていると伺い、大いに納得し、最後に黒の枝炭1本が導火線のように置かれました。
すぐにぱちぱちという音がして一安心です。
懐石になり、水屋でYさまとKTさまが腕まくりして料理してくださった懐石の数々、御出汁がしっかりとしたお味で、しかも薄味、美味しく夢中で頂戴しました。
特に一文字のご飯が最初は熱々の炊き立てが出され、次にふっくらと、「御飯だけで美味しいわね」という声が飛び交いました。
煮物椀の蟹真蒸の柔らかさと美味しさが今でも思い出されます。
白みそ仕立ての汁も美味しかったのですが、最初は蕪、次は焼豆腐と中身が変わり、参考と刺激になりました。ご馳走様でした。
織部の鉢に銀杏を思わせる淡い色調の主菓子が運び出され、皆で嘆声を上げて賞味しました。
中立で雨が激しくなっていたので、露地を通らず待合へ直行しました。 (つづく)
和楽庵の茶事に招かれて・・・(2)へつづく