床の御軸は「點笑」、東大寺・清水公照師の御筆です。
「笑いを絶やさないこと」・・・という意味だそうです。
今年1年を笑顔で楽しく生きていけたら、なんと!素晴らしいことだろう・・・という願いをこめて掛けました。
亭主M氏が香盆をIさんの前に運び出し、「どうぞお香をお願いいたします」
香は、6世紀に仏教の伝来と共に日本に伝えられました。
香を焚くことは、心身を清浄に保ち、感性をみがくと言われていますので、初釜の最初に香を是非・・・と思ったのです。
Iさんが手を香炉にかざして火味を確かめ、落ち着いた美しい所作でお香を焚いてくださり、全員で神妙に聞きました。
お香はとても優しく繊細な香りで、Iさんが最初に毒聞き(試し聞きのこと)した時と最後に本聞きをした時とでは香りの印象が違っていたそうです。
お香銘をお尋ねすると、
岩ばしる 垂水の上の 早蕨の
もえ出づる春に なりにけるかも
という和歌より「さわらび」という香銘だそうで、木所は真那盤です。
次はお花です。
色とりどりの春の花があふれる花台が床前に運び出され、
「Sさま、どうぞお花をお願いいたします」と、ご亭主から花所望の声がかかりました。
実は前日にSさんにお花を用意して頂きました。忙しい仕事の合間に花屋さんを数軒まわってくださったようです・・・。
「最初は責任重大と思いましたが、お花をいろいろ探したり、選んだりするのがとても楽しかったです」と伺って安堵しました。ヨカッタ!
唐銅の薄端に生けられた花は、松、雲竜梅、八重百合、菊(ぽんぽん菊)、菜の花、エンドウ豆、鉄線(クレマチス)の7種です。
初釜にふさわしく豪華なお花が床と点前座(亭主床なので)を美しく華やかにしてくれました。
次は亭主M氏の初炭です。
「先生、初釜に十徳を着ていってよろしいでしょうか?」
「どうぞ着ていらしてください。楽しみにしています」
昨年めでたく準教授を拝受した折に誂えたのかしら? M氏の茶道への意気込みがなんか胸に迫ってきました。
台子の初炭は順番や飾り火箸の扱いなどいつもの初炭とは違いますが、威風堂々の十徳姿、端正な所作で炭を置いてくださいました。
初掃きで正客KTさんから順番に全員で炉を囲み、H氏の湿し灰の撒き方や炭の継ぎ方を鑑賞しました。
サラサラと進むお手前に見惚れながら、このまま皆で親しく炉を囲み、いつまでも炉辺で見ていたい・・・と。
炭斗は常盤籠、羽箒はフクロウ、火箸は菊頭四方透かし、灰器は京都・壬生寺の焙烙、灰匙は仙叟好み大判です。
香合は大きなぶりぶり(高砂蒔絵)、お香は坐忘斎お好みの松濤(松栄堂)でした。
こうして初座が終了し、待合の椅子席へ移動し、お弁当、雑煮椀、一献(酒は越の寒梅)で昼食です。(つづく)