暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2016年 名残の茶事へ招かれて・・・その3

2016年11月23日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                      
(つづき)
いよいよあの変な形の茶杓です。

半泥子作で茶杓銘は「苦茶(くちゃ」とか。

川喜多半泥子は半泥子という号の他に「無茶法師」「其飯(そのまま)」などと名乗っていたそうで、「無茶法師」を連想する「無茶苦茶(むちゃくちゃ)」からの銘でしょうか、
対でもう一本「無茶(むちゃ)」という銘の茶杓がありそうですね。
茶杓「苦茶」は幅広でユニークな形状ですが、右利きの人が茶を掬いやすいように工夫して、わざと変形した形になっています。
形にとらわれない自由な発想が素晴らしく、遊び心を感じる銘と言い、半泥子の魅力いっぱいの茶杓でした。

                                          

ご亭主N氏は若くして会社を起し立派に育て上げた実業家であり、古美術の蒐集家でもあるので、
実業家そして陶芸家である川喜多半泥子(1878~1963年、明治11年~昭和38年)を大いに尊敬し、その作品を愛していらっしゃいます。
今回の茶事にはできたら半泥子作を・・・と思ったようで、待合の掛物、茶杓、さらにもう一点が登場して、私たちを楽しませてくれました。

濃茶が無事に終わり、流石のN氏も少々お疲れのようで、後炭と薄茶は半東Fさんが大活躍でした。
N氏も交え、いろいろなお話をしながら薄茶を頂きました。
干菓子はいちょう煎餅と紅葉です。
主茶碗は紅葉御本、半泥子作です。
上品で優雅な姿、内側に現れた火色の美しさ、持てば手にしっとり馴染む感触・・・好いですねぇ。
「秋の風」という銘があるそうですが、四季を通じて使って頂きたい茶碗でした。

薄器は古唐津の広口茶器、大きな牙蓋が付いていて、数寄者好みの一品です。
半泥子の「苦茶」の茶杓が侘びた味わいの薄器にぴったりお似合いでした。

                      

・・・楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね。
こうして名残の茶事「来し方を省みて・・・」は終了しましたが、今なお茶事のあれこれを思い出しています。
N氏の堂々の亭主ぶりに安堵し、私も客として茶事の愉しさをしっかり味わいました。
一口に茶事といってもいろいろな茶事がありますが、車椅子で来てくださった茶友と過ごした、
忘れられない茶事になりそうです・・・。


最後に次客M氏から嬉しいメールが届いたので記します。(もう感謝!しながら・・・

暁庵さま
先日は茶事にお誘い頂きありがとうございました。

Nさまのご亭主ぶりには深く感じ入りました。
「正真に慎み深く、おごらぬさまを侘と云う」という言葉を思い出しました。
懐石や点前の一所懸命さ、道具の説明をするときの楽しそうなご様子に
こちらも愉しくひとときを過ごさせて頂きました。
また、Mさまの 時を過ごすにつれお元気になられる姿も印象的でした。
型にはまらぬ暖かい一座に加えて頂いた事に心より感謝申します。   Mより



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